take・33

「おい、お前達、どこほっつき歩いてた?怒らねぇからとっとと吐いてみな」

「何でいんの?いつからいんのお前・・・」


翌朝、蜜鎖に当然のようにキスで起こされた俺は、またしてもスーツの男達から美味しい朝食を頂き、自分が昨日何をしていたのか何となく思い出し、沸々と湧き上がる恥ずかしさに耐えきれずホテルを速攻でチェックアウトし、帰路に着いた訳だったのだが・・・。


「もしかして咲川さん、昨日の夜からずっといたの?」

「だったらどうだって言うんだよ‼」

「マジで・・・?」

「いや・・・、流石にメイドが迎えに来て、しょうがないから帰った」

「普通にそうしてくれ」

「善樹、昨日、その女とどこで何してた⁉言え‼」

「買い物、です。はい」

「ずっとか?朝まで?」

「あからさまにキレてるやんコイツ」

「そうね、これだからお子様は困るわ・・・」

「お前らいい度胸してんなぁ。今すぐにでもお前らに制裁を加える準備は出来てんだぞ」

「何を言っとるんだお前は」

「そうね、これだから幼児体型は・・・」

「体型関係無いだろ‼」

「あら、朝から地団駄も韻も踏んで、とっても元気なお子様ね」

「舐めてんのかコラ」

「大丈夫だよ心配すんなって。お前が考えているようなやましい事は何一つしてない。もしお前が気に入らないのなら、その分俺が何か、何か・・・、してやるから。うん、何か」

「何だよそれ‼全然説明になって無い‼」

「だって、説明したところで貴方、納得しないでしょう?」

「当たり前だ‼」

「そんな麦わらのヤツみたいなこと言われても・・・」

「とにかく‼今日は絶対アタシと一緒じゃなきゃダメだ‼こんな女と一緒なんて絶対ダメだ‼」

「別にいつも変な事なんてしてないじゃない。何でそんなに私を警戒してるの?別に彼女でも無いんだし」

「うッ・・・、そ、それは・・・。か、彼女だとか彼女じゃないとか、か、関係無い‼アタシは幼馴染として善樹を心配してるんだ‼あと‼いつも変な事しかしてねぇだろ‼」

「だったら、その幼馴染の言う事を少しは信じてくれよ、な」

「ぬぐぐぐ・・・、ほ、ホントに何も無かったんだな?」

「あぁ、一緒にラブホで一泊したくらいだ。心配するな」

「・・・・・・」

「ちょっと善樹君‼それはお子様には刺激が強いわよ‼しかもこんな早い時間からなんて、子供が見てるでしょ‼」

「いやぁ~、だ、大丈夫だぞ早生‼ただホテルに泊まっただけだからな‼ただ泊まっただけだ‼」

「・・・・・・」

「ほら、もうあの子の頭じゃ処理出来ないのよ・・・。あの様子じゃ、助からないわね。殺処分だわ、かわいそ」

「おい蜜鎖、あんまり変な事言うな、何が起こるか分からんぞ。おい・・・、早生?生きてるか?」

「ろす・・・」

「あ?」

「コロスッ‼」

「ぁッ・・・」


その後の事は、あまり覚えていません。少しだけ、蜜鎖の声が聞こえた気がしましたが、直ぐに目の前が暗くなって体が重く、いや、軽くどこまでも浮かんでいくような、遠い空に羽ばたいていけるような、不思議な感覚に包まれました。とても気分は晴れやかで、今なら何でも出来てしまいそうな、そんな感じです。でも、最後に一つだけ、心残りがあるとすれば、もう一度親に、親にプリンを買ってきてほしかったです。

プリン。

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