第142話大会決勝戦4
大技を狙えばモーション中にコンボを決められKOされるし、最速コンボを決めようにも隙がない。
そのうえ魔力減少という時間制限付きだ。
そんな我慢比べに耐えかねたのは相手の方だった。
大振りな攻撃をヒラリと躱すと、
反射的に相手が刃を寝かせた防御の姿勢に入ったことで、この攻撃は決まることが確定した。
簡単に言えば体重を乗せた
攻撃の威力とは、『重さ』と『速度』に比例する。
だから多くの格闘技では腰を捻ったりすることで距離を稼いだり、速度を付けるなど工夫をして、拳や足にできるだけ体重を乗せるようにする。どの技でもそれは変わらない。
ダンジョンで成功した変異種オーク戦のパンチを、相手の意表を突くために
変異種オーク戦とは異なり、ある程度速度が乗った状態で『
ドン! という鈍い衝撃音を立てて相手選手は跳ね飛ばされる。綺麗な放物線を描いて跳ね飛ばされるさまは、人気漫画のPVのようだ。
地面を数度バウンドする中で相手選手は光に包まれる。
『な、何ということでしょう! 大会運営の
『……とういう訳でグラディエーター~アマチュア学生探索者最強決定戦202✖夏の優勝は、『
羽鳥アナウンサーの言葉で、ほぼ全員の観客とスタッフが拍手をする。何百、何千という人間が一斉に拍手をするものだから紛争地帯のように
『……では優勝者への10分後にインタビューになりますので選手は準備をお願いします』
羽鳥アナではなく、女性アナウンサーが拍手の中会場内にアナウンスを響かせる。
格闘技の大会のような感じなのだろうか?
――――とインタビューに思いを馳せていると希少な回復魔法の使い手である救護の女性が怒声を上げる。
「加藤! またあの《魔法》を使いやがったわね!」
担架に乗せられた藤原選手は、男性スタッフによって運ばれていく……
「すいません」
「決定打足りえる《魔法》がアレしかないもので……」
嘘は付いていない。
人に対して有効な攻撃性能を持った《魔法》は【
「はぁ……回復魔法の専門家としては安易に呪いは使ってほしくはないけど仕方ない……と言えなくもないわね……まぁいいわ解呪は任せるわよ」
「……分かりました」
10分のインターバルは解呪で消え失せるのだと諦めが付いた。
………
……
…
記者会見などでよく見るスポンサーロゴの背景の前に、一脚のパイプ椅子が置かれている。
椅子の前には折り畳み式の長机が置いてあり、ラベルが剝がされストローが刺さった水と何個ものマイクスタンドが置かれている。
眼前には何人もの老若男女がカメラやマイクを持って、今か今かとその時を待ち構えている。
何かしらの日本大会で優勝したのか? と考えるが規模は小さいモノのこの大会は野球で言えば甲子園だったと思い出す。
インタビューとか一銭の得にもならないし、疲れたから今日は早くホテルに戻って寝たいんだけど……
そんなことを考えていても、世間は許してく
『えーっ、ではですね。グラディエーター~アマチュア学生探索者最強決定戦202✖夏大会を優勝しました、加藤選手です。
お疲れ様でしたー』
「お疲れさまでした」
座ったまま腰を折って一礼をすると、それに合わせて何機もカメラがフラッシュを焚く。
『大会の試合が終わりまして、まぁ色々と聞きたいことがあるんですけど、まぁリアルなあの……第一声をお願いします』
メディア受けしそうな“謙虚”で“控え目”なキャラクターを演出するために言葉を選びながら紡いでいく……
「当初の目標通り無事優勝出来て良かったです。
決勝を含め対戦した皆さんどなたもですが、探索者歴も長くて勝てるかどうか不安だったんですけど、リングに上がって戦う以上は勝つ気で……胸を借りるつもりで挑戦させていただきました」
『はい、ありがとうございます。途中、同級生と戦うシーンもありましたがその時の心境をお聞かせ願えますか?』
「いつもは同じ教室にいるクラスメイトですが、場所が変われば関係も変わります。『優勝』という二文字の前には
おっと思わず本音が出てしまった。
利根川は妹に対する暴言を吐いた上、先月末の無駄な挑発で頭に来ていたから、思わず必要以上に痛めつけてしまった。
『“謙虚”で“控え目”で妹の為に頑張る好青年』というメディア受けする
『学校が一緒というと
「そういうのはないですね(笑) 基本的にソロの期間の方が長かったですし……今は他校の方とパーティーを組ませてもらってます」
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