take・31

「じゃあ、次は私を洗って♡」

「それは無理」

「何で⁉私の体、そんなに目も当てられないような体してるかしら⁉」

「そういう意味じゃ、ないでしょ」

「じゃあ何⁉善樹君だけ気持ちよくなって、私はお預けなの⁉」

「別に気持ち良くなってないからな⁉」

「善樹君はこんな事で恥ずかしがるような人間じゃないでしょ⁉」

「しっかり恥ずかしがる人間ですよ残念ながら」

「まだ私の魅力が足りないって事なのね・・・」

「・・・、うん、そうかもな、うん」

「芸術は爆発って事ね」

「そうだな、うん」

「分かったわ。善樹君の為に、もっと綺麗になって出直すわ。それで次こそ善樹君が理性を失うぐらい夢中にさせて見せるわ」


良く分からないけど、納得してくれて何よりである。しかしながら、蜜鎖が俺の背後から退く気配は一向にない。何故か黙って抱きついたままである。


「あの・・・、流していいですか?」

「・・・、好きよ」

「シャワーを使うので離れてもらってもよろしいか?」

「好きよ・・・」

「・・・・・・」


欲しいモノの為に駄々をこねる子供に放置プレイを決行する親は、こういう気分なのかと少し分かった気がする。俺は二秒ほどの長考の末、背中に張り付いた蜜鎖にむかって容赦なく一撃をお見舞いした。


「ぬぶぅッ‼」


年頃のJKらしからぬ渋い声が頂戴できた。これをスマホのアラームにでもしたろうか。


「酷いわ・・・、女の子に向かって、あんまりよ」

「貴方もか弱い男の子に向かって、少々やり過ぎよ」

「でもこれで、さっぱりした体で善樹君に抱きつけるわ」

「もう早く風呂入ろうぜ・・・」


その後は、しっかりタオルを巻いて、二人で湯船にゆっくりと浸かり、蜜鎖の一方的な攻撃を何とか交わしながら、冷えた体を温めた。風呂を出てからは、二人そろってベッドに倒れこみ、気づけば眠ってしまっていた。買い物から始まった怒涛の展開に、流石の蜜鎖も疲れていたらしい。疲れていても俺を攻めてくるあの姿勢には、もう感服でござる。やられた方はたまったもんじゃないが・・・。


「あ、もうこんな時間か」

「もうすっかり夜ね」

「帰らないと」

「せっかくお金も払ってるんだし、今日はここに泊まりましょう?」

「でも飯が無いだろ。ルームサービス結構高いぞ」

「私は善樹君がいてくれれば、何にもいらないわ」

「俺が腹減ってるんですけど・・・」


そう、ご存じの通り俺は昼飯もろくに食べていないのである。


「しょうがないわね、焼き魚定食でいいかしら?」

「そんな和風のルームサービス提供してくれるラブホ見てみたいわ」

「私が頼んで持ってきてもらうわ」

「え?」


数分後、どこからともなく現れたスーツの男達が、二人分の定食を置いて去っていった。


「何事・・・?」

「ここのホテル、私の父の会社が経営してるのよ」

「は・・・?」

「簡単に言うと、私はホテル王の娘よ」

「どこら辺が簡単になったの分からん」

「私の父は、世界の主要都市には必ずと言っていい程存在しているホテルの経営者、社長さんなのよ。ほら、咲川さんのご両親も社長なのでしょう?、それと同じ感じよ」

「それと定食に何の関係が・・・?」

「だから、ルームサービス関係無く、このホテルだったら私達は、私の家からタダでご飯が食べられるって事よ」

「ちょっと何言ってるか分かんない」

「はい、あ~ん」


色々と展開が早くて追いつけんぞ・・・。


「あ、あ~ん」

「うふ♡可愛い♡」


色々と展開が早くて理解が追い付かんぞ・・・。これと同じようなセリフをあと五回は言える。

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