take・36

校長は校長室にいるものだと、おそらく大体の生徒が考えると思う。が、実際はそうではないらしい。現に、我が校の校長の姿は、校長室には存在していなかった。


「いないのか・・・、どっか出かけてんのか?」

「窓が開いているから、そうなんじゃないかしら」

「校長先生って、窓から出入りするの?」

「まぁ、詳しく観察したことはないから、その可能性も無いとは言えないな・・・」

「無いとしか言えないだろ・・・。湯川さんもこのバカ二人の言う事信じなくていいからな」

「でも、田中丸君に一番流されてるのって、咲川さんじゃない?」

「ア、アタシは別に⁉お、幼馴染だから、い、いいのよ‼」

「それは一体どんな理屈なのか教えてくれるかしら咲川さん?」

「う、うるさい‼校長はここにいないんだったら、他探すしかないだろ‼」

「そうとも言えますが、私こと校長はここにいますが何の御用ですか?」


・・・・・・。振り返るが、校長ではなく女子達のみ。そういう気持ち悪い留守番電話なのか・・・。


「窓の外ですよ」


言われた通り窓の外を覗き込むと、花壇の花達と著しく対話を試みる校長の姿が、そこにはあった。


「ガチで窓の向こうに出かけてたんか・・・」

「だから言ったじゃない。まったく、これだから未就学児は」

「んだとゴルァッ‼テメェ両目のピント調節機能皆無にしてやろうか⁉」


光を奪わないだけ、良しとするか・・・。


「それで、何の御用で・・・」

「そういう事ばっかり言っているから学習能力が無いと言っているのよ。一般のホモサピエンスであれば、今までの経験を踏まえて、相手を的確に、かつ迅速に、手を汚すことなく処理するのがエリートというものよ」

「ゴホン、ですから何の・・・」

「アンタだってそういうネチネチ意味わからん事ばっか言ってて気持ち悪い事この上無いわこの語彙力発酵キモ女‼」

「あの・・・」


安心してくれ、しっかり二人共ワケ分かんないから・・・。それより校長を早く拾ってあげて・・・。


「校長先生、屋内活動クラブの新たな活動として、学校の周囲の掃除をしようと思うのですが、宜しいでしょうか?」

「いいでしょう」

「・・・、本当にいいんですか?」

「いいでしょう」


本当に考えてんのかこの人。


「ですが・・・」

「な、なんでしょうか・・・?」

「屋内活動クラブでは、なかったのですか?」

「あ・・・」

「早速自ら無視してんじゃねぇか」

「動きたくないとか言っておいて、意外と活動的ね」

「まだちょっと肌寒いよね」

「・・・・・・」

「私としては別に、やって頂く事に関して何の文句も御座いませんし、むしろ有難いですが、部としてはどうなのか、と少し気になりまして」

「何でみんな・・・、そんなに文句言うんだよ・・・。いいじゃんとか、言ってたじゃん・・・。決まったたら決まったで文句いうとか・・・、あれじゃん、「私はいいからさ、みんなが行きたいところでいいよ」って言っておきながら、結局決まったら「あぁ~、でも私はこっちの方が好みかなぁ~」とか言うめっちゃウザい女子みたいなこと言うじゃん」

「それを女子に向かって堂々と言うお前もだいぶウザいぞ」

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