take・43

「さぁ、今日はお休みだ‼出かけるぞ‼」

「うるさい黙れ・・・」

「おはよ~」


田中丸善樹の朝は早い。

休日も朝九時には起床(特別早くない)、顔を洗い服を着替え朝食の準備。

トーストにベーコン、牛乳とグラノーラ。実に健康的で・・・、実に健康的である。


「ほら、起きろ」

「起きてるよ。黙れ」

「元気だね、田中丸君」

「こんないい天気にグズグズしてられるか‼さぁ、飯を食ったら今後の活動のヒントを求めて街へ繰り出そうじゃないか‼」

「・・・、善樹、何か隠してるだろ」


何かこうるさい娘がおるな・・・。


「・・・、繰り出そうじゃないか」

「?」

「繰り出そうぞ」

「言え」

「・・・、繰り出そう・・・、はい・・・」

「何かあったの?」


・・・、お金が・・・、無い・・・。


「いや、違うんだ・・・」

「何が?」

「出かけるなら早く飯食って出かけようぜ」


何かを悟ったかのようにせかせかと動き始める早生氏。

やはり・・・、気づいているな・・・。


「それでさ、出かけるって、どこに行くの?」

「よくぞ聞いてくれた湯川。我らが向かう先はだな・・・、咲川邸です」

「え?咲川さんの家?」


奴は分かっていたのだろう。

俺が何故二人を起こしにくるなんて真似をしたかを。

そして、大いに心当たりがあったのだろう。自分に何故危険が迫っているかという事に・・・。


「という訳で、早生さんはお家で家庭教師の方と一緒にお勉強でーす」

「わー」


湯川栞のとてつもなく「へぇ~」くらいにしか思っていない心無い歓声が上がった。


「何でだよ⁉いつの間にウチの奴らとつるんでた⁉」

「一週間くらい前から。昨日の夜に関しては家庭教師が来るって分かってたから、俺の家に変更したんだろ。お前んとこの執事のおっちゃんから言われてな。流石に二回連続で赤点はヤバいと社長様から連絡があったそうだ」

「な、何で・・・?、お父さんにもお母さんにもテストの結果言ってないに・・・」

「あぁ、俺が言った」

「おい‼テメェの仕業か‼」

「だって何にも言ってこないから多分昔のように悪かったんだろうから教えて欲しいって、言われたんだもん」

「「言われたんだもん」、じゃねぇよ‼嫌だ‼アタシは絶対今日はやらない、今日は善樹と遊ぶんだ‼」

「それはいけませんお嬢様」


グッドなタイミングでセバスチャン登場(言い方だけです)。


「嫌だ‼今日は善樹とから離れないぞ‼ていうか善樹が離れるな‼こっち来い‼」


嫌だ嫌だ嫌だ。ていうかこの感じだと俺まで勉強会参加の可能性出てくるからマジで嫌だ。俺の方が嫌だ。嫌だでは負けない。


「それでは仕方ありませんね」

「ひッ・・・」

「わッ、ヤダッ‼嫌だったら嫌だ‼」


タンッ・・・。


「かッ・・・」


老執事に首を折られた女子高生が・・・、そこにはいた・・・。お疲れ様です。


「毎度毎度ご迷惑をお掛けします善樹様。このお礼はまた後程。では」


執事におんぶされて去って行く早生を、俺は半笑いで見ていた・・・。


「それで、私達はどうするの?勉強会?」


遂に湯川と二人っきりになってしまった俺。こうなったら、男の本気を見せるしか・・・。


「特に何もないんだよな・・・」

「えぇ~・・・」


虚無。これぞ虚無。その空間には、しっとりとした静寂が、ただただ漂っていた。


「じゃあさ、たまには私のお願い聞いてよ」

「湯川の?何かあるのか?」

「お買い物行こうよ、二人で」

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