take・5
おはやうでござる。そうそう、自己紹介をすっかり忘れていた田中丸善樹(たなかまる よしき)です。
早生とは幼馴染の一個年上の高校二年生です。この春からだが。特に秀でた才能は無く、ごくごく普通の男子高生です。
紹介はこんなもんでいいと思います。自分で決めました。最後に一つ、この物語の主人公です。(笑)
「おい、早く起きろ」
「何だよ、今自己紹介してたんだよ」
「誰にだよ。お前の情報知りたい奴なんて今難事件を捜査中の警察くらいしかいねぇよ」
「俺何も犯して無いけど」
「軽犯罪しかしてなさそうな顔してるからじゃない?」
「どんな顔だよそれ・・・」
朝から早生の口撃をもろに被弾しながら、おそらく昨日の約束の事であろうと準備を進める。転校初日だからなんなのだと未だに思いながら、慣れないブレザーのネクタイを通す。天気は生憎のの晴れ模様。無駄にテンションの高い奴らのヤバい新学期テンションを更にパワーアップさせる最悪の天気となってしまった。軽く死にたい。誰か今日だけ生き埋めとかにしてくれ。
「おい、早く飯食えって」
「じゃあ作って」
「は!?あ、アタシが!?」
「おん」
「おんってなんだお前えぐるぞ」
「どこの何をだよ!?まさか料理出来ない系女子の方ですか?」
「は・・・、はい・・・」
ふッ・・・。
「何だその顔」
「いや、別に」
「何か言いたそうじゃないか」
「い~や。じゃあ自分でやるかな」
「お前・・・、出来るのかよ?」
「当たり前じゃないか。これくらい基本さ」
といっても、せいぜいチャーハンが何とか作れる程度のレベルだが・・・。
「あ、アタシにだって出来ない事くらいあるさ」
「基本何でも出来るみたいな言い方するな」
何故ここで強がろうとするのかさっぱりわからん。
手早く目玉焼きなどを仕上げ、卓に着く。
「は、早いな・・・」
「まぁ、これくらいの料理には俺でもさほど時間はかからないぞ」
「そ、そうなのか。凄いな・・・」
「お前、本当に何にも分からないし出来ないのか?」
「うん・・・」
「・・・」
「何か言えよ!」
「あ、いや・・・、そうなんだって思った」
「テメェなぁ・・・」
「いやいや、そんなに気にする事じゃ無いと思うぞ?別に料理の一つや二つ出来なくても就職出来ないわけじゃ無いしな」
「そーだ、一つだけ出来る得意料理があったんだ」
「おー、何なんだ?」
「お前の首絞めだ」
「それただの絞殺だからな!?昆布〆みたいに言ってんじゃねぇよ!」
「おら、まずは下ごしらえからだ」
「ま、待て!目が本気だぞ!やめろ!」
対抗手段として身近にあったチョップスティックという武器を装備。だが、いかにも攻撃力の低そうなそれに既に死期を悟る。俺の運命やいかに・・・。
「早生様、遅刻してなさいますよ」
「え!?」
執事からの警告に目を覚ました殺人未遂女子高生。(※まだ何もされていません)
「何ボケっとしてんのよ!早く行くわよ!」
「お前が俺を別の所へ行かせようとしてたんだろうが!」
急いで靴を履き、玄関の鍵を〆る。あ、閉める。
「善樹様」
「はい?」
「早生様を、宜しくお願い致します」
「まぁ、いつもの事ですから。任せてくださいよ」
俺の高二の新学期が始まる。
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