第121話大会四回戦3
相手は右手だけで剣を持ち大振りに構える。
(防御を捨ているのか……いや、盾で半身を防ぐ考え方だな……気にしていても仕方がない。先ずは相手の攻撃を往なし、捌きつつ様子を見るか……)
体重の乗った大振りの袈裟斬りが放たれる。
ビュン! と風切り音を立て振りぬかれた斬撃を、筋肉の動きで軌跡を予測して攻撃を避ける。
「――――危ね!」
ひらりと身を翻し華麗に除けたハズだった……。
刹那。
次の瞬間鈍い衝撃が走り、俺の体が車にでも轢かれたみたいに後方へ数メートル吹き飛ぶ。
が、鞘から払っている野太刀を軸にして、両の爪先に《スキル》【
俺は何が起きたのかを考えるよりも先に、そのままの勢いで片手で側転をしながら距離を取り、後方へ移動しながら態勢を立て直す事にした。
勢いが弱まり、腰を低く落とし野太刀を中段に構えた所で何が起きたのか? と思考を巡らせる。
通常右手で袈裟斬りを行う場合、右上から左下に斬り下ろす斬撃になるハズなのだが、コイツの攻撃は変則的だった。
右手で剣を持っているのに手首をスナップさせ、左上から右下に斬り下ろすと言う今まで経験してきた常識を破壊する攻撃だったのだ。
新見選手が行ったのは、何かしらの《魔法》か《スキル》で加速or透明化などした事で不意を突いた攻撃だ。
その加速力と新見選手自身の体を砲弾として使った「
新見選手の攻撃で自身が、全く傷ついていないのは、選手の『耐久』によるものなのかはたまた先ほど熱風を放出したあの付与《魔法》【
まぁどちらにせよ、今の一連のやり取りで奴がどういう戦い方をする探索者なのかは、大体理解できた。
付与《魔法》【
実に堅実で俺好みの戦い方だ。
RPGならば、理想の回避盾と言っていい。
「良いタックルでした。しかし、通用するのは一度目だけです。
二度目は通用しませんよ?」
野太刀を中段から上段に構え、戦う意思がある事を明確にの示し挑発する。
「全くとんでもない
「先輩は脚が随分とお早いようですが、盾を持っているのは攻撃を食らえば、致命傷足りえるような『ステータス』なのか精神性なのかは分かりませんが、恐れている事だけは確かですね」
「……」
「先ほど追撃をしてこない時点で、あの加速には何か明確なデメリットあるいはリスクがあるんじゃないか? と疑ってしまいます」
最初は相手に試合の
今回も相手を俺の術中にハメることが出来た……この勝負貰った!!
刹那。
新見選手の
まさか! 術中にハメたと思った俺がハメられていたのか! そうか! ヤツの加速のデメリットは
重心の移動を感じ俺は体をこわばらせる。
来る!
「ここで切り札を切るのは不本意だが仕方がない! 『
呪文を詠唱し、探索者スーツの上から着込んでいるYAMADA社製アーマーベスト(改造)、アーマーレギンス(改造)、アーマーガントレット(改造)、アーマーシューズ(改造)にたった一回の詠唱で魔法を付与する。
それは各部位にダンジョン産の合金を用いた追加装甲と、それられを結び付ける改造機構を取り入れた事で実現した。
一度の詠唱で全身に【
灰黒色の探索者スーツの上から着込んだ鎧の金属部分が稲妻のような黄金色に発光し、周囲に小さな光の粒が明滅している。
『――――ッ!?』
『か、加藤選手 本大会で初めて《魔法》を使ったぁぁぁああ! やはり、やはり探索者歴二年以上の新見選手を相手に《魔法》を温存する事は難しかったようだぁぁぁぁあああああ!』
『何なんだ! あの《魔法》は! 付与魔法? 否、防御系の魔法か? それにしても呪文の詠唱時間が短すぎる……』
『……さて両選手切り札の《魔法》を使っての真っ向勝負! 例えこの試合に勝利をしたとしても、魔力や情報は隠せないぞ!』
平野アナは、押し黙るようにして考え込む解説役に一瞬、唖然とした表情を向けるもののプロ根性で視聴者に
「それが君の《魔法》かい? ピカピカと派手に光るようだけど光るだけなら、蛍やアンコウにだって出来る」
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