第120話大会四回戦2
番組の編集上必要なのか、毎回言われるお題目にちゃんと返答をする。
「「はい」」
約10Ⅿの距離を開け、俺達二人は試合会場の上に立つ。
今回も出来れば、二種類の《魔法》は温存しておきたいところだ。
『試合開始!!』
レフリーの手刀が振り下ろされると同時に、互いに抜剣・抜刀する。
抜きの初速は太刀であるため、相手の得物ブロードソードに比べ数秒遅い。但し、リーチはこちらの方が長く有利と言える。
今回の相手もブロードソードに盾と言うデフォルトスタイル。
挨拶替わり、と言わんばかりにブロードソードを上段に構え走り寄ってくる。
面白い!
俺は獰猛な笑みを浮かべると腰を低く落とし、太刀を正眼に構える。
先手を取られたにも関わらず、俺が獰猛に笑った事に怯んだのか一瞬、引き
度胸もセンスも悪くない……なら技術はどうだ!
袈裟懸けに振りぬかれるブロードソードによる一閃を、ヒラリと身躱すと、そのまま野太刀の柄でがら空きになった肩を殴る。
ドゴっ!! と重い音を立てて肩に命中するが、芯を捉えるまではいかなかったようで、柄頭が命中した頃には既に新見選手の回避は始まっていたようだ。
「――――チッ! 駆逐艦みたいに足が速い!」
俺は短く舌打ちをすると、そのまま野太刀を上段に構え攻勢に出る準備をする。
高機動のインファイターと言った所だろうか?
《魔法》や《スキル》次第では強敵と言って差し支えないだろう……が、それは俺も同じ現時点で俺は《スキル》も《魔法》も使っていない。
完全に俺の間合いから離れながら《魔法》の詠唱を始める。
「『我は名を与えられず。与えられたのは数字だけ、与えられた任務は御旗を守る
このタイミングで発動させる意味があるものはなんだ?
『ステータス』を向上させるバフ系。中原さんの《魔法》【龍神破魔矢】のような中遠距離魔法を放つ事で、目くらまし兼けん制にするつもりか? どちらか分からない時は動かない方が無難だ。
俺は追撃をするべく、《スキル》【
「『――――
詠唱が終わると同時に、赤い閃光が新見選手を包む。
幾栄にも折り重なった筋のような赤い閃光は、まるで外骨格のように探索者スーツの上で光り輝いている。
構うものか!
飛び掛かり様に袈裟斬りをするが……
「フン!」
――――と一声が掛かると、熱風を伴った煙が発生させられる。
俺は直観的に、これを吸い込んでは不味いと判断し、左手を野太刀の柄から離すと口元を覆う。
足首に負担が掛かる事を
『開幕速攻で攻勢に打って出た新見選手は、鋭い袈裟斬りを躱され柄による一撃を肩に浴びたかと思えば、今度は奥の手ともいえる魔法を使用した様子。解説の杉多さんはどう思われますか?』
『使用した魔法は恐らくはバフ系の魔法だと思われます。
私としては、新見選手の速度よりも加藤選手の思い切りのよさを褒めたいですね』
『それはどうしてですか?』
『あのような場面では対人、対ヒト型モンスターとの戦闘経験が少ない場合、武器の柄で殴るという選択を取る探索者は少ないと思います。“刃筋を立てて刃で斬る”と言う身に沁みついた行動を精神で御し、即座に行動に起こせるその柔軟な発想力と経験に私は脱帽します』
『なるほど……私としては、新見選手の魔法も凄いと思います。最後に爆風のようなモノを生み出している事を考えると本当に追い詰められていたのか、汎用性が高い良い魔法なんでしょうね』
……司会のある座席からだと、ただの爆風に見えたのだろうがアレはそんな生優しいモノじゃない。
毒や呪いのようなモノをまき散らす公害のような《魔法》だ。
それも恐らく、俺の《魔法》【
俺の『敏捷』が:C(SS)でそれと同程度かそれ以上で動いていたと思われる。そのため野太刀【
それ以上は熱と毒や呪いに当たってしまっていただろう……
「ヤるね君……僕の付与《魔法》【
そう声高らかに宣言するも、小さな円盾を前に突き出しつつブロードソードを耳程の高さまで振りかぶり、構えている事を考えれば強がっているようにしか見えない。
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