take・12
「何よ‼この前測った時より何グラムか増えただけだもん‼太って無いもん‼」
「誰も太ったなんて言って無いだろ・・・」
「誰がポリタンクよ‼」
「あの・・・、棕櫚さん?・・・」
「いいわ、私をいじめた罰として今日から一週間、貴方には私専用のポリバケツになってもらいます」
「はい?」
「私のありとあらゆるあれこれを惜しげもなく詰め込んであげる。覚悟しなさい」
この人は、自分が何を言っているのか理解しているのだろうか・・・。ていうか完全にハメられた気がする・・・。
「というわけで、そろそろ本題に入らせてもらうわね。え~と、田中丸善樹さん、貴方が犯した罪はわいせつ物陳列罪、しかも現行犯ということですが、何か弁明などはありますか?」
「・・・・・・」
「田中丸さん?黙秘ですか?」
「あの・・・」
「何か?」
「取り調べというのは、このようにクソ狭いスペースに隣り合って座るものなのでしょうか?」
「はい、ウチのやり方は基本こんな感じでやっています。場合によっては、膝の上や、対面○位などのオプションが貴方専用で付けられますがどうしますか?今からお作りしますか?」
「いや、いいです。ていうか作るって何ですか?」
「は、恥ずかしい事言わせないで下さいよ~」
ワザとらしいし面倒くせぇ・・・。本当にあの学校で「聖母」だか何かと言われている奴なのだろうか・・・。
「あの、帰っていいですか?」
「ダメに決まっているでしょう?」
「いや、俺何にもしてないし」
「否認ということでよろしいのですね?」
「いや・・・、否認というか・・・。まぁ、いいです」
「何かまだあるのですか?」
「いや、もうどうでも良くなってきました・・・」
「何ですかその態度は‼真面目に答えないと一生私の半径一m以内で軟禁にしますよ‼」
「それもう軟禁とかそういう次元の問題じゃ無くない⁉意味わかって言ってます⁉」
「玉すだれって感じのヤツでしょう?」
「真面目に答えてないのそっちだろ‼」
この女、どこからどこまでが本気なのかが全くわからん。「本題に入る」とかなんとか言ってから、かれこれ一時間は経っている。そして時間経過と共にどんどんと棕櫚の顔が近くなっている気がするのは気のせいか・・・。
「おい」
「なぁに?」
「近いぞ」
「だから?」
「離れろ」
「ねぇ、今夜のご飯何がいい?」
「ここまで強引な話の逸らし方されたの初めてだ」
「そう?私がいいの?もう、善樹君は意外と積極的なんだね」
「ここまで話が嚙み合わないのも初めてだ」
チュ♡。
「あ」
「ん?」
「おい」
「貴方が何故逮捕されたのか説明してあげる」
「唐突だな。まぁ、今となっちゃどうでもいいけどな」
「貴方はいるだけで、生きているだけで卑猥なの」
「はい?」
「貴方を見ているだけで、私はとても感じてしまうのよ。だから善樹君が今日の朝、私の横を通って、隣の席に座って、呼吸しているとわかっただけで、私は隣の席で著しく興奮を覚え、替えの下着を用意しなければならない程に濡れていたわ」
もう先程のキスがどうでもよくなるくらいヤバいなこの女。
「ねぇ、わかる?」
「何が?」
「それくらい好きって事」
「あ?、あぁ・・・。まぁ、ありがと・・・」
「ふふ、照れてるの?可愛い。でも、今はそれだけでも十分だわ」
「もう、勝手にしろ」
この時俺は、初めての出来事、初めての感情にとても戸惑っていた。
生まれて初めてのキス、生まれて初めての告白、しかもとびっきり可愛い女の子に。普通の男だったら二つ、いや一つ返事でOKかますだろう。そんなこと当たり前だ。誰にでも分かる。俺だって男だから。手を繋ぎたい、抱き締めたい、いやもっとそれ以上も・・・、なんて。
思えるわけねぇだろ。キスも告白もタイミングとかもわけわからん。俺が生きてるだけで卑猥ってなんだそれは。あの女の思考の先が常に卑猥なだけだろうが。
本当に・・・、誰かどうにかしてください。
田中丸善樹、十七歳。初めての彼女が出来た。彼女(仮)が出来た。ヤバい女の彼氏にされた・・・。
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