第23話ダンジョン生活四日目3武装コボルト2
戦闘中のおさらい:コボルト
槍コボ改め片腕コボ、結構重症
腹キズ剣コボ、やや弱り
大剣コボ 短剣コボ 無傷
無傷が2匹ってのは厄介だな……モーションの大きな攻撃は出来ない。
一匹なら葬れるが、手間取れば二匹目の攻撃を食らってしまう。
(うーん難しい。そうだ! 盾を使おうか……)
ほぼ肩から斬り落とされ、半死半生となったスピアマンから盾を奪う。
刀とは本来、重装騎兵に分類される武士が用いた、馬上用サブウエポンだった。
それが白兵戦で用いられるようになると大太刀・野太刀サイズだったものが、持ち手が長くなった長巻と言う薙刀と太刀の中間に変化し、最終的に片手でも持てるサイズの刀になった。
刀に反りがあるのは、馬に乗って斬り付ける時に、衝撃を逃がしつつ良く斬れるようにするためで、カットラスやサーベルも曲刀と呼ばれる刀のような刀剣である。
当時の武士の装備は布の部分でさえも、刀や弓矢を防ぐ事があったと言うまさに防御は鎧と体捌きのみである。
強化された『力:D』と『
「――――!」
十分引き付けたところで、腹を切裂いたコボルト・ソードマンを盾事弾き飛ばす。
ドン!
「――――ヴォっ!!」
ステータスが上回っている自分が、単純な力比べで負けるとは思っていなかったのだろう。驚きの声を上げ態勢を崩した。
刹那。
盾を下から上に抉る様に動かして、両者の前をがら空き状態にする。
完全に体制を崩した状態のコボルト・ソードマンに出来る事は、無駄だと分かっていても剣を振り下ろし、俺に手傷を負わせるように動く事だけだ。
だが右足を浮かせ、地面を踏み込んだのと同時に、鉄を断つような剛剣が放たれた。
その一太刀は、右の鎖骨を砕き、肋骨、背骨を切裂き綺麗な袈裟斬りで身体を二つに別つ。
《スキル》なのか? 純粋な技能なのか? は分からないが、気配を消して背後から迫るコボルト・ナイフマンを、半円を描くように振り抜いた盾で殴り頭蓋を陥没させる。
「ナイフは予想通り、『耐久』が低く、『
ピクピクとまるで虫のように
「例え意識があって聞こえても、理解出来る訳ないか……」
圧倒的に有利な状況から一気に逆転された事に恐怖しているのだろうか? 生き残りのコボルト達は動かない。
否、動けないのだ……。
目の前で仲間の首を切り落とされた光景を見た事で、恐怖を感じているに違いない。
俺はゆっくりと息を吸い込み、そして吐く。
ダンジョン内特有の土臭さの中に、僅かな汗とダンジョンバットの血肉が焦げた臭いが鼻腔を刺激する。
臭いが耐えられる範囲だ。
この臭いに慣れてしまった時点で、人として終わっている気がするが……
気を取り直して……左手に持った盾を体側に寄せて構え、刀を右手に持ち相手から見て、盾を持った左半身だけ見えるように斜に構えて腰を落とす……
(ふぅ……落ち着け……相手を見ろ……大丈夫……勝てる……)
自分に言い聞かせる為に、心の中で呟く。
精神も肉体も疲労困憊と言って良く、脳から分泌されているアドレナリン等が切れてしまえば、その場から動けなくなる可能性すら考えられる程だ。
先に動いたのは、コボルト・グレイトソードマンだった。
腰を低く落し、中段に構えていた状態を崩し、胸ほどの高さでゴテゴテとした装飾の付いた大剣を構え走って来る。
ドスドスと言う聞くだけで重苦しい。音を立てて迫りくる姿は、まるで闘牛のように大地を蹴って猛然と加速する。
対する俺は斬りかかる事すらしない待ちの姿勢。
……来るっ!
振り下ろされた大剣は、
ステータスにより強化された身体から、放たれる斬撃の威力はおそらく、鉄製の
斬撃を完全に見切り、盾で軌道を反らす。
火花がパチパチと舞う。
(腕が持っていかれる! なんて威力なんだ!!)
紙一重で斬撃を
邪魔な盾を投げつけ、手で払った瞬間を狙う。
大剣は威力、射程ともに刀を超えるが欠点も存在する。
それは重量と小回りの利かなさである。長く重いという事は、十分な速度に加速するまでに時間がかかるという事だ。
懐に潜りこんでしまえば、大剣で出来る事はない。
(今だ!)
パンチを
刀の切っ先が喉笛を切裂いて、脛骨に到達する。
カチっ!
骨と骨の間に、綺麗に挟まったせいで刃がこれ以上進む事は難しい。
刹那。
地面を踏みしめ、全体重を乗せ力一杯に刀を振り抜いた。
ボトリと言う音を立て、コボルトの生首が地面に落ちた。
「あ゛っ……」
吐息のようなか細い声を吐き出すと、俺は地面に膝から崩れ落ちる。
「ス、ステータス、オープン」
体力限界の中でステータスを開き、身体能力を上昇させる。
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