take・4

「ねぇ早生ちゃん」

「キモイ」

まだ名前呼んだだけだよ・・・。


「これ」

「なんだよ?」

「この前借りたスク水・・・、じゃなかったこれだこれ。漫画、返すぜ」

「おう。でもその前に何かアタシに渡すものがあるんじゃないのかな善樹君?」

「なんざんしょ?」

「とぼけるな」

「パッ!出た!」

「おとぼけるな!黙れ!なんでアタシがお前のくだらないボケにツッコまなきゃならんのだ!いいからさっきのスク水出せ。出さないともぐぞ」

「ど・・・、どこを?・・・」

「聞かなくてもわかるだろ」


見て楽しんで生きていくか、やって楽しんで生きていくか、究極の二択である。いや、そんなこと言ってる場合じゃないのよ。


「はい・・・、どうぞ・・・」

「あからさまにガッカリしてんじゃねぇよこの完全変態」

「カブトムシか俺は」

「これをいったいどこで仕入れた?」

「朝市です」

「アタシの聞き方に文句があるなら聞こうじゃないか」

「ポストに入ってました」

「嘘が独特というより、発想力がとてつもなく貧困だな」

「違うんだ嘘じゃない!!!」

「お前急にドラマで犯人扱いされる学生みたいになってどうしたん?」

「本当なんです信じてください」


錐もみ式にも引けを取らない摩擦力でデコを床に擦りつけながらの土下座。からの、重力に逆らっているんじゃないかと疑うレベルの体幹の強さを誇るブレの無い土下寝。


「わかった。信じてやろう。だが、これは没収させてもらう」

「ありがとう。勘弁してください」

「ちゃんと分けて返事をしろ。しかしまたなんでこんなもんを・・・。お?、名札が付いてるじゃん。どれどれ・・・、え・・・」

「なんて書いてあるんだ?まさかお前の友達か?」

「そ、そんなわけないだろ!!!つか見たんじゃないのかよ!?」

「あぁ、お前が来る前に袋を開けてスク水だと確認しただけで、何だか怖かったからそのまま放置しといた」

「じゃあなんであんなに大事そうにしてたんだ?」

「いや、何となくノリで・・・」

「チッ、まぁいい。見せてやる。ほら」

「なんだこれ?・・・、読み仮名は・・・、しゅ、ろ?棕櫚?聞いたことないな」

「何!?聞いたことないだと!?」

「へ!?何だよ!?なんか問題でもあるのか!?」

「いや・・・、特に問題は無い・・・。別に覚えてないならそれでいい。一生思い出すな」


何故そこまで?

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