第104話ダンジョン攻略十一日目5
「無事倒せたようね……」
少し遅れて二人が到着する。
立花さんの手には、負傷した探索者に擬態した襲撃者を持っている。
「ええ、《魔法》は有効に機能しました」
「そ、じゃぁ撮影しているデータを少しばかり編集しましょうか」
「え?」
「え? じゃないわよコータロー全部使ったでしょ」
「ええまぁ。万全を帰すために……」
俺は口ごもってしまう。
「JSUSAの中には、国に有利に動こうとするヤツもいるのよ。例えば、条件が緩く集団に付与できる強化魔法、集団を無力化できる魔法、ついでに魔法の減衰なんかもできるといいかもね」
国家にとっては、【
立花さんに撮影機材を渡すと俺は、五色の結束バンドで男達の親指を縛り上げる。
「赤、青、黄、ピンク、黒の五色ですか……私も縛るので貸してください」
俺が結束バンドを渡すと指を縛り上げ武器を接収する。
タイミングを見計らったかのように登場した立花さんが声を掛けてくる。
「お疲れ、終わった?」
「はい。でこの後どうしましょうか?」
捕まえたはいいものの具体的にどうするのか? まで具体的なビジョンが思い浮かんでいなかったのだ。
「連行して警察に通報かしら……奥の方でこういう犯罪行為をやられると移送するのが面倒だなのよ」
――――と、愚痴を零す。
俺が知らないだけで帰還アイテムとかが当然あるんですよね? 縛って放置したり、モンスターに食わせたりしてないよね? と俺は少し疑心暗鬼で不安になる。
俺ならリリースしてダンジョンから帰って来たところで捕まえてもらう。そすれば捕まりたくないならダンジョン内で、原始人のような生活を送るという選択肢を与える事が出来る。最悪それで死んでも俺は罪悪感を感じないと思うからな。
一応提案してみるか……
「じゃぁ顔と体を撮影した上で解放しますか? ダンジョンから出てきたら、これだけ証拠があるんですからお縄になる事は確定しているわけですし……」
「そういうと確かに深い層だと、そういう対応をする事がおおいわね」
――――と、俺の意見を肯定してくれる。
「因みに海外だとダンジョン内での犯罪者は殺す事が多いわ」
――――と、ブラックジョークをかます。
まぁ俺としては、法が裁けるのならその方がいいか……
当然の疑問を中原さんは口にする。
「じゃぁ連れていくとして誰に突き出せばいいんでしょう? 警察ですか?」
「なんのために武装した警備員が、ダンジョンの入り口付近に駐留しているとおもっているの?」
「そりゃ、スタンピードとか緊急事態に対応するためでは?」
「その通り、今回のようなダンジョン内犯罪は、緊急事態と言っていいわ。ダンジョン内での殺人は、いくら入退出を管理しているとはいえ立証が難しいもの、このカメラだってコニコニ動画の撮影のテストとか言いつつ、多分国か
――――とつらつらと推論を述べる。
俺はその内容に驚いて質問する。
「根拠はなんですか?」
「根拠は、国内メーカーのパーツで作られていて、この製品が発売されていない事よ。多分政府やその関連の天下り先の企業が販売元で、製造とパーツの調達を国内企業に任せているのよ。これがあればダンジョン内での犯罪を監視・抑止できる上に現在、個人情報保護法の名のもとに秘匿されている。《魔法》や《スキル》といった『ステータス』をある程度だけど把握できる。政府にとって探索者と言う、財を掘り起こす工夫……犬に着ける首輪といったところかしら?」
――――とぺらぺらと喋る内容には、推測や憶測が多分に含まれているものの、一定の合理性を感じる。
《スキル》や《魔法》なんていう未解明のテクノロジーで犯罪を犯されてしまえば、
警察や自衛隊の中には、ダンジョンで鍛え上げた精鋭部隊がいる聞いているが、【破壊活動防止法】。
通称【破防法】に基づく調査対象団体が自前の兵隊を手に入れても大丈夫なように、優秀な人材がいれば国家が引き抜き、警察や自衛隊の質を上げておきたいのだろう。
「DSSチョーカーみたいなモノですか……」
シン化を感知すると頭部を爆破し殺害する首輪ほど物騒なものではないと信じたい。
最近の超高性能爆薬なら人を殺すのに、何グラムでたりるのだろう? 想像するだけで寒気がする。
「イメージとしてはそれの限定版ね。まぁスマホや監視カメラがある程度位置情報を筒抜けにさせている事を踏まえれば、超監視社会である現代に今更何? って感じだけどね」
「最近は、法改正だの探索者特区だの探索者にたいする一般人からの偏見を助長させかねない報道や、危険視している政治家たちの意見が放送されていますし、こう言うモノもしょうがいないのでしょうね」
そういうと立花さんが持っているカメラを小突いた。
「後始末は私がやってあげるから、先に帰りなさい」
「でも取り調べとかあるんじゃ……」
「それがあったわね……じゃぁ先にシャワー室でシャワーを浴びてきなさい」
その後に取り調べにしてあげるから、こうして俺たちは立花さんの配慮によって束の間の休息を手にいれたのだった。
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