take・10
何だか見られている気がする。いつからかって?、そりゃ学校の校門を出てすぐから。
確実に四人はいる。俺でも分かるのだからプロの殺し屋とかそんなヤバい奴ではなさそうだ。
それとなく撒こうとしているのだが意外としつこい。というか誰かに連絡を取ったりしている。
いっその事ダッシュかと踏み切ろうとした時、
「ちょっといいかい?」
「はい?」
「君に聞きたい事があるんだ。署まで一緒に来てくれないか?」
「いや、僕何もしてない・・・」
「大体みんなそう言うから。あ、ちょっと待って、電話だ。はい、はい、はい分かりました。田中丸善樹、わいせつ物陳列罪の容疑で、十四時四十二分、現行犯逮捕な。よし」
「ちょ、ちょっと待ってくれよ‼何でだよ‼全然分かんねぇよ‼」
「暴れるな、話は署で聞くから」
テンプレのようなセリフを吐きながら、無駄に強い力で俺の腕をおっさんが引っ張っていく。
「おい‼待てって‼」
ついには黒い布を頭からかぶせられ、車に押し込まれた。絶対こいつら警察じゃないだろ。俺は転校初日で、嫌われ者と、前科者になった・・・。
「という訳で、自分が何しちゃったのか、わかる?」
「わからん。そしてまずこの状況が全くわからん。なんでお前がいるんだ?」
警察署に向かうと思いきや、向かったのは大豪邸。そしてドラマで見たことのあるいかにもな部屋に通されると、なんと出てきたのは同じクラスで隣の席の同級生。
「説明しろ。そして早く解放しろ」
「ふふ♡、少しはこの状況を楽しむくらいの余裕があってもいいんじゃない?ただ焦ったり、キレたりしてるだけだと、カッコ悪いわよ」
「余計なお世話だ。棕櫚、お前は一体何がしたいんだ?」
「こんな部屋を用意したんだから、カツ丼でもどう?」
「聞け‼人の話を聞けよ‼お前は俺をどうしたいんだよ⁉」
「私のモノにしたいのよ」
「は?」
「貴方の事を愛しているから、誰にも渡したくないの」
一瞬時が止まる。俺の脳が未だかつてないレベルで回転するわけでもなかったが、そこそこ回転した末に、結局何も導き出せず・・・、結局何もわからない・・・。
「え?、告白されてるの?俺」
何とか振り絞った渾身のコメントがこの有様である。その瞬間、リストラ直後のおっさんだったら毛髪が全て抜け落ちて自殺を考えてしまいそうなほど冷たい視線が俺に突き刺さる。
「貴方、相手が普通の女の子だったら即減滅されて終わりね。告白の返答に欠片も男らしさを感じないし、アホだし、デリカシーないし、何もかも童貞イズムが全開フルスロットルって感じだわ」
「そんなに酷いの俺・・・。じゃねぇわ‼お前さっきから俺の悪口しか言ってないじゃねぇか‼愛してるとか言っておいて結局俺を馬鹿にしやがって‼普通だったら好きな奴にそんなことしないだろ‼嘘の告白までして一体何が目的なんだよ⁉」
「嘘じゃないわ」
「いやおかしい、絶対に何かあるだろ‼」
「嘘じゃない」
「信じられるかそんなもん。もうこんな茶番に付き合ってられないから、早く家に帰してくれ」
「嘘じゃないって言ってるでしょ‼」
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