第145話JSUSA本部2
「我々の世界は、この世界とは異なる発展を遂げていた……それは君達が《魔法》と呼ぶ術を用いた魔学文明と呼ぶべきものだった。
我々は【ダエヴァ】と言う集団でね、君達の言葉で言う民族や国家の単位だと思ってくれればいい。
【アフラ】と言う奴らと敵対して、この世界に亡命してきたんだ」
「――――ッ!」
「驚いただろう? だがコレが事実だ。
我々……現在エルフと名乗っている集団は英知に優れていてね、実はこの世界の産業を共に発展させてきた。
君は疑問に思わなかったか?
無論、他の亡命者達も皆優れたモノが多いがな」
「ではダンジョンもあなた達の技術を用いた、何かしらの施設なのですか?」
俺はダンジョンが出来たころから考えていた仮説を口にする。
「答えはyesでもありNOでもある。
正確に言えば我々エルフ族の知識とドワーフの技術を用いた時空間を穿つ出城、と言うか要塞だな。
……恐らく我々を追ってきた【アフラ】の仕業だ。
我々はダンジョン本体を【
俺は空母のようなモノと理解して話を進める事にした。
「じゃぁその【アフラ】とか言う奴らは、異世界からの亡命者達を狙ってこの世界を攻めに来ているって事ですか?」
「答えは半分正解だ。
我々が持ち出した至宝や、秘伝の英知を欲している部分は大いにあるだろう。
だが、奴らが本当に欲しいのは《魔力》だ」
「《魔力》ですか……どうしてまた《魔学文明》と言うぐらいなんですから、向こうの世界にもタップリあるんでしょう?」
「雑に説明すれば、魔力とは石油や電気のようなもので、魔学文明社会には必要不可欠なエネルギーなのだよ。
君は”石油があと何年後に枯渇する”と言う話を聞いたことは無いかい?」
確か学校の教科書か何かで見た事がある。
「まぁそんな話題が出る度に、新たな油田や採掘方法が見つかり、オマケにまだ枯渇はしていない、が……」
「《魔力》は違うと?」
「その通り我々は、奴らの狙いがこの世界の《魔力》だと考えている」
「だったら《魔力》をあげちゃだめなんですか?」
俺は当然の疑問を口にする。
事実、ダンジョンが出来るまで人間は魔法技術を必要としていなかったのだから、欲しがる相手に差し出すなり、売りつけるのなら問題はないだろうと考える。
「相手が欲しがっているモノをタダで差し出すと言うのか?
この国の七十年続く平和教育もここまで行くと、愚かとしか言いようがないが……まぁ当然の疑問と言えないくも無いか……」
ナダルは喋りながら考えがまとまったようだ。
「よろしい、説明しよう。魔力とは、分かりやすく言えば全てに変化する万能物質だ。この世界で言えば核物質やレアアース、石油、金属資源を一つにまとめたようなものだと考えてくれたまへ。
戦争をしたくないから相手が欲しがるものを差し出す事を選ぶのは、愚かとしか言いようがない、責めて売りたまへ。
まぁ現状世界各国は、魔力を電力に変換したようだがね……」
聞いたことがある。
「じゃぁどうやって、侵略されている現状を解決しようって言うんですか?」
「簡単だよ。交渉のテーブルに付かせればいいんだ。
その手段は幾つもある。例えば現状の防衛戦争を続け相手が音を上げるまで待つ【籠城戦】、反転攻勢を仕掛け相手の喉元に刃を付きつけてから講和をすると言うモノなどがあげられるだろう」
「じゃぁどうすればいいんですか?」
「簡単な事だ。今まで通りダンジョンを攻略すればいい。
数の少ない【
本体を特定し、現状派遣されている方面軍は撃破すれば、一時の安息を手に入れられるだろう」
「完全に解決するためには?」
「我々が来た世界に乗り込んで、喉元に刃を付きつければいいのだ」
「喉元に刃ですか?」
「ああ、現状やつらは我々の事を危険視していない。
攻撃が手薄な今の状態で、地力を付け奴らに『我々と戦えばただでは済まない』と認識させてやればいいんだ」
「抑止論ってやつですね」
「その通り。核抑止論が一番有名だ。『核兵器を保有し対立する二国間関係において、互いに核兵器の使用が躊躇される状況を作り出し、結果として重大な核戦争と核戦争につながる全面戦争が回避される』と言うものだ。
日本が平和なのもアメリカの『核の傘』の下にいるからだ。この考え方自体は核兵器の登場以前からあって、『軍事同盟』や『王侯貴族の婚姻』なんかが良い例だろう」
そう。『軍事同盟』や『王侯貴族の婚姻』の婚姻で局地的な争いが大規模な戦争に広がった例は枚挙に暇がない。
だが抑止論は、正確な判断が行えない指導者の元では正常に機能しない事も、強力な抑止力を持たなければ大国に攻められるという二つの事実が近年起こった事も記憶に新しい。
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