大会編一回戦1-5
第114話大会一回戦1
最低60万の装備(国などの補助金が入ってこの値段なので、本来はもう少し高い)を揃えられる学生は少ない。
この大会の参加者は大学生と高校生を合わせても750名程度しかおらず。その内高校生は250名とその数の少なさを暗に物語っている。
約8回戦を行えば優勝出来ると思えば存外に早い。
先ずはTV放映すらされないと思われる。予選を勝ち抜かなくては何も始まらない。
控え室にはジーと唸るような音がする自動販売機と、プラスチックと鉄でできたベンチが一基、それに出番を知らせるモニターが一台と武器をしまうメタルロッカー、シャワーにトイレと言った簡素だが十分な控え室で、出番に備えて装備を付けていく……
アラミド繊維を基本とし、要所要所にカーボンファイバーを用いた軽装甲で、ダメージ軽減をコンセプトにした
姿見を見れば、スーツは黒に近い灰色の素材で作られている。
表面に金属製の外骨格が付いていて、胸や背中と言った重要な臓器を手厚く保護するような作りになっている。
本来であればこの上から、腹部を守る
まぁ近未来感のある探索者スーツに、古き良き甲冑テイストの融合は相当なセンスを要求されるので仕方ないのだが……
俺は大小の刀を腰に打刀を差し、変則的な大小二本差しで装備を整え、懐刀を胸ポケットに仕舞う。
『444番の選手はA会場へ進んでください』
モニターに自分の番号が表示される。
「ようやく出番か……」
部屋のドアを開けると、スタッフさんがマスターキーで施錠し会場へ案内してくれる。
『さぁ、第一回戦も23試合目となりました。先ずは選手の入場です!』
司会の羽鳥アナウンサーに促され、入場ゲート前に待機する。
若い男性のスタッフさんから、「入場の合図はコチラでだしますので、決め顔でもして進んでください」と言われるが、そんな恥を世間様に晒すような羞恥プレイには付き合えない。
「あははは……分かりました。」と愛想笑いを返し、その時を待つ。
『先ずは青コーナーの入場です!』
フリーアナウンサーとして人気の高い羽鳥アナの声で、眩しい程の照明と、プシュプシュと白煙を上げる噴霧機が音を立てて選手の入場を賑やかす。
それにつられて、センスの良いBGMと客の歓声が会場を覆い尽くした。
『探索者歴は1年強! 来年受験の高校二年生! 田中勇気』
手を振り下ろす合図をスタッフさんが出すと、発泡スチロール製のドアが開き幾つものスポットライトが俺に集中し、プシュプシュと音を立てて、白煙を上げる噴霧機が選手の入場を賑やかす。
『対する赤コーナーは、探索者歴は驚異の一カ月未満! だが本大会に出場すると言う事は余程腕に自信があるのか? 無謀なのか? 高校一年生! 加藤光太郎』
アナウンサーの解説コメントにつられて、センスの良いBGMと客の歓声が会場を覆い尽くした。
『ルールは単純明快、相手を倒せば勝利となります。なおダンジョン内では発動できない救命の魔道具を用いているため、死亡するダメージを受けた場合強制的に場外に吹き飛ばされます。
刃物を用いているため、最悪の場合死亡する可能性もありますが、回復魔法を使える探索者と潤沢な回復薬を用意しておりますので、安心して戦ってください。なお不正が発見された場合は即時失格となります。両者よろしいですか?』
まるで物語の決闘みたいだ。胸が高鳴る。
叙事詩イーリアスで語られる。『
「はい」
「はい」
約10Ⅿの距離を開けて俺達二人はコートの上に立つ。
自ずらだけで見れば球戯場の誓い。みたいだ。
二種類の《魔法》【
使うならバレ辛い。《スキル》【
さてどこまで手札を切らないといけないのか……お手並み拝見と行きましょうか!!
『試合開始!!』
レフリーの手刀が振り下ろされると同時に、互いに抜剣・抜刀する。
抜きの初速は太刀であるため、相手の得物であるブロードソードと同程度。但し、リーチは圧倒的にこちらの方が長く有利と言える。
打刀から太刀に持ち替えてから、初の戦闘だが一回戦ぐらいは勝てるだろう……と高を括る
腰を落とし、太刀を正眼に構える。
ルールは単純。この会場で発動させている魔道具が危険と判断するまで相手を攻撃すればいいというものだ。
大会までに調べたプロ用のレギュレーションとは違うがまぁ仕方がない。
ブロードソードと盾を構えた田中選手は、俺が仕掛けるフェイントに、ことごとく引っ掛かっているように見える。
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