take・39

「それより咲川さん、勉強ははかどっているの?この勉強会自体、貴方が企画した貴方の為のものなのでしょう?善樹君に勉強を教えて欲しいが為に企画された薄汚い催し物なのでしょう?」


本当にいらんことしか言わないなこの人。


「そうなのか?だったら別に勉強くらい家で教えてやるのに」

「ほ、本当か⁉」

「良かったね咲川さん」

「ちょっと善樹君、それは甘いんじゃないかしら?絶対にその子、貴方と二人だとサボるわよ」

「じゃあ、湯川も来ないか?」

「え?私?」

「ちょっと何でそこは私じゃないのよ⁉」

「だって蜜鎖がいたらすぐ喧嘩になってもっと勉強が進まないだろうが」

「なッ・・・、しょうがないわね・・・。分かったわ。今回は咲川さんの為にも許可してあげる。その代わり、テストが終わったら私とデートしてもらうわ。それが条件よ」

「分かったよ」

「お、おい・・・」

「早生の為だ。湯川も協力してくれるか?」

「うん、私は大丈夫だよ」

「よし、決まりだな」


こうして俺と早生、湯川の勉強合宿が始まる・・・。


「あと監視カメラは最低十二台は仕掛けさせてもらうわ」


今日はもう帰って下さい・・・。


「ここ」

「ん~?」

「・・・・・・」


自分の家で勉学に励むという体で集まったわけだが、何故か早生の家ではなく田中丸邸なのはどうしてだろうか・・・。当たり前のように俺の家に向かって行く早生を全く疑いもしなかった自分がとてつもなく不思議である。でも考えてみれば、お隣さんなので判断が難しいである。


「ここ」

「その「ここ」だけで俺を操作するのやめろ」

「ここ」

「おい」

「こ~こッ‼」

「ぶつぞ」

「じゃあアタシがぶつ」

「それは意味分からん」

「黙れ」

「・・・・・・」

「・・・・・・」

「次は・・・、漢文やらなきゃ・・・」


この現場をどうにか整えては頂けないでしょうか湯川さん・・・。


「ゆ、湯川」

「何?」

「勉強、はかどってるか?」

「うん」

「・・・・・・」


もしかして、「黙れ」という圧力か何かなのだろうか。気付けば早生も勉強を再開し、ただ一人放置される俺・・・。試験勉強中に、こんなに寂しさを感じるのは初めてである。


「もう遅いし、そろそろ帰るか?」

「そうか。じゃあな」

「いやここが俺の家だから。帰るのはお前だから」

「この家の金、誰が出したと思ってるんだ?」

「咲川さん」

「そうだな」

「いやお前じゃないから。お前の親だから」

「田中丸君の家って、咲川さんの家なの?」

「そういうよく分かんない感じになっちゃうから普通に帰ろうか早生さん」

「じゃあ、私は先に帰るね」

「いや湯川はいいんだよ」

「え?」

「何でだよ⁉」

「すいません冗談です」

「まぁ、今日は後輩の女の子の家に泊まるって言ってきたから、大丈夫だけどね」

「何も大丈夫じゃない‼ここは同級生のキモブタの家だぞ‼」


お前はキモブタから望んで教えを乞うていたのかそうだったのか。


「だって最初は咲川さんの家でやると思ってたから、そうに言ってきちゃった」

「だからといっていいワケないだろ‼」

「でも、もう外暗いし・・・」

「そこ妥協できるポイントなんだ・・・」

「だ、ダメだ‼絶対ダメだ‼年頃の男女が一つ屋根の下で夜を過ごすなんて、絶対に許されざる行為だ‼」


何か棕櫚さんから影響受けてません?


「じゃあ、やっぱり私帰るよ」

「・・・、や、やっぱり、今日の所は許して・・・、やらなくも・・・、ないぞ・・・」


どっちなんだよ・・・。


「だそうだ。湯川、俺は構わんが、泊まっていくか?当然部屋はちゃんと用意するから」

「うん。お世話になります」

「おい、そんな簡単に男の家に泊まるとか、マジ尻軽女臭しかしないな」


この女さっきからどうしたいんだよ。


「ほら、もういいだろ。湯川、こっちだ」


 適当に早生を処理し、湯川を部屋へと案内。ちなみに俺の部屋の隣の部屋、通称早生ちゃんが泊まりに来る時用の部屋である。最初は「そこはアタシの部屋だ」とごねられたが、代わりに俺の部屋を貸すと言ったら、あっさりOKしてもらえた。またしてもエキサイトするかもと危惧していたのだが。

しかし、やはり俺の考えは甘かったようだ。ここでまたしても事件が起こる・・・?

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