第27話 対暴走魔獣戦②
マリアが投てきした無数の
「グァァァァァァ」
ナイトメアヘッジホッグは叫び、放出していた光線がかき消された。と、同時にレンのレイダストリアも限界点に到達していたので打ち止めされた。
「・・・ふう、何とか凌げたか。今回はマリアに助けられたな」
砲撃筒に火犰尽散が突き刺さって、思いのほかダメージを受けているナイトメアヘッジホッグは、その場でもがき暴れている。
「ふふ、まだ終わりじゃないわよ、暴走魔獣! これで終わらせてあげるわ!」
マリアは火犰尽散維持のため、広げている右手を力強く握りしめた。
「火犰尽散・
砲撃筒に突き刺さった火犰尽散が光り輝き膨張し、一斉に爆発したのだった。
「グガァァァァァ」
凄まじい爆発音の連鎖と共に、ナイトメアヘッジホッグが炎と煙に包まれて、様子が伺えなくなってしまう。
「はあ・・はあ・・・さすがに魔力使いすぎたわね」
「マリア、よくやった! 筒の中に火犰尽散を刺して爆発させるなんてな。あれじゃ、ひとたまりもないだろうさ」
「ふふ、お褒めに預かり光栄よ兄さん。あとで、口づけのご褒美頂戴ね」
にこやかに投げキッスをしてくるマリアだった。
「アホか・・・そんなことするわけないだろう」
と、少し恥じらいながら否定しつつも、未だマリアに好意を寄せられていることを感じると自然に笑みが表れていた。
「むっ・・・」
『ギュッ』
「いたっ!」
突如、右腕に痛覚が走り後ろを振り返ると、フィオが少々怒り気味にレンを睨みつけていた。
「あの・・・フィオさん、右腕をつねられて痛いんだけど、俺・・・何かしました?」
ちょっと怖かったので恐る恐る聞いてみる。
「知りません、自分の胸に手を当てて聞いてください」
顔を反らし、つ~ん、な感じのフィオ様であられた。
「マリア・フェイグラム・・・彼女も末恐ろしい魔法の使い手だな。それに判断力と魔法センスも非凡なものを持っている」
「マリアちゃん、凄すぎ! 私が男だったら惚れているわ!」
「フェイグラム兄妹、未知数・・・」
ナイトメアヘッジホッグの周囲一帯が煙に覆われている中、とりあえず安堵している生徒たちだが、そこに1人の人物が現れた。
「みんな、待たせてすまない。状況はどうなっている?」
学院長だった。
「学院長、今レンたちが暴走魔獣を駆逐したところです」
ディアナは、これまでの経緯を学院長に話した。
「・・・レン君がそんな事を言ったのね。でも、それが正解だったみたいね。仮に私や応援部隊が駆けつけるのを待っていたとしても、この相手にどこまで善戦できただろうか分からないしね」
「ええ、自分もAAクラスの魔獣なんて倒せる気がしません」
「一応、ギルドに救援要請出したけど、この様子じゃ必要なさそうね」
「この魔獣相手に、よくここまで戦えるものだ」
学院長もディアナも、レンたちのずば抜けた戦闘技術に、計り知れないものを感じ取っていたのだった。
何やら、外野が騒がしいので振り返ってみると、いつの間にか学院長が来ていたことを知り、暫くそちらを見ていたら学院長が軽く手を振ってきたので、軽く会釈をした。
後ろを振り返った際、凛の治療具合を確かめようとした時、耳元で怒気の強い声がした。
「レン様! まだ生きています!」
「!! なんだと」
すぐさまナイトメアヘッジホッグの方に目を向け様子を伺うと、煙越しではっきりとは確認できないが、何かをしようとしているのは分かった。
「マリア! 危ない! 避けろ!」
「えっ?」
魔力をかなり消耗し、疲れ切って油断していたのか、完全に無防備だった。
「グァァァァス」
ナイトメアヘッジホッグから、先ほどと似たような光線がマリアに向かって放たれた。
「ウソでしょ・・・あれでまだ生きているなんて」
障壁を展開する余裕もなくどうにか回避行動に移ろうとするが、完全に気を抜いていたので間に合うはずもなかった。
「キャァァァァ」
ほぼ、直撃を受け吹き飛ばされるマリア。
「マリアーーー!」
「回復に向かいます!」
フィオは、すかさずマリアの元に向かう。
死んではいなかったナイトメアヘッジホッグだが、砲撃筒は壊滅し至る所が炎症しているので、結構なダメージは負っている。暴走した魔力も衰え始めてきてはいるが、まだまだ油断できる状況ではない。
「これはマズいな、私も出る。ディアナも手伝ってくれ。この状況では少しでも戦力が多い方が良いだろうしね」
「分かりました」
「私も参ります」
いつの間にか学院長の側にいたマルコス。
「よくも、マリアをやってくれたな・・・」
凛の次はマリアまで犠牲になり、もう誰も傷つけさせないと誓っていた自分の不甲斐なさに、怒りと情けなさの感情が同時に表立って不安定になるレン。
「お前なんかもう素手で殴り飛ばさなきゃ気が済まないな!」
右手に無属性の魔力を集約し、ナイトメアヘッジホッグに向き直った。すると、ナイトメアヘッジホッグも魔力に反応しレンの方に標的を向ける。
「覚悟しろよ。裁きの鉄槌だ!」
加速力で威力を増そうとアクセルバーストを唱えようとした時、背後から得体のしれない膨大な魔力を感じ取った。
「!? なんだ・・・」
後ろを振り返ると、昔どこかで見たことのあるような・・・懐かしい感じのどす黒いオーラが立ち込めていた。
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