第35話ダンジョン六日目3報告と出会い
辺りが静かになったのを確認し、残心を解く。
血を払い、ウエットティッシュで拭いて鞘に納め、地面に座ったままの少女に手を差し出しつつ、声を掛けた。
「きみ、大丈夫?」
「あ、ありがとう……
手をとって助け起こすと、悪かった顔色も少しだけ和らいだ気がした。
足の痛みを訴えるように、黒髪を纏めたポニテが揺れるので、一旦腰を降ろすのに丁度良さそうな石の上に誘う。
彼女の脚の具合の確認の為、防具を外し患部をふき取、稼働域確認後、冷却スプレーで応急処置をした。
その時感じた柔肌と甘く芳しい香りに、顔が赤くなるのを誤魔化す為、
「ちょっとそこで休んでてよ、魔石だけでも取って来るから。
終わったら出口まで送って行くね。」
ドキドキする心臓音をBGMに、一度その場を離れる。
顔が暑い、いやぁ~超ハズい。 その後いっぱい魔石取りした。
………
……
…
魔石も、顔の赤みもとれた頃合いで、声を掛けながら彼女に近づく。
「足の具合はどうですか? ボク加藤光太郎って言います。
あー結構腫れて来ましたね、痛みは大丈夫てすか?」
「動かさなければ大丈夫よ。改めまして、ありがとう助けてくれて。
私は
怪我した女性を放置できないし、送ることは問題ない。
「分かりました。それと自分、高1なんでフランクにお願いします。
で、送るのは構いませんが……その足だと肩貸すだけで歩けますかね?
『おんぶ』…んんっ、『背負う』ほうがいいですか?」
人肌感がある『おんぶ』より、荷物感がする『背負う』のほうが、より事務的でいいかと言い直したのだが、
「では申し訳ないんですが、その……『おんぶ』して頂けるとありがたいです」
かっはぁぁー 反則じゃんそれ!
横座りなので脚は強調されてるし、ポニテから見える項は綺麗だし、色々なことで弱った瞳は潤みがちだし、ライダースーツベースの防具は女性的ラインがハッキリだし、なんかイケナイと思います!
いかんいかん。 悪霊退散、煩悩退散! 色即是空、空即是色。
瞬間で脳内会議を終え、荷物を纏め上げると、彼女に背を向け
「っっ 分かりましたどうぞ…」
「…っっ失礼します」
とさっと背中に重みが加わると共に、甘い香りが鼻孔を
ちょっとした役得があってもよかったのに、
「じゃあ行きますよ」
俺は立ち上がり歩き出す。カバンを前方に移し、バランスはバッチリだ。
敵に遭遇するのも面倒なので、やや早足ぎみの移動を心掛ける。
耳元で聞こえる彼女の呼吸音と甘い香りを友に、帰路を急ぐ。
ダンジョンの出入り口。ゲートに戻り、退場手続きをしている時
「あ、丁度いい所に……右側でモンスターの群れが現れたみたいで討伐隊に加わって貰えませんか?」
服装はいつもと違い、
「構いませんけど……まだいるんですか? この
試験問題にもあったが、
強制力は今の所ないのだが、時間の問題と言われている。
また参加するだけで一定の補填があるので、元々今日の稼ぎが少ない俺としては願ったりかなったりだ。
「ありがとうございます! ではこちらへ……」
「この
おぶっていた彼女をゲート周りにいた職員さんに預け、場を離れる時
「後日お礼をしたいので後で連絡ください!」
やや早口でそう言って、渡されたのは一枚の紙だった。
内容を見るとSNSアカウントとIDが記されている。
ふぉぉおおぉぉー (b'v`嬉)
「分かった。お大事にね」
職員さんに案内されるがまま入った部屋は、広い講堂のような作りで、
既に30人ほどの探索者が集まり、話し声がざわざわと響いていた。
その部屋の一番奥、お偉いさんでも座りそうな席で、ぶーぶーと文句を垂れているのは、その場に不似合いな、いかにもギャルと言った風体の女性だった。
少し大きめのトップスが醸し出すシルエットがかわいく、ゆったりとしているので随分と着痩せして見える。
た・だ・し・探索者の集まりの中でその姿は浮きまくりである。
「なんでアタシが行かなくちゃ行けないの? 今は夏季休暇なのに~~」
「まぁまぁ人命第一ですから、助けに行くと言っていただければお目当ての方を紹介しますので……」
その会話はアイドルとマネージャーのそれで、宥めご機嫌を取り、餌を垂らして何とか動いてもらおうとしているようで、見るのが辛い。
「主任、例の探索者をお連れしました……」
ここまで案内してくれた職員さんは、申し訳なさそうに主任と呼んだ女性に話しかけた。
あの子のマネージャー的な人ではないんだね。)察し
「ありがとう……たすかるわ」
等と言って軽く報告を始めているので、説明をと思って声を上げる。
「あのーモンスターの群れなら多分、俺が片づけたと思うんですけど……」
「レベル1に片づけられる訳ないと思うんだけど……そうね、君だったらもしかしてできるかもね……取りあえず確認に向かいましょう。
皆さんは出発してください」
号令をかけると探索者達はドアに向かう。
その中に地元有名チーム:オーガーズ、三河フェニクス、豊橋天狗の面々が居た事に驚いた。
「へぇー、って事はこの子がスレの)ry……
今日はアタシ、君に会いに来たんだよね……君、なかなか強いんだってね。
アタシはスリーフッドレーベンズのメンバー:
そんな見所のある君に、このアタシが稽古を付けてあげるわ! 」
「え、えぇぇぇえええええ!」
俺は驚きの余り大声を出してしまった。
因みに『ビッシ』っと人差し指を向けた姿は、
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