take・25

「な、何を、根拠に⁉」

「私も別に何もしたくないし・・・」

「ほう‼それで⁉」

「クラスでも隣の田中丸君がいるからやりやすいかなぁって・・・」

「素晴らしい‼君は英雄だ‼」

「おい、打ち殺す気か?」

「クラスでも?それは聞き捨てならないわね。何でいつの間にかこの部室でも善樹君の隣に座れると思ってるの?しかも、クラスで善樹君の隣なのは・・・、私だから‼」


いや、貴方と湯川さんの間なんよ俺。てか何でそこでキレてるんですか?


「まぁ、善樹がいいならアタシは文句無いぞ」

「ちょっと、よくそんな呑気な事言ってられるわね咲川さん。善樹君の周りに新しい女が増えるなんて私は賛成しないわ。危険よ」


何が?


「ふんッ、それくらいで善樹とアタシの仲は引き裂けないぜ‼ザマぁ見ろ‼」


何が?


「別に一人くらい部員が増えたっていいだろ?蜜鎖の気持ちも分かるけどさ、頼むよ」

「もう、勝手にすれば」

「すまん」


大人しくなれば、可愛い女の子なんだけどな・・・。


「よし、それじゃ湯川さん、屋内活動クラブにようこそ‼これからよろしく頼む‼」

「うん、よろしく田中丸君」


なんとこうして、短期間で四人目の部員の勧誘に成功した俺だが、更なる爆弾娘の悪化により、前途多難なのは変わりない。意外と早生が大人しかったのも少し気になるが、今は湯川さんにとにかく感謝したいと思う。部員が一人増えるというだけで、廃部の確率がグッと下がるという訳だ。これからの事は、また追々考えて行けばいい。というか、考えるのが面倒くさい。


「おはよう」

「おう、おはよう」


なんと朝である。特に意味は無い。湯川さんが入部してからの、初めての朝である。


「棕櫚さん、おはよう」

「・・・・・・、おはよう湯川さん」

「棕櫚さんおはよう」

「・・・・・・」


湯川さんには返すが、やはり俺にはレスポンスが無い。そう、この棕櫚という女は何故か教室や廊下、他の生徒の前では一切俺と口を利かない使用になっている。目すら合わせない。


「おい、聞いたか?棕櫚さんが湯川さんと挨拶を交わしてたぞ。やっぱり転校生の事もしっかり気にかけてあげてるんだなぁ~、流石聖母だぜ」

「う~ん、棕櫚さんはいつも通りパーフェクトだが、あの湯川さんもなかなかいいよなぁ~。全体的にいい感じに整ってる感じなんか最高だぜ」


とてつもなく幸せな思考してる奴らしかいないのかこのクラスは。ていうか湯川さん早速狙われてんのかよ。


「ねぇ、聖母って?」

「あ?あぁ、蜜鎖の通り名というか、蜜鎖の事が好きな男子達がそう言ってるだけだよ。いつも人前じゃおしとやか~にしてるからな」

「それでなんでその聖母さんに田中丸君は無視されてるの?」

「知らん。二人とか、早生含めて三人の時とか以外は何か無視されてる」

「へぇ~、何か分かったかも」

「何‼お前意外とスペック高いな⁉」

「田中丸君のスペックが意外と低過ぎるんじゃない?」

「お前意外とはっきり言うんだな・・・」

「あ、じゃあ私も田中丸君と部活以外では極力話さないようにした方がいいかな?」

「何故そうなる?」

「だって、さっきから何度も田中丸君越しに睨まれてるんだもん」

「はッ‼」


そこには、全校生徒憧れの聖母様が、太陽の柔らかな光に優しく照らされながら、静かに読書を嗜んでおられるのと同時に軽く舌打ちされた。


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