第111話お見舞いに行こう……2



「応! 前回の一個500円程度の高級プリンとはわけが違う……一本でゲーム機ぐらいのマジモンの回復薬ポーションだ」



 俺は妹の為にキープしておいた回復薬ポーションの瓶を病院の机の上に置いた。



「ホントに持って来たんだ……キモッ」


「キモッって……頑張って取ってきたお兄ちゃんに対しての扱い酷くないか?」



 普段は頑なにお兄ちゃんと呼ばないのに、感情が高ぶったのか珍しくお兄ちゃんと呼んだ。



「いや、いくらお兄ちゃんとはいえ、同級生紹介する約束してから、一カ月以内に持ってこられるとガチ感を感じるんだよ? 身内が手を出すタイプのロリコンって心にクルものがあるわ……」



 と酷い言われようだ。



「まぁおっぱい登山家である俺に、桃華の友達の女子中学生を紹介されたところで、胸が育っているは居ないと思うからいいんだけどな……」



 ロリコンと違い俺にとっては、同年代から年上の方が魅力的に映る。

 なぜなら、おっぱいが大きい可能性が高いからだ。

 胸の大小に貴賤は無いが、『大は小を兼ねる』と言うだろ?



「でも友達にEならいるよ?」


「マジかよ?」



 最近の女子中学生は色々と育ってるな。

 小学生は最高だぜ。と言った男がいたり、その作品を好きで、マネージメントに活かしたという旨の発言をしたホストは、数人の客と連絡が取れなくなったといっていた。

 やはり女児には無限の可能性があるのかもしれない。



「でもアニメと違って現実のEってそんなに大きくないよ? コータローのイメージしてるEって現実のG、Hだから……」


「なん……だと……」


「おっぱい聖人でも年上と付き合いたいって娘がいたら紹介してあげるよ。精神年齢とか考えると、男子の方が年上の方が良いって娘多いしね。選定基準のおっぱいが選考枠を狭めてるけど……」


「べ、別に俺はおっぱいだけで彼女を選ぶような事はしないぞ?」


「そうだよね。あえて言えば大きいのが好きなだけで、黒髪ロングの大和撫子かオタクに優しいギャルが好きなんだもんね。この受け身野郎は……」


「ぐっ……」



 反論ができない。

 俺が好きになるキャラの殆どは、グイグイと引っ張ってくれるタイプのキャラだ。



「体験版とかゲームのデータを見るだけでも、そういう女の子のレベルとかやり込み具合半端ないもん、まるわかりだよ……」



 身内それも妹に性癖バレとか辛すぎるだろ……



「特にお気に入りの声優さんのキャラがいると使い込みが凄いよね……」


「こ、ころして……お願い、ころして……」



 俺は頭を抱えながら個室で暴れる。



「まぁまぁ、コータローの趣味なんて直接的な犯罪でもなければなんでもいいよ……ってアレ? お腹回り痩せたじゃない? ちょっと触らせてよ!」



 ペタペタと白い手で俺の腹を触る。



「あのぷにょぷにょがたった数週間でここまで痩せるの? もしかしてご飯食べないとか?」


「安心しろ、ほぼ毎日外食してる……多分ダンジョンに潜っているからと剣の素振りとかランニングとかしてるからだと思うぞ、レベルが上がったから魂の格に合わせて痩せました。とかそういう楽な事はないよ……」


「ぶーぶー、一人だけ美味しいものばっかり食べてずるい。妹は楽して痩せたいです」



 食事制限がほとんどないとはいえ、臓器に魔石ができれば切除するまでは体への負担が低いものを食べざる負えないのだ。



「そりゃだれでもそうだよ。じゃぁ俺が、お前を動けるようにしてやるよ」



 俺は今日、女の子を紹介して貰うために此処に来たわけではない。誓いを立てるためにこの場に来たのだ。

  


「それって上級状態異常回復薬ハイキュアポーションを手に入れる算段が付いたって……コト?」


「ああ、『グラディエーター~アマチュア学生探索者最強決定戦202✖夏~』っていう特番なんだけど、俺それに出る事にしたんだ。数千万~億の値が付く薬をポンと買ったり手に入れるほどの腕はないけどさ……一度だけそれも死ぬ危険さえなく手に入れる機会があるんだ……」



 俺は知っている。妹の病気魔力結晶化による魔力欠乏症 M D M C (Mana Deficiency due to Magic Crystallization)の進行が予想以上に早く、ステージ5一歩手前と言われており、既に結晶化した魔力によって体組織は傷付けられていて医者曰く、その痛みは既に鎮痛剤で抑えられるギリギリらしい。


 俺は桃華の手をギュっと握り締める。



「でも……」


「絶対に取って来てやんよ」


「私が死ぬのは仕方がないけど! お兄ちゃんまで死んだらパパもママもお爺ちゃんもお祖母ちゃんも悲しむよ!」



 普段は頑なにお兄ちゃんと呼ばないのに、感情が高ぶったのか珍しくお兄ちゃんと呼んだ。



「妹の一人も助けられなくて何がお兄ちゃんだ!」



 俺は声を張り上げる。



「俺は妹の為なら命だって賭けられる。だから俺が勝つところを見ててくれ!」



 俺がそういうと妹は涙をボロボロと流しながらこう答えた。



「流石コータローシスコンだね」


「ああ、長子ってのは下の子のためには体を張れるモノさだからさもう少しだけ待っていてくれよ。兄ちゃんが必ず取ってくるから」


「うん」



 8月9日俺は覚悟を決め、豊橋駅から東京行きの新幹線に乗った。 

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