第69話探索者はお金がかかる7
「そう言えば防具も壊れたって言ってたよね?」、と突然思い出した立花さんに連れられる事数時間、今度は都内にある武具店に連れてこられていた。
店構えは立派なモノだが、自動ドア越し僅かに見える店主の顔を見ると本能が入店を拒否していた。
「本当にここにはるんですか?」
「そうよ。
ズカズカとブーツで歩いて行くと、砂が噛んでいるのか油不足なのかガタガタと鳴る引き戸を引いて店の中に入る。
自動ドアかと思ったら今時引き戸の入り口だった。
経営状態が悪いのだろうか? と邪推するが流石に初めて行くお店に失礼かと、
「いらっしゃい……ってンだぁ
店主の男性の声だけが聞こえるが、どうにもクセの強い人物らしい。
「ヒドイなぁ店長……顔面キョーキ、ヤクザ顔! 反社!」
「ひでェのはどっちだよ! 人が気にしてる事をぉぉおお」
レジと思われる台から立ち上がったのは、ゴリゴリの黒人系の男性だった。
「は、ハロー」
俺の思考回路は限界を迎え最初に出た第一声は、まさかのカタカナ英語だった。
「HAHAHAHAHAHAHAHHA! 久しぶりに面白れェ奴見たわ」
黒人の店長はゲラゲラと腹を抱えて笑っている。
それを見て立花さんも「でしょでしょ。アタシの弟子なんだ」と言いながら同じように涙を浮かべる程笑っている。
「いやァ、いきなり笑ってすまねェ俺は、サミュエル・フセイン・スミスこの防具屋の店主兼職人をしている。気軽にサムと呼んでくれ」
「俺……私は加藤光太郎と言います。高校一年で探索者をしていまして……立花さんに戦い方を教えて貰っています」
「学生なんだから、堅苦しい言葉遣いをする必要はないさ、母国ステイツでは英語をロクに話せない奴だっているんだ。言葉遣いが多少ヘンだから何だって言うんだ。大事なのは相手への敬意と、伝わるかどうか……ようはハートだハート! それにしても、ハイスクールの1年にコイツが目を掛けるとは珍しい……」
「まぁね。見込みがあるのよ」
「戦闘狂のお前が『見込みがある』と言うんだ相当伸びるんだろうな」
「私の目に狂いはないわ……」
「俺の好きなMANGAに出て来る奇術師見てェな奴だな」
「語尾に♡や♦を多用すればいい♡」
「やめろやめろ、少し前にでたカプセルモンスターのライバルが奇術師っぽいって言うネット文化と被るからやめろ」
どうやら日本贔屓な人のようだ。
「話が快速特急でどこかにいってしまったな……で用件はなんだ?」
サミュエルは本題を切り出した。
「実は、先日イレギュラーと戦った時に防具を破損してしまって、刀を新調するために半日ぐらい離れた場所に連れていかれてから、立花さんにオススメはありますか? って聞いたらココに連れてこられたんです。新幹線と電車で半日かけて……」
「
マジかよ……とでも言いたげなサミュエルさんの表情を見れば、何ていいたいかは何となく想像がついた。
「流石に酷いぞそれは……」
「だって……ここならアタシのお古を調整してくれるでしょ?」
「確かに本人を連れて来て採寸しないと出来ない部分があるけどォ」
サミュエルは、スキンヘッドをポリポリと掻くと溜め息を付いた。
「全くこのバカが迷惑をかけてすまんな、工賃だけでサイズ調整してやるよ。コータローはタッパが高いって訳でもないから延長が短くて済む。まぁこのバカも背が高い方だしな……バカの昔使って奴なら倉庫にあるハズだから作ってやるよ」
「店長ありがとー」
「まぁ材料費と工賃で20万て所だな……本来なら100万円代の装備なんだありがたく使えよ?」
……大会の賞金を視野に入れてようやく100万代の防具に手が届くか? と言う所だったのでコストが下がったのは正直ありがたい。
「はい。自分にはやらなきゃいけない事があるので……」
「やらなきゃいけない事?」
サミュエルさんは、聞き返して来た。
「妹が病気なんです……」
「……」
「……
「そうか、お前は
サミュエルさんは涙と嗚咽交じりの声で立花さんを恫喝? する。
「そりゃだせるけど……」
立花さんはあからさまにドン引きと言った様子で答えた。
「出せや!」
「さっき60万出したばっかりなんだけど!?」
「知るか! ガキが男見せようとしてるんだ師匠なら出してやれよ!」
「店長も存外、乱暴だよね」
「店長さん俺だしますから……」
言い争う二人の間に割って入る。
「貸しといてあげるから店長ちゃんと作っておいてよね!?」
「当たり前だろ? 俺は漢の味方だぜ。住所おしえてくれ郵送するから、調整が必要なら郵送か店に来てくれ3番目に優先するし値引いてやる」
こうして俺達は、「今日はもう疲れたから一泊していこうよ」と言う立花さんの鶴の一声でホテルに宿泊し、翌日新幹線で豊橋に戻った。
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