take・21
人間は、その時の感情だけでも物事の見方が変わってきてしまう。それにより、ふとした時のミスだったり、画期的なアイデアが浮かんで来たりするものだ。久々に寄ったこの河原も、俺の凝り固まった脳みそに何らかの刺激を、イマジネーションを与えてくれるだろう。俺は、そう信じて疑わなかった。そう、簡単に言うと、何となく河原に寄り道してみた。
「何だ、こんなところにいたのか」
「・・・・・・」
「棕櫚蜜鎖は先に帰ったぞ。何か用事があるんだってさ」
「・・・・・・」
「ん?どうしたんだよ善樹」
「俺、蜜鎖と会った事あるんかな?」
「‼」
「何かあんな子に昔会った事がある気がするんだよな」
「そ、そうか・・・」
「しかもお前も既に知り合いだったっぽいし」
「それは・・・」
「蜜鎖の昔の事なんか知ってるのか?」
「・・・・・・」
遠い空の雲と同じように、早生の髪が、夕日色に染まった瞳が、少し揺らいで見える。ただの思い付きとも言えるが、この早生への言葉に、俺自身多少の勇気と心構えがいった。自分には無い何かを、二人だけが知る何かを、だけど俺にどこか関係している何かを、二人は抱えているように感じていた。
「おい」
「んん~、そうだな、あいつ、適当な話でっち上げて、善樹と私は運命で結ばれてる~、なんて都合良い事言ってるだけだろ」
「じゃあ別に何も無いって事か?」
「し、知らねぇよそんな事‼自分で聞いてみればいいだろ‼」
「それが出来ないからお前に聞いてるんじゃねぇか・・・」
「何で出来ないんだよ?」
「何というか・・・、ハズい」
「・・・・・・、プッ、ハハハハハ‼」
「お、おい‼笑うな‼こっちは真剣なんだぞ‼」
「いっつもアホな事しか言ってねぇクセに、こんな時だけハズいとか、やっぱ善樹、昔から小っちぇよな‼、ハハハハハ‼」
「この野郎馬鹿にしやがって・・・」
「ごめんごめん、でも、アタシはさ・・・、善樹の事、運命っていうか・・・、必然だったと、思ってるよ」
「あ?ごめんマジ全然聞いて無なかったわ」
「じゃあ次からは二度と聞き逃さないように、このコンパスの針でお前の耳穴を直径プラス一センチくらい広げてやるよ」
「ま、また今度でいいよ・・・」
「じゃあ死刑」
「お先に失礼しま~す」
「あッ‼待て‼」
いつの間にか日も落ちかけて、肌寒くなってきていたので丁度良かったのかもしれない。今はこれくらいで、丁度良かったのかも・・・、しれない。
「おいお前ら、ダラダラしてないでちょっとは部活らしい活動をしたらどうなんだよ」
「それ、お前が一番周りに言えないぞ」
「そうよ善樹君。貴方が何もしたくないと言っているから私達も何も持ってこないのよ。やる気があれば依頼の一つや二つ、直ぐに調達してくるわよ」
相も変わらず我らが屋内活動クラブは平和である。特に何もしたくないので、何もすることが無い。実に充実したクラブ活動である。だが、そんな平和も長くは続かなかった・・・。
「あの~、ここってやってますか?」
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