第3話ダンジョン配信者MAO再誕

『本日、11時頃ダンジョンで“モンスターの異常発生――――いわゆるスタンピードが発生しました。日本特殊地下構造体協会は、『スイスにある探索者協会の規定に従って事態対処に努め、本日の20時頃に事態の安定化を確認しました』と発表しました現時点で判明している死傷者数は死者10名、重傷者20名、軽症者80名で現在でも行方不明者がおり、協会と警察は安否確認をしております』


 付けっぱなしのTVが深夜のニュースを映している。5,10分放送されるストレートニュース形式の番組だ。


「起きましたか……」


 そこに居たのは耳の長い美女だった。


「エルフ……」


「エルフ……と言うのは、貴方の記憶によれば、この世界では耳の長く長命な架空の人種のことを指す語彙なんですね。そういう意味であれば、私はエルフと言う種族です」


「くっ、あの後、一体何が……」


「記憶が混濁するのも無理はありません。あなたは死の王の力、その一片を振るい襲い来るモンスターを討ったのですから……」


「死の王、力、モンスターを討った……契約」


 彼女の言葉を反芻しながら混濁したした記憶を思い起こす……


「そう、あなたは私と契約なされ死の王となったのです。王にはそれ相応の責務があります。先ずはダンジョンを築いてください」


「ダンジョンを築く?」


「その通り、ダンジョンは人が管理している城です。城主が指示を出さなくてどうなるというのですか?」


 彼女は何をいってるんだ? と言いたげな表情を浮かべる。


「ダンジョンってもしかして一つ一つに王、つまりダンジョンマスターがいるってこと?」


「ええ、ほぼ全てのダンジョンには王がいて管理運営を行っています。契約の内容はあなたがダンジョンを運営し私がサポートすることです」


 嘘だろ……ダンジョンって人が運営してたんだ。


「さ、早速ダンジョンを設置運営してみましょう」


………

……


 エルフの女性……名前を聞いたが日本人には到底発音できなかったので聞き取れた部分を繋げて、エルと呼ぶことになった。


 エルによればダンジョンは二つの陣営が管理しており、地球側と異世界側でエルは地球側に属しているらしく、あのダンジョンには、ダンジョンの掌握のために事情を知っている高位探索者と向かったのだが、途中で逸れてしまいそのままダンジョンに潜ったら、異世界側ダンジョンマスターに殺されかけたということらしい……エルの考えなしで10人死んだよ。


 エル曰く、現在地球人がダンジョンと呼んでいるのは強襲揚陸用の駆逐艦や巡洋艦、戦艦、空母のような時空間を移動する軍艦や城の防衛の設備や兵装のようなものを指すらしく、エルが言うダンジョンは押収・接収した軍事拠点を地球人の訓練用に調整したものらしい。


 また城とも言われるダンジョンを保有するものは城主と呼ばれ、騎士や貴族に叙される者や王を名乗るモノもおり、地球側は複数の部族の連合であるため、爵位で差をつけないように称号を一律で王で統一したらしい。


管理者じゃだめなのだろうか?


「で、なんでダンジョンを運営しないといけないの?」


「ダンジョンは無限に資源を生み出す魔法の道具じゃないの、魔力を使ってモンスターやアイテムを生み出す工場のようなモノよ管理する人間が必要でしょ……」


「それもそうか……」


「極端な赤字・黒字経営にならないように調整しつつ探索者ヒトを呼び込まないといけないのよ。魔力は以下の手段で貯める事ができるわ」


  1.地脈などから魔力を吸い上げで回復

  2.侵入者がダンジョン内にいる状態を維持して人から魔力を回収する。(侵入者の強さ次第)

  3.侵入者をダンジョンで内殺す。(侵入者の強さ次第。ただし出来るだけ殺しちゃだめ)

  4.骸を捧げる。(死体の元の強さ次第)

  5.宝物を捧げる。(お宝次第)


 エル曰く、大体の地球側の管理ダンジョン大体一日で殺されるモンスターの総量を純粋に計算すればマイナスが出るとのことだが……マイナスを抑えるために、多くのダンジョンでは増殖型モンスターを使う事でコストが抑え利益を確保している。


 例えばスライムであれば、一定周期で分裂する。栄養状態や分裂しやすい環境を整えてやればその時間はもっと短くなる。

 ゴブリンなどの亜人系や動物系も勝手に増えるタイプのモンスターなのだが……強いモンスターになればなるほど、増殖周期は長くなる。


 また死霊系などの実体を伴わないモンスターは強力だが、増えないのでコストが高い。だから計画的に管理しないといけないとのことだ。


「説明は理解できた。つまり、リアルタイムでタワーディフェンス型のゲームをやるようなモノかと考えれば何とかなる……」


 だがコレは好機だ! 今まで同時接続数が一桁しか言ったことのない自分が、平日の真昼間でも同時接続数2000以上を叩き出す。

 大手ダンジョン配信者三みたいになるには、飛び道具を使うしかない。その飛び道具としてダンジョンを運営するというのは新しい……よくも悪くもバズる可能性が高い。


 麻生まおはゴクリと喉を鳴らし生唾を飲み込む……

 その様子を黙って見ていた。エルは麻生まおに向けてこういった。


「やりたいことがあるのなら、ダンジョン管理する王をしながらやればいいさ」


 エルの一言で決心がついた。


「……俺はやるよ……ダンジョンを使って成り上がってやる! 今日はダンジョン配信者MAOの第二の誕生日だ!!」


 こうして、ダンジョンを攻略し動画を配信・投稿するダンジョン配信者から、ダンジョンを維持・管理し探索者からダンジョンを守る管理者となるのだった。

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