第23話 中二病を患う妹
「私の相手は・・・バンデットウルフね」
マリアの相手は、バンデットウルフ5体。
集団で群れを成すバンデットウルフは、獰猛で餌の対象になるものを見つけると、一斉に襲い掛かってくる。単体だと脅威度Cクラスだが素早い身のこなし、噛みつき・ひっかき、あと風系の攻撃魔法を使用してくる。詠唱の長い魔法は使用しづらく、魔術士にとっては厄介な相手だ。
「5体か・・・少し面倒ね。魔法は躱され易いから、アレを使いましょうか」
マリアは決断すると、即座に魔法詠唱を始めた。
「我求めるは、劫火の炎」
マリアの両手に魔力が灯す。
「魔を斬り、魔を断つ、断罪の剣となりて、燃やし尽くせ」
その両手から魔法円が何層も構築され、次第に紅く染めあがっていく。
「顕現せよ! 劫魔剣・
詠唱が終わると、両手に魔力が剣の形となり紅く輝き放つ炎の剣が具現化された。
実のところ、マリアも無詠唱で魔法を使えるのだが、【魔法の神髄は詠唱してこそ!】だと豪語している。
大抵の魔法、詠唱する余裕がない場合以外は、今のように詠唱を行う。なので、詠唱は完全オリジナルだ。
同じ魔法でも、その場面の状況や気分で詠唱が異なる・・・結構いい加減なマリアだ。
まあ単に、詠唱するのがカッコイイと思い酔いしれているだけなのである。それを本人に言うと物凄く怒るので、レンもフィオも今はそっと見守っている。
「さぁ、斬り刻んで燃やして差し上げるわ!」
Bウルフが一斉に襲い掛かって来るのを、怯まずに応戦するマリア。
「セイッ!」
先頭にいたBウルフに斬りかかる・・・が、寸前で躱される。
「チッ、すばしっこいわね」
「ガルルルル・・・」
炎の剣を警戒して、Bウルフは攻撃を中断し、散開してマリアを取り囲む。
すると、Bウルフ5体が一斉に風魔法を詠唱し始めた。
「!! そっちも私を切り刻む気ね。でも、そうはさせないわ」
マリアは、両手にある炎の剣を胸の辺りで交差させ身構える。
「ワオーーーン」
遠吠えすると風魔法・ゲイルトラストを発動させた。
縦状の風の刃がマリアに目がけ猛スピードで襲い掛かる。
「今ね!
マリアは両手を真横に広げ、足元を中心に竜巻を発生させた。さらにフィギュアスケートのスピンのように自信を高速回転させて竜巻の勢いを加速させる。
すると、火犰尽散の燃え盛る炎が竜巻に煽られ、竜巻全体が炎に包まれた。
その火炎竜巻で、いとも簡単に5本のゲイルトラストを焼却させた。
「よし、ここね」
回転を止め火炎竜巻を消し、火炎竜巻に気を取られていた一番近いBウルフの元に詰め寄り斬り刻む。
「1つ!」
1体目の胴体を真っ二つに斬り燃やし、間髪入れずに2体目に飛び掛かる。
「2つ!」
2つ・3つ・4つと・・・Bウルフが回避行動する間もなく、高速移動で斬り刻んでいった。
「ラスト!」
気持ちよく、とんとん拍子で片付けたかったが、さすがに最後のBウルフまでは少々時間が経っていたので、マリアの攻撃に反応し後ろに飛び跳ねて回避行動に移っていた。
「そうは、問屋が卸しません!」
しかし、マリアは冷静に相手の動きを把握し、次の攻撃態勢に移行した。幼いころから冒険者をやっていただけはある。
「伸びろ、火犰尽散!」
驚いたことに、両手に持っていた火犰尽散を融合させ、さらに魔力を込めることで火犰尽散の5倍は超えるほどの長さで、Bウルフを捉えた。
「悪・即・斬!」
結構、中二病気質に育ったマリアである。
「・・・ふう、いっちょ上がり!」
「ふむ・・・マリア・フェイグラム、終了か。かなりの腕前だな」
ディアナはマリアの格闘センスに驚いてはいるが、顔色一つ変えてはいない。
「さて、兄さんはどうしているかしら・・・」
マリアは一息ついてレンの様子を伺う。
「あら・・・あれ、ナイトメアヘッジホッグじゃないの。兄さんだけ冗談ではなかったのね。まぁ、兄さんなら問題ないか」
若干驚くも、兄の実力を一番近くで見てきたから、難なく対処できると思ったのである。
そして、もう一人の妹はというと・・・
「・・・・・・つまらないわね」
自分の身長と同じくらいの大きな鎌を右手に持って、ため息交じりの声でつぶやき佇んでいた。
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