第15話 入学を賭けた戦い
――――闘技場
学園長と入学を賭けて勝負することになったが・・・さて、どう戦うか。学園長の情報が何もないから、うかつに懐に入るのはやめておいた方がいいな。先ずは、遠距離で牽制してみるか。
「準備はいいかな?」
「ええ、いつでも」
「それでは、僭越ながら私マルコスが進行を務めさせて頂きます」
マルコスさんが実況席から発言する。同じくマリア、フィオもそこにいる。
「試合、開始!」
「!?」
開始と同時に学園長が猛スピードで突進してきた。
「近接戦闘型か!」
右手に炎を纏い、高速ジャブを連打してくる。
「くっ」
寸前で変わすも、不意を突かれたので態勢が崩れて立て直しが思うようにいかない。
「フフ、このくらいなら避けるか・・・なら、これはどうかな」
後方に飛び下がり、右手を構え集中し始める。
「フレアバレット」
初級魔法か・・・でもやはり無詠唱で簡単に出してくるか。
「この程度、障壁ではじき返・・・」
突如、後方に殺気を感じた。俺は、即座に振り返る・・・が、上空に飛んでおり、すでに魔法発動寸前だった。
「遅い! フレアサークル!」
俺の足元に魔法陣が形成され、即座に魔法陣から広範囲の爆炎が燃え広がる。
「なっ、下か!」
俺は回避する間もなく炎に包まれてしまった。
「学院長、思っていた以上に強いわね」
マリアは、兄を容易にあしらうアイヴィの実力に少々驚かされていた。
「これでも、アイヴィ様は『赤碧の魔導王』という異名を持っておられますからな」
「!! 聞いたことがあります。10数年前、王国に突如魔獣の群れが押し寄せ、圧倒的な熱量の炎魔法で殲滅させ危機を救ったという魔導士・・・学院長だったのですね」
「そんなことがあったのですね・・・そんな方にレン様、大丈夫でしょうか?」
「兄さんなら、大丈夫よ。兄さんも規格外だから!」
「こんなものなの・・・」
アイヴィは、思った以上に歯ごたえがないと感じていた。
「この程度の揺さぶりにも対応できないとはね」
「・・・・・」
想像以上の手練れだな。かなりの格闘センスだ。完全に裏をかかれてこの様だ。もし、これが対応しきれないほどの魔法威力なら俺は死んでいた。
「自分の愚かさに幻滅しそうだ」
「!?」
突如、炎の中からレンの声が聞こえ炎を凝視するアイヴィ。
「ディストアLv3」
俺は燃え盛る炎を、一瞬で消去した。
「なっ、一瞬で私の魔法をかき消すなんて・・・それに、炎で焼かれた痕跡もないとはね」
「学院長・・正直、俺・・・あなたを侮っていました。戦いとは、いつも死を覚悟しなきゃいけないのに、まともに今の魔法をくらってしまいました。もし、今の魔法が俺にレジストできないほどの威力なら焼け死んでいましたよ」
「確かに、君は知恵を持つ相手との戦いは、些か経験不足のようだね。だが、魔法技術は申し分ないと思うがね」
「それはどうも・・・では、その魔法技術の一端をお見せしましょうか」
俺は集中し、右手を天に掲げ魔法発動準備に取り掛かる。
「フレアバレット・オペレートクアドラプルLv4」
4つのフレアバレットが掌に具現化し、弧を描くように高速で回転している
「!? 4つ同時にフレアバレットを具現化ですって!」
「いきますよ。避けないと、結構痛いですよ・・・セイッ!」
4つのフレアバレットが散らばり猛スピードで、学院長に目がけて飛翔する。
「くっ」
1つ目を変わすも、第2弾が飛んでくる。
「くぁっ」
第3、第4と飛翔し襲い掛かるファイアボールにアイヴィは、かすりながらも何とか見切り避けきる。
「ふぅ・・・驚いたよ。面白いな君は」
「さすが学院長。猛スピードで迫る4つの火球弾道を見切るとは、御見それしました。ですが・・・まだ終わっていませんよ」
「なに?」
周囲を見渡すアイヴィ・・・そこに在るはずもない物が浮遊しているのに驚きを隠せないでいた。
「・・・さっきのフレアバレットがまだ存在している? まさか・・・まさか」
「その、まさかですよ!」
そう言って俺は、学院長の中心から東西南北に配置させていたフレアバレットを学院長に目がけ突撃させた。
「なっ! まずい!」
逃げ場のない学院長は、当たる寸前で上空に飛び跳ねた。
「甘い!」
俺はすかさず、フレアバレットをコントロールし再び学院長に狙いを定めた。
「!? くっ、これは避けきない」
全弾命中し爆発音とともに学園長周辺に煙が立ち込める。が・・・
「シールドですか」
「・・・・・」
無言で俺を見つめる学院長。
「ノーダメージのようですが、如何ですか? 特待生としての実力はこれで示せたでしょうか?」
「・・・いや、まだだ。確かに意表はつかされたけど、私にダメージは入っていない。少なくとも私にダメージを負わせないようでは特待生としては認められないかな」
「そうですか・・・」
仕方ない・・・あのシールドを破壊するのは容易だが、ただランクの高い魔法を使うだけでは芸がない。ここは、絶対にあり得ないことでシールドを破壊させた方が一段と面白い。
「それでは、学院長にとっておきの魔法を見せましょう!」
俺は即座にスタンバイする。今の俺が制御しきれるだけの魔力を増幅させようか。
「ほう・・・次は何をしてくれるのかな? でもね、ただそれを見ているほど私は甘くないぞ!」
そう言い放って、俺に距離を詰めてくる。
だが、俺は動じずマテリアルシードを一気にブーストさせる。
「はっ!」
俺の周囲に強烈な熱気が巻き上がる。
「なに!?」
学院長は危険を察知し急ブレーキで立ち止まる。
「なんなの、その熱量は・・・なんて莫大な魔力」
信じられない表情で俺を呆然と見ている。
右手に具現化した魔力が球体を形作りそれが炎となり、増々肥大化していく。
「これほどの魔力を放出するなんて・・・想像以上だよ」
「ふふ、実はこれ只のフレアバレットですよ・・・超特大のね」
「なっ! それがフレアバレットだというのかい!? あ、あり得ない」
「魔法構築は普通のフレアバレットと同様ですよ。ただ、それを増幅させているだけです」
「なっ・・・魔法を増幅させるだって? そんなの聞いたことがない」
「でしょうね。俺のユニークスキルですから」
「さぁ、限界まで来ましたよ。踏ん張ってくださいね、学院長!」
でも、さすがに全力はきついな。MPがごっそり持っていかれて行くのが分かる。
直径が俺の身長と同じ大きさの超特大フレアバレットの発射準備が整った。
「フフフ、まいったな・・・赤碧の魔導士の名が泣くわね。私など足元にも遠く及ばないほどの桁違いの魔力だ・・・」
アイヴィは圧倒的な魔力差に、ただ苦笑いしかできないほど戦意喪失していたのだった。
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