第103話ダンジョン攻略十一日目4
間違いない。
ここで戦闘が起こったのだと確信し、俺はもう一段階ギアを入れて警戒する。
いつでも剣を抜けるように、左手で鞘の上の方を硬く握りしめ右手は剣の
警戒しながら奥へ奥へと細い一本道を進んで行くと十字路から約10メートルの地点に到着する。
隣県にあるお化け屋敷でも、ホラーゲーとFPSの経験を活かして全く叫ばなかった俺は、そろそろ何か仕掛けてくる頃だろうと辺りを付け周囲を注意深く見渡す。
地面に横たわった探索者を発見した。
頭部にはバイクっぽいヘルメットを被っている。
探索者向けの防護スーツに小型の盾、それにショートソード。
如何にも駆け出しの探索者と言った装備であるが、俺はすぐに駆け寄るような真似はしない。
ダンジョンの薄暗い光源では、目を凝らし注意深く観察しなければ気が付けない事だったが、装備に致命傷足りえる深い傷の痕跡がなかった。
オマケに出血跡すらない。
(見え見えの罠だな……)
学校の授業で読んだ体験記の中で、ジュースの缶の形をした地雷と言う表記があったが、それはただのブービートラップであって地雷ではないと思ったものだ。
恐らくこの倒れた探索者に見える存在は、ビニール人形を用いたトラップで救助しようと近寄れば、攻撃してくるという寸法なのだろう……
または倒れた探索者は本物で、近づいたら襲ってくるといった所だろう。
コレが戦争ならわざと見つけやすい所に、死なない程度に攻撃した負傷兵を置いて、救助に来た敵軍を攻撃するって戦法が使えるのに……
(倒れているのが人間でないと確信できるのなら、こんな事をする必要はないというのに……)
俺は溜息を付くと《魔法》の呪文を詠唱しながら倒れている探索者? に近づいた。
「『
呪文を詠唱すると
酒の霧は、物理的に視覚を覆い呼気から体内に入り込むことで周囲の生命体の身体を汚染し、同時に自身の心身を癒す。
やがて霧の領域はドーム状に広がり、濃淡があるものの一定の領域を汚染――――もとい清め聖別する。
「――――っ!」
俺が近寄った事で動き始めたダンジョンの床に倒れた探索者は、《魔法》である【
「――――チッ!」
わらわらと出てきた集団のリーダーと思われる人物は舌打ちをする。
「ガスか、魔法だ気を付けろ!」
号令をかけると一団は片手で口元を抑える。
だがその一瞬の遅れが致命的になる。
「『
もはや絶対的な信頼と共に、銀色の刀身は金色に光り輝き
あふれ漏れた光の粒は明滅、スナップショットの様ですらある。
口元を抑える動作で片手がふさがり、《魔法》【
複合要因により、奴ら一団の動きは十数秒ほど悪化する。
その機会を逃す俺ではない。
即座に《魔法》【
「がぁぁあああああああああああああああああああぁぁッ!!」
ショートソードで太腿を斬り裂いた痛みなのか? 《付与魔法》【
(痛みに慣れてないのか……)
一太刀で仲間が沈んだ事に違和感と恐怖を覚えたのだろう。
一団は一瞬固まる。
俺は好機とだけ考え、ショートソードを振るう。
太腿、二の腕、臀部、手の甲と斬りつけ“痛み”によって敵を無効かしていく……
「クソ餓鬼がァッ! 『凶事を知らせる夜這ひ星は、天国から地上へと災禍をもたらす。
呪文を平行して詠唱する声が聞こえる。
長文の呪文であろうとも、平行詠唱をという高等技能を用いる事で通常よりも早く呪文を唱える事が出来るのだ。
「『神仏が与えたもうた勝利の酒を浴びろ』!」
呪文を合図に《魔法》【
纏う炎の勢いは弱まり、岩石はボロボロと剥がれ崩れ落ちるようにして、巨岩は小さくなっていく……
よし! 練習の成果が発揮できた。
「
男は驚愕の表情を浮かべ、声を上げる。
一瞬棒立ちになったリーダーと思われる男に向けて、金色に輝く刃を閃かせ、すれ違いザマに横っ腹を斬り付けた。
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