take・22
第四章
今日で部活が始まって十日が経った。未だこれといって成果は挙げられていないが、それこそが我が屋内活動クラブの成果なのではないか、と部長は胸を張って言うぞ。そんな記念すべき良き日に、何だかクラスは朝からザワめいていた。
「何かさ、今日転校生が来るらしいよ」
「マジ⁉この前あの汚物が来たばっかなのに⁉」
俺、とうとう男子から汚物呼ばわりされてたんだ・・・。
「どんな子かな?」
「女子らしいぞ」
「え‼マジかよ‼きゃわたんなおにゃの子希望だわ~」
ウェイ系オタクとか一番キモイ人種だわ。俺が逆に転校したいくらいだわ。これでWINWINやろ。感謝してもしきれんやろ。
「みんなおはよ~」
アホ教師の登場を合図に、みんなのドキドキが更に加速する。
「カッキーカッキー、転校生ってさ、可愛い?」
「え?ま、まぁ、可愛い?かな?どうだろ?ね?善樹君?」
「は?はぁ、どうでしょう」
俺に振るなアホ教師。こいつらが俺を省くことに全力で命懸けてる事を察しろ。
「そ、それじゃあ、朝のホームルームを」
「ねぇねぇ、もしかしてさ、結構ナイスバディな感じだったりする?」
「え⁉まさかのそっち系かよウケるわマジ」
「アリ寄りのモハメドだわ」
「そ、そうだね、はは、ははははは」
アホ教師お得意の無駄口が出てこないとかなかなかだぞ。天才かクラスメイト共。やたらと民度低い中に何かセンス感じる奴がいるのが少々ムカつくが、それは今は言わないでおこう。
「はい、え~と、もうみんなわかってると思うけど、今日はみんなに新しいお友達を紹介します。それじゃあ、入って~」
ゴクリッ。
盛った男達の視線が、教室のドアに向かっていやらしく注がれる。ていうか、女だって誰も言ってなくないか?
「失礼します」
その時の男子の反応は、どちらかと言えば良い、というくらいの感覚だった。もう一度言う。どちらかと言えば良い、そんな感じだった。
「湯川 栞(ゆかわ しおり)です。宜しくお願いします」
世間一般で言えば普通に可愛い。体つきもいい具合に思春期の男子好みといった感じである。スレンダーというのが表現としては正しいだろう。ていうか、ちゃんと女の子で良かったですね皆さん。
「それじゃあ湯川さんは・・・」
男子達の「僕の隣空いてますよ」感がクラス全体に充満している。ちなみに俺のクラスはもともと人数がいるので席に余裕などろくに無い。即ち、隣が開いている奴はほぼいない。俺を除けば・・・、ね。
「善樹君の隣しか空いてないね。じゃあ、善樹君、湯川さんをヨロシクね」
全く学習しない教師のおかげでまたしてもクラスの男友達と不仲良くなれたぜ。そういう言い方するからクラスの男共からの俺へのリスペクトが止まないんだって何故わからんのだ。お礼と言ってはなんだが、あとで先生が苦労して作った資料達をしっかり消してから上書き保存しておきたいと思う。
「よろしく」
「よろしくね、え~っと」
「田中丸、田中丸善樹。田中丸でも、善樹でも、どっちでもいいよ」
「わかった。じゃあ、改めてよろしく、田中丸君」
「おう」
「そうよ、それなら許してあげるわ湯川さん」
なんか変な声が聞こえたが無視しよう。
「気を付けなさい善樹君。ああいう大人しそうな女が一番危険なのよ。裏で何考えてるかわかったもんじゃないわ」
それ一番アンタが言えないよ・・・。
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