ボツ 現代ダンジョンモノ供養投稿 ダンジョンマスターMAOの魔王業
第1話売れないダンジョン配信者MAO
「はぁ……いつものことながら同時接続数ゼロ……憧れのダンジョン配信者になったけど世知辛いねぇ……」
ダンジョン配信者の
ダンジョン。
数年前に突如として世界に出現した特殊な地下構造体で、モンスターという生物が出現する。まさにゲームのような不思議な空間。
そんなダンジョン内で時に戦い、時に美味いグルメに舌鼓を打つ様子を配信する人々をダンジョン配信者と呼び、コメントを通して配信者と繋がることが現在世界中で一代ブームになっていた。
剥き出しのゴツゴツとした岩肌の壁が視界の全てを占め、重苦しい圧迫感や閉塞感を感じさせ。
MAOの元気のない声が
カメラの画面は間違いなく『LIVE中』という五文字が表示されている。
本来人気商売の人間は表立ってネガティブな発言をするのはあまり望ましくないのだが……幸か不幸か同時接続数0人なので全く問題がなかった。
まだ初心者とは言えど、空前の大探索者時代だから「同接10人は余裕だ」と高を括ていたのが災いしたのだろうか?
「サムネイル画像も、公式〇witterもInsta〇ram気合れて一か月前から稼働させてたんだけどなぁ……やっぱり時代はショート動画でバズらないとダメかぁ……」
などと反省しながら凸凹とした道を歩いていく……
「帰ったら、今流行りの『カマキリダンス踊ってみた』をこの格好で踊ってみるか……」
考え事をしながら歩いていたせいで気が付かなかったが、どうやら分かれ道に辿り着いたようだ。
「別れ道か……俺のダンジョン配信者人生も“分かれ道”ってことかな……」
干渉に浸りながら呟いた。
ピコンと電子音が鳴る。
「あっ通知だ……ソシャゲかな?」
すると合成音声がコメントを読み上げる。
コメント
・M字ハゲの宇宙王子『初見です。分かれ道ですねどっちに行きますか?』
ダンジョン配信者生活初のコメントである。
「コメントありがとうございます! どっちに行くか悩んでるんですよ良かったら決めてくれませんか?」
――――とついつい嬉しくなって、コメント一つに過剰に食いついてしまう……
コメント
・M字ハゲの宇宙王子『平均化しないと気が済まないので左で……』
「了解です。統計学的に人間は右を選びやすいそうなので裏をかく選択は面白そうですね」
大きく移動するのに合わせて追従型カメラ。通称【
分岐を抜けて直ぐそこに居たのは、ダンジョン配信者の登竜門ゴブリンと人気の高いスライムが合計3匹、ルームと呼ばれる大部屋に存在していた。
緑色の肌と額に生えた小さな角が人外を表している。
服装と装備は原始人や未開の部族を思わせる腰巻と棍棒程度で、その小さな身長を加味しても脅威度は比較的低い。
先ずは不意を突いて一体を確実に倒す必要がある。
「竜神の剣を喰
おおきく振りかぶった
ゴチュッ!
硬い何かを砕く音と、たっぷりの水を含んだナニカが爆ぜるような音を立て、一匹目のゴブリンは膝から崩れるように地に伏せる。
流れるような動きで、醜い顔を怒りに歪め襲い掛かるゴブリンに向けて棍棒を「V」字に切り返し殴打する。
「オラぁっ!」
「――――ゴっ、ブぅぅぅ!!」
残念。まだ握ったばかりの
その間に
そのままの勢いで、ぽよんぽよんと跳ねる水色のスライムにも容赦はしない。
ゴン!
ぷぎゅーと音を立てて倒されるスライム。
ぽよんぽよんと跳ねる毬のようなモンスターとは言え貴重な
経験値を逃す訳には行かない。
「はぁ疲れた。魔石取らないと……」
ゴブリンとスライムの魔石を取り出し袋に仕舞う。
(あ、コメント見ないと……)
コメント
・M字ハゲの宇宙王子『乙です。怖がらせたら申し訳ないんですけど……何か聞こえませんか?』
「何か音します?」
言われたので耳をすます。
音が響いて正確な判断が降せないが確かに多数のナニカが移動するような音が聞こえた。
「確かに地響きみたいな音が聞こえますね……」
コメント
・M字ハゲの宇宙王子『あースタンピードかもしれないですね。ご愁傷様です』
スタンピードとはモンスターの異常発生を指す言葉で、魔物の雪崩とも言われる。一対一は例え弱くても圧倒的な数の暴力で探索者を轢き殺すダンジョン災害の事だ。
コメント
・M字ハゲの宇宙王子『人が轢き殺されて肉塊になるの見たくないんで落ちます』
「――――ちょッ!」
唯一の視聴者を必死に引き留めるが無残にも、同時接続数1から0へと逆戻り……
「こんなのってないじゃん……」
絶望のあまりゴブリンの死体の傍に膝から崩れ落ちる。
ゴブリンの血が探索者用の装備に付くが、今はそんな事を気にしている余裕はない。
「逃げないと! 早くここから逃げないと!!」
その言葉は自分に言い聞かせ、行動に移すための色んな感情が混ざった悲痛な叫びだった。
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