第96話休息

 ダンジョンの出入り口に辿り着いた。


「今日もお疲れ様です」


「コータローくんこそお疲れ様。話には聞いていたけどパーティー組めて良かったわね。お姉さん安心しちゃった」



パンツスタイルの職員のお姉さんが、今日もきやすめに話しかけてくれた。姿勢が美しく二度見する程なので、学生時代はさぞかし同性にもてたことだろう。  



「何とかパーティーを組んで頂いているので、無神経な事をしでかさないか不安で……」


「まぁ多分大丈夫よ……強く生きなさい」


 そう言った職員さんの瞳は無心であり、諦めているようでもあった。

一体全体彼女には何があったのだろうか?


 整理券を受け取ると、直ぐにランプが点灯し機械音声で自分の番号が呼ばれる。



「お待たせ致しました。拾得物をこちらにお願いします」



 受付の人がそう言うと、カウンターの下の部分が空き荷物が吸い込まれていく。



「ライセンスと振込先の銀行カードをお願いします」



 俺はカードを提出する。



「確認いたします」


「今日は凄い数の武器ですね……今日も左に行ったんですね……」



 一昨日あれだけ忠告したのに……と言いたげなジト目をしながらカウンターのお姉さんは、呆れたような口調でそう言った。



「ええ、まぁ稼げますから……」


「お金が必要なのはわかりますけど命あっての物種です。十分に休息と安全マージンを取って下さいね? パーティーを組んでに付いては改善されたようで何よりです。それがよりによってバーサーカーちゃんとは(ボソ)」


「あははは……一つづつ改善していきますよ。」


JSUSAジェイスーサでは、パーティー募集のサービスも行っていますので宜しければご利用ください。

それと前回も前々回も申し上げた通り、申し訳ありませんが、マジックアイテムやそれに類似する品の買取査定には、確認作業に少々時間がかかります。今この場で査定額を算出する事が出来ないので、お預かりしさせて頂き、後日査定額を通知するという流れに、なりますがご了承ください」


「分かりました」


「魔石が208個になりますので暫定で……258,650円になります。買い取り金額は折半でよろしかったでしょうか? 武器や肉は未査定ですので、1,2週間で査定が完了しますのでその時にお支払いいたします」


「「はい」大丈夫です」


「お預かり証明書にサインお願いします」



 証書に二人でサインをする。



「こちらがお控えとなっています。なくさないようにお願いします。本日は御利用ありがとうございました」


「「ありがとうございます」した」



 今日は滅茶苦茶疲れたし腹も減ったさっさと腹に何か入れて寝たい。今日はどこへ行こうか……

 


………

……



 久しぶりに一人で馴染みの牛丼チェーン店に入る事にした。

 

ずっと中原さんと一緒にいたため、一人になりたかったんだ。

ボッチ気質が抜けないヘタレな俺………



牛丼チェーン店と言いつつも、昨今の牛丼チェーンは牛丼以外にも力を入れている所が多い。 

 その中でも俺が一番お気に入りなのは梅屋だ。

この店は定食や丼モノを頼めば必ず味噌汁が出て来る。素晴らしいシステムだといつも感謝している。

一部地域北海道で一時期、味噌汁の提供を休止した事が話題になった事があった。全国に普及するかも?とかなりドキドキした覚えがある。



 今回俺が注文するのは、ブラウンシチューエッグハンバーグ定食だ。

券売機で商品を選んで食券を購入し、セルフサービスのお冷を準備して、一人用のテーブル席に腰かける。


 冷たいお冷を口に含むと体に沁み込んでいくのが分かる。


 電子合成音声で俺の食券の番号が読み上げられる。



「お待たせしました。222番で御待ちのお客様、コチラ商品で御座います」


「ありがとうございます」



――――と短い言葉で、店員さんにお礼をいい席に戻る。



「頂きます」



 手を合わせて箸を握り、胡麻ドレッシングを回しかけて瑞々しいサラダをかき込む様に頬張る。

 胡麻の油分と香りがサラダを美味しく食べさせてくれる。


 少しパサパサとした俵型のハンバーグだが、ブラウンシチューソースの油分と深みのある味がパサパサ感を補ってくれている。



「美味い……」



 半熟の目玉焼きも白身の部分は、ブラウンシチューソースを白い陶器の器からソースをこそぎ落すのに丁度良く。甘味のあるソースが白身に良く合う。

 卵黄をソースに混ぜて、コクをアップさせるのもよいなと考えて今回はそちらを選択する。

 熱によって程よく卵黄が固まり、ねっとりと粘度の高いソースに仕上がる。先ほどのソース単体の時よりもより、少しパサパサしたハンバーグに良く合う。

 ハンバーグだけで丼一杯。目玉焼きとソースの残りで丼一杯を食べれる程満足させてくれる。


 腹が一杯になった事で今日の疲れがどっと溢れてくる。

 


「眠くなる前に早く帰ろう……」



 お盆を返却口に戻す。「ありがとうございました」に「ごちそうさまです」と、返事を返して店を出る。

 生温く、汗が滲むような気温に癖壁としながら、GASGASパンペーラにまたがりエンジンをかける。

 ブルブルとエンジンの始動音が鳴り響き、ガス管から排ガスが漏れ出る。

 ライトを点灯し、夜風に吹かれながら俺は豊川に帰った。


明後日には妹に伝えよう

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る