第97話SIDE:利根川5
俺はあれから一日半、新しく習得した新《魔法》【
先ずこの魔法は単一の魔法として考えると物凄く弱い。
モンスターにも人間にも知覚できない(見せようと思えば見せられる)肘より先の片腕を出現させ、意のままに操るというものだった。
射程は凡そ2
俺はこう考えた。【姿なき魔精霊の魔手】と言うくらいなのだからもう片方の腕、あるいは多腕型であればそれも熟練次第では出せるようになるのかもしれない。
ゆくゆくは、詠唱文にある【漆黒の巨人】とやらを召喚する《魔法》になるかもしれないと、そう考えれば俄然やる気が出てきた。
しかし、ある問題があった。
盾を買おうにもD級だと金が足りない。
ならば手数を増やすために武器を買おうと考えたが、片手で使える武器はそこまで多くない。結局盾と同じく金が足りない事に行き着くのだ。
「荷物持ちが楽になったとでも思っておこう」
今日混ざる事になっているパーティーは、全てに持ちとして付いていく契約だ。
丁度いい機会だ剣を研ぎに出そう。
俺は剣を買った武器やに向かった。
「いらっしゃいませ」
店員の挨拶が聞こえる。
俺はカウンターにバッグに入った状態の剣を持っていくと机の上に置いてこういった。
「剣のメンテナンスをお願いしたいんですけど……」
「はい。分かりました。では、一度確認させていただきますので少々お時間いただきますが宜しいでしょうか?」
「大丈夫です。研ぎってやっぱりプロに任せた方がいいんですよね?」
「ええ、もちろん。掛けてお待ちください」
「ええ、基本的には刀剣のメンテナンスは研ぎが基本です。研ぐということは刀身が痩せるので、研ぐ回数は少なければ少ない方が良いとされています。
プロである我々は、お客様自身がご自分で研がれるよりも削る量が少ないので、多少お金はかかりますが長く持ちます。宜しければこちらをご覧ください」
――――とセールストークを混ぜながら虫眼鏡やら道具を机の上に載せていく……渡された紙にはこう書いてあった。
―――――――――――――――――――――――――――――
研ぎ料3万円(60~70㎝歴史的価値の無い現代刀剣のみ)
研ぎ料2万円(30~60㎝歴史的価値の無い現代刀剣のみ)
研ぎ料1万円(30㎝以下歴史的価値の無い現代刀剣のみ)
錆びや刃毀れでの整形研1万円~
※両刃、小烏丸造りなど特殊な場合は料金を1.5倍~頂きます。
―――――――――――――――――――――――――――――
そういうとバッグから剣を取り出して、鞘から払う。
剣を一目見て店員さんは眉を
何かあったのか? と不安に思って店員に訪ねてみると……
「お客様。剣事態を研ぎ直すこと自体は出来ますが、軸が曲がりかけています」
「何でッ!」
俺は声を荒げる。
「失礼を承知でもう上げますが、刃物は刃を立てて斬りつけるものです。それは両刃直剣も例外ではありません。確かにブロードソードやロングソードなどの剣術の中には、“叩く”ような使い方をする場合もございますが、推奨されたモノではございません」
「研いで刃を整える事は出来ますが、軸の曲がりはどうにも出来ませんので寿命が近い事をご理解下さい」
「……」
俺はあまりの出来事に言葉が出なかった。
「研いで頂く事で剣本来の切断力は戻りますがかなり痩せてしまうでしょう。買い替えを検討される事をお勧めします。剣の振り方にご不安があるようでしたら“メイス”に切り替える事をオススメいたします。宜しければお見積り書を御作り致しますのでお持ち帰りください。それで本日研ぎの方はどうされますか?」
「……お願いします」
俺はそう言って4万円を支払うと終わり次第、スマホに連絡するように言って店を出た。
渡された見積書を見て愕然とした。
「デュノア社製両刃直剣『ラファール』値段120万円か……」
近所の店に何件か入ったが新品の最安がクーポン込みで117万。中古のボロボロの奴が最安で50万、平均100万ちょい。
中古でも剣の新品値段と同程度か、それ以上で笑いが出てきそうになる。
「結局金か……防具買う前に太刀筋を整えて武器を買おう。その為には金策あるのみだな……」
俺は荷物持ちとして参加した。フリーターのパーティーで、新《魔法》【
「トネガワー、早く回収しろよ!」
パーティーリーダーの怒声が聞こえる。
(フリーターの癖に偉そうに……)
俺は内心で悪態を付くと、「はい。今すぐ」と返事をしてモンスターからアイテム換金可能なアイテムを剥ぎ取る。
パーティーから見えないように、【第三の腕】を用いて剥ぎ取りの効率を上げていく……
何時もなら10分かかる解体が6分で片付いた。
俺は基本報酬(荷物持ち代)+解体の出来高報酬で契約しているため解体の頭数が増えれば増えるだけ金になる。
防具に着けている解体用のナイフや
俺は新しい金策の手段を手に入れた。
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