大会編四回戦1-5
第119話大会四回戦1
係りのスタッフさん曰く、一回戦は合計125試合を四会場で行うとの事。軽く計算したが全試合を消化するのに一試合10分として5時間弱。当然そこに昼食や夕食、選手の会場間の移動が加わるので実際はもっと時間がかかる。
だがそれも、東京近辺の試合会場を幾つも抑えているし運営のノウハウがあるので本当の所は分からないが……
実際、今まで三回試合を行ってきたが、他人の試合を見ることも出来ず、いつ呼ばれるのかも分からない状態で待ち続けるのは正直精神を削られる。
前回は馬鹿正直にスーツを着込んでいたが、今回はスーツも防具も脱いだ状態で待機中だ。
幾ら体に負担がかからないように出来ていて、調整をしたとは言え、長時間身に着けていれば疲れもするし痛くもなるからだ。
試合が始まる前(つまりは今)と、スポーツの試合が終わった後にはダンジョンに潜っている時と同じく、“ダウン”のような動きをする事で怪我のリスクが少なくなると言われている。
ダンジョンで得られる
特にスポーツで言う“アップ”は、怪我の予防とともに筋肉を温めておくことで、最初からパフォーマンスが向上する。
もし、対戦相手がアップをしていないだけでアドバンテージが取れると考えれば、やらないよりやっておいた方がいいだろう。
youtubeで見た動きを真似て、“汗が
電子音が鳴る。
モニターに視線を向ける。
『 444 番 の 選手 は A会場 へ 進んでください 』
「ようやく出番か……」
俺はそう呟くと、身支度を始める。
高純度アラミド繊維製の探索者スーツを着込んでいく。
“着込む”と言うが正にその通りで、基本となるスーツの上からカーボンファイバーや樹脂、金属などで強化された籠手や脛当を装着する。
アラミド繊維は、衣料品に使用されている化学繊維に比べ、耐熱性・強度・難燃性・耐薬品性に優れ、軽量で衝撃吸収性にも優れているため、探索者スーツの主材として重宝されている。
カーボンファイバーも高剛性、高強度といった特徴以外に、導電性・耐熱性・低熱膨張率・自己潤滑性・X線透過性と言った性能も高い。
それら基本の部分で補えない部分をモンスターの革や、樹脂、金属で補うという訳だ。
俺の場合奥の手として、【
そのせいで魔法を掛けると金属部分が光輝き、まるで特撮作品に出てきた~
流体光子エネルギーフォトンブラッドの中では、
~ヒーローが想起される。
俺は「急いで下さい!」と急かすスッフさんに「だったら早く連絡しろよ!」と短く答え、溜息を付く。
腰に太刀を
姿見に移ったのを横目で見ると、近未来感のある忍者かサムライか? と言いたくなるような見た目をしている。
俺が控室から出ると、スタッフさんがマスターキーで控室を施錠し、会場へ案内してくれる。
『さぁ、第四回戦も折り返しとなりました。先ずは選手の入場です!』
この会場の司会である。羽鳥アナウンサーに促され、入場ゲート前に待機する。
『先ずは青コーナーの入場です!』
手を振り下ろす合図をスタッフさんが出すと、発泡スチロール製のドアが開き幾つものスポットライトが集中し、プシュプシュと音を立てて、白煙を上げる噴霧機が選手の入場を賑やかす。
それにつられて、センスの良いBGMと客の歓声が会場を覆い尽くした。
『探索者歴は驚異の一カ月未満! だがその実力はホンモノだ! 探索者歴一年半の選手を見事な太刀捌きで下した姿正にジャイアントキリング 高校一年生! 加藤光太郎』
どうやら先程の試合で、俺の人気はそこそこ上がったようだ。
『対する赤コーナーは、今年受験の高校三年生、高校生活最後のこの試合に掛けた思いは人一倍。皆さんもお馴染みの
羽鳥アナウンサーや会場も彼を覚えているほどの人間か……探索者歴も長くて二年半。だがジャニ系の爽やかなルックスのせいかあまり強そうというイメージが付いてこない。
腰に差している得物は60㎝程のブロードソードだ。
細い線と女顔を武器に、明るい茶髪170㎝に届かない身長。
少年趣味の方に受けそうな容姿・容貌をしている。
『ルールは単純明快。相手を倒せば勝利となります。なおダンジョン内では発動できない救命の魔道具を用いているため、死亡するダメージを受けた場合強制的に場外に吹き飛ばされます。
刃物を用いているため、最悪の場合死亡する可能性もありますが、回復魔法を使える探索者と潤沢な回復薬を用意しておりますので、安心して戦ってください。なお不正が発見された場合は即時失格となります。両者よろしいですか?』
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