take・30

「こちらがお部屋の鍵でございます。ごゆっくりどうぞ」


意外とすんなり入れてしまった。これで俺も一人前の男だぜ(※個人の意見です)。

薄暗い廊下を歩き、薄暗いエレベーターに乗り、薄暗い部屋へと辿り着いた。


「それじゃ、一緒にシャワー、浴びよっか♡」

「じゃあ俺後でいいよ」

「聞きなさい善樹君」

「ゆっくり温まってこいよ」

「聞きなさい」

「冷えない内に入れよ」

「ねぇ、お願い、入ろ♡」


か・・・、わ・・・、良い。


「じゃない、ダメだ、今は、ダメだ」

「どうして?」

「今そんな事をしてしまうと、自分を抑えきれなくなっちまうからさ」

「是非お願いしたいわ‼」


分かっていたけど、真正面から受け止めるのはとてつもなくやめてほしかった今日この頃である。


「いや、純粋に、その・・・、まだ早いだろ・・・」

「そんなぁ~、あ、善樹君、恥ずかしいんでしょ?」

「別に隠しているつもりはない、その通りだ」

「ふふ、可愛い♡」


何かふとした時にいつもより女の子な感じがして、何と言うか、可愛い。いや、これではただのそこら辺のオタクと一緒ではないか。


「だから、今日はひとまず別々で入ろう。な、分かってくれ」

「私おバカだから分からないわ」

「分かれ」

「いつもに増して強引ね善樹君。でも、そんな善樹君も好きよ」

「その明らかに誘ってるのやめろ」

「何で?誘ってるんだから別に間違ってないでしょ?」


コイツ・・・、何故黙らない。さっきからめちゃくちゃ寒い。


「じゃあ俺先入るわ」

「分かったわ」

「言っとくけど、入ってきたら流石に怒るからな」

「怒った善樹君も見てみたいわ」

「いい加減にしてくれ」


なんとか蜜鎖を落ち着かせ?てやっとの事で入浴へと駒を進める。それにしてもやはり初めてというものは苦手だ。ラブホテル関係なく、まずホテル自体に殆ど泊まった事無いからな。親の仕事の関係で海外は何度も経験済みだが、いつも咲川家の別荘で寝泊まりさせて頂いていたので、海外のホテルは経験が無い。ちなみにいつも早生の希望だったらしい。早生とずっと一緒だったしな。


「お湯ちゃんと出るかしら?」

「あぁ、大丈夫だ」

「そう、じゃあ入るわね」

「⁉」


気づいた時には、背中に二つの柔らかい感触。お尻に言い表せないイヤらしい感触。そして首筋にはおそらく唇であろうエロティックな感触。二世代くらい前の少年誌だったら、即座に鼻血ブーしてぶっ倒れるような、そんな展開・・・。


「であるからしてー‼な、何を、お、お前は・・・」

「うふ♡男らしくて・・・、でもちょっと柔らかくて・・・、良い匂い。こんなところ、クラスのみんなに見られたら私・・・、うふ♡むしろ見てほしいかも」

「あの・・・、ちょっとお時間を頂けないでしょうか?」

「何?もしかして・・・、元気になっちゃったの?」

「け、決してそんなことはなくてですね、その、一旦体を流してですね、湯船に浸かろうかな、なんて思った次第でございまして・・・」

「そう?でも、だぁ~め。私がもう少し、全身で洗ってあげるわ」

「もうアウトですよ蜜鎖さん」

「何で?」

「その「何で?」っていうのやめてもらっていいですか?」

「何で?」

「すいません、何か俺が誘ったみたいになっちゃって・・・」

「いいのよ、だから、もうちょっと・・・、いいでしょ?」


完全に支配された俺の裸体が、同い年の女の子に綺麗にされて、色々と失っていく。得ているものも多々ありそうだが、俺的に、失っているものが多い気がする。


でも、何だか悪くはない。

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