第141話大会決勝戦3
「魔力防壁で、パチンコ玉での攻撃の《魔法》による上乗せ分を軽減したのか……」
「その通り!」
振り被ったサーベルから放たれた斬撃は、軌跡としてしか認識できない程、素早い。
一撃で首刎ねる処刑人の如く迷いない、それは見事な袈裟斬りだった。
『ステータス』や《魔力》により補助・強化された身体から放たれた斬撃、真面に食らえば新調した探索者スーツすら切り裂き、真っ二つにされてしまう程の威力であることは、容易に想像できた。
「『
呪文詠唱と共に、
酒の霧は相手が纏う『魔力』を霧散させ、視認を阻害する煙幕にもなる。
そして吸い込めば弱体化させることもできる。
「『
《魔法》【
光輝く見慣れたエフェクトが剣に纏う、小さな光の明滅すら頼もしい。
どういう理屈かは分からないけど、魔力を四肢に留める、覆う、纏わせる? ことができれば身体能力が向上する。
と言う事が分かっている。
だったら俺もやればいいのだ! 無理やりにでも。
「爆ぜろ!」
師匠から習った瞑想をベースに自身が燃え盛る火達磨であるとイメージする。
魔力を体表に留めたり、鎧のように覆ったり、衣服のように纏ったりする必要はない。
ぼうっ! と燃焼音を立てて焔が否、体表の魔力が爆ぜた。
相手のそれをぴっしりと決まったオーダーメイドスーツとするなら、俺のは被っただけのボロ切れ。
その練度の差は誰の目から見ても歴然としたものだった。
ムラだらけの魔力は、増水した河川のような激流であり、まるで太陽表面でうねる
漢字二文字で表現するべきそれは人々、特に探索者の目を釘付けにしていた。
未熟故に、彼を中心として陽光やオーラのように放出される魔力の波は圧倒的。
たったの一回で成功させた高すぎるそのセンスに圧倒されていたのだ。
『
杉多はマイクに乗るか乗らないかの小さな声でぽつりと呟いた。
『杉多さんは存外、詩的な表現をなされるんですね……私は彼に………加藤光太郎という男に英雄としての才覚を感じました。彼は私にとって太陽ですが、彼に近づこうとしてその身を焼かれるモノはおおいでしょう。そして彼も彼自信を焼き殺し破滅する可能性を孕んでいる……この決勝が彼の英雄譚のプロローグであってほしいと
私は願っています……』
兎に角。触手のような不定形で不格好な状態だが、魔力を魔力として外部に放出することが出来た。
うねる魔力を気合と根性で操り、三つ編みにようにして腕を、刀を覆う。
タスマニアキングクラブのような巨大な片腕で魔力に覆われた金色の刀身を持つ刀を力任せに振るう。
「せやぁぁぁぁああああああああああああああああああああああああっ!」
「ぬぅぅおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおっ!」
両者共に言葉にならない。
刹那。
轟音が鳴り響き、衝撃波が周辺に出鱈目にまき散らされる。
「きゃぁぁぁぁぁぁぁぁあああああああああああああ」
観客席から女性や子供の絶叫が微かに聞こえる。
両者の足元の床は砕け脚先は、衝撃で埋まっている。
柄を持った両の手は衝撃でビリビリと痛むが、俺は決して足を浮かすことなく身体を使って全力で押し込んだ。
「はぁぁぁあああああああああああああああああっ――――!」
俺はサーベルの袈裟斬りを打ち上げ、無防備になったところへ止めの一撃を食らわせる。
ただの鋭い袈裟斬り。
息をつかせぬほどの間で返す二刀目が、相手の
よし、手が届く! 攻撃が通った!
「うらぁぁぁぁぁああああああああっ――――!」
命中を確認する事もせず、俺は再び全力で魔力を放出し地面を蹴り、前方へ距離を詰めながら全力で攻撃を叩きこむ。
魔力を込めた事により異常な速度で放たれる連撃を叩き込む。
一見すれば、
素手や足による
一つでも判断を間違えてしまえばそのまま詰め切られる、まさに手に汗握る攻防。
相手も自分も攻撃のキレと表情、表出している魔力量からもう長くないことが感じ取れる。
この勝負はどちらが先にミスをしてその瞬間に自身が持つ最良の技を当てるのか? という……例えるのなら格ゲーで互いに必殺技ゲージが溜まっていて、オマケに強攻撃2,3発で勝敗が決まる体力状態で、防御と弱攻撃で互いにミスを誘っているといった方がいいだろう。
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【あとがき】
現実逃避で今日書き始めた第一章のスタンピード付近から始める。(というか描写をわざと被せた)現代ダンジョンモノ6000文字も一日で書けてしまった……もし連載ボツになったらEXシリーズとしてこの作品内に投稿します
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