take・37
なんだかんだでそれから一ヵ月、とにかく適度に掃除をするだけの毎日。そして特に何も無かった。本当に、何も無かった・・・。
「ヤバい・・・、俺、青春してるわ・・・」
高校に入って、やっと若者の、学生の特権と言われる「青春」という何かを感じられた気がする。いや、俺は確信している。これこそが、この何も無く、ただ穏やかに流れていくこの時間こそが、「青春」なのではないか・・・、いや、「アオハル」なんだ・・・と。
「いいから掃除しなよ田中丸君」
「おう、もうそんな時間か・・・」
「いやまだ終わりじゃないからな。善樹が全然仕事しねぇから言っただけだから」
「そんな事言ったらここにいる蜜鎖も全然掃除してないぞ。これは認可済みなのか?」
「お前よく人の事指摘出来たな・・・。そこの女はお前以下だから除外してるだけだ」
「何?聞き捨てならないわね。私はただ、善樹君の周りに寄ってくる邪魔なゴミたちを排除しているだけよ」
そんなにゴミと言われるようなもの無いけどね・・・。落ち葉すら無いけどね・・・。
「毎日ってなると、掃除もすぐに済んじまうな」
「季節的にも、桜が散ったらそれからは落ち葉とかも無いしね」
「じゃあ、そろそろ期末試験だし勉強会でもするのはどうだ?」
「あら、咲川さんにしては随分まともな発想ね。もっと、何かと言うより全然足りて無くて、どんな教育を受けてきたのか不安になるくらい、自分自身がこの人と本当に同じ種族なのかと恐怖するくらい、すっとんきょうな返しが来ると思っていたわ」
「まぁ、アタシはアンタと違って人間だからな、この悪性新生物」
癌じゃん・・・、それ・・・。
「あぁ~、私もそれは賛成かも。この学校で初めてのテストだし、ちょっと不安なんだよね」
「それはいい暇つぶしになりそうだな。いいんじゃないか?」
「いや、善樹も勉強するんだよ」
「何で?」
「だってお前バカじゃん」
「そうなの?」
・・・・・・。
「いや、俺大体学年十位以内だったけど」
「そうなんだ・・・、凄いね」
この方は本当に凄いと思っているのでしょうか・・・。
「あれ?そうだっけ?でもバカじゃん」
「何を言ってるのかしら咲川さん。善樹君は小学校の頃から殆どのテストで九十点以上、順位が出るようになってからは毎回トップテンに入っている貴方とは天と地程の差がある天才・・・、そう、私のモノよ」
最後がちょっと何言ってるか分かんないけど、まぁ、いいか。
「ていうか何で俺情報そんなに知ってんだよ・・・」
「キモ~」
「ウィキに載ってたのよ」
「え?俺ってウィキあんの・・・?」
「あるわけねぇだろ。ただのこのキモ女調べだ」
最早犯罪の匂いすらする。
「ふ~ん、そうなんだ。じゃあ、勉強会で決まり?他に何かある?」
「いや・・・、特には・・・」
「そっか、じゃあ、決まりだね」
ふとした時の湯川の表情が、俺を見るその瞳が、とても魅力的で不思議な感情を思い起こさせる。何か懐かしいような、切ないような、でもとても大切な・・・、何か。俺の中の、自分でもよく分からない特別なその何かが、自然と俺を引き付けている・・・。
「じゃあ、善樹君には私が専属トレーナーとして手取り足取り二十四時間教えてあげるから、しっかり後ろからツイてきてね♡」
「おい、その後ろからってのはどういう意味だこの二十四時間発情女」
「?」
さて、何の勉強から始めようか。
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