第4話探索者になる

 鳥山さんが持ってきた特殊地下構造体 武装探索許可書 交付試験申込書。

通称・探索者申請に、その日のうちに署名捺印していたので、数日後には『試験が行われる文化会館に来るように』と言う事が書かれた紙と共に受験票が送られてきた。

 

 中学卒業からの期間と、今までの貯金を費やし取得した二輪免許のお陰で、細かな移動が楽で助かる。

 父が昔乗っていたバイクGASGASパンペーラ250に跨り、会場である文化会館に向かう。


 試験時間前ではあるが、結構多くの人が並んでいる。

年齢・性別もバラバラで幅広い、探索者になりたい人々が集まっている。


「結構な人数がいるな……探索者制度が出来てから数年も経っているのに……まだこんなにも人がいるのか……」


 バイクの免許を取る時とは違い、運転免許証、申請用写真と約3000円の負担金の提出だけで済む。

無論、ただの資格であるため保護者の許可は要らない。


 職員に案内されるがまま、指定された席……高校で使っているのと同じ、木製の机と椅子……に腰かける。

座席数はおよそ百席あたりか、その7〜8割がた埋まっている。

 先ほどは気にならなかったが、出稼ぎ労働者と思われるブラジル系、東南アジアなど様々な顔ぶれも見受けられる。



 そんな中特に目を引いたのは、前の席に座る女の子だ。

その容姿はアイドルと見紛うほどで、そのキリっとした目元にはキツそうな性格が想像されるものの華があり、一本芯の通った氷のような美しさに思わず目が離せなくなる。 

薄着だからこそ隠すことが出来ないボディラインは蠱惑的ですらあり、控えめながらしっかりと主張した、お椀型の双丘が形作られている。


      う~ん  ナイスおっぱい!


 サイズはもう少し欲しいが形は100点! 否、百万点! ですわ~~ 思わず心の中のおっぱいソムリエと、お嬢様(お嬢様に憧れた一般成人女性)が摩訶不思議な化学反応を引き起こし、悪魔合体してしまった。




 筆記テストは、数時間講習を受ければ合格するような作りで、要約すれば、RPGやアクションゲームのように安全マージンを保ちつつ、気を付けて進めましょうとか、倫理面の問題とか、ダンジョンの基礎知識だと聞いている。本来は講習を受けないと合格できない難易度だが、テキストで鳥山さんが送ってくれているので、問題はない。


 試験官と監視役の職員が入室し自己紹介を始める。


「豊川市ダンジョン課の川越かわごえです。

今から、特殊地下構造体 武装探索許可 書交付試験を行います。

午前中に受けて頂いた講座を聞いている方なら、ある程度受かる難易度ですのでリラックスして望んでください。

 試験中はスマホ、スマートウォッチ、時計の使用や着用は禁止です。

携帯電話はマナーモードにするか電源を切ってください。

 大学や高校入試等と同じくトイレ等、理由の如何に関わらず退出した時点でソコまでの成績になります。

では、用紙を配りますので『始め』と私が言うまで表を向けてはいけません。用紙が配り終えた事を確認したら合図をだしますので、それまでは筆記用具を持たないで下さい」


 用紙が前の席の女の子から配られる。


「ありがとう」


 俺は女の子に礼を言う。

 女の子は俺なんか気にした素振りは見せず、前を向き直る。


 やっぱり美人だな……ダンジョンにはパーティーと言う出会いもある。ダンジョンに出会いを求める)ry 少しぐらいは期待してもいいよね……


 そんな事を考えながら用紙を後ろに回す。

 鼻の下が伸びていたのか、後に座っていた高校生と思われる女子は「なっ!」とでも言いたげな表情をしていたが関係ない。

 

 暫くすると教壇のまえで試験管の男が声を発した。

 その言葉を合図にして指示通り、運転免許取得と同じく、マークシートで名前や年齢等を記入する。


「『始め』」


 俺はその声を合図にして問題を読み解き進めていく――――


問5 刀剣類及び重火器について、正しい保管方法を答えなさい。

 1 家の中であればどこでも保管して良い。

 2 頑丈で鍵のかかるロッカーや銃砲及び刀剣類の販売店で保管する。

 3 ダンジョン課のある役場で保管する。

 4 ダンジョンにあるロッカーで保管する。


 正解は、2の「頑丈で鍵のかかるロッカーや銃砲及び刀剣の販売店で保管する。」だ。

 ダンジョンに関連する法律自体が、類似法の寄せ集めのためこの場合は、猟銃や空気銃の保管の法律がベースになっているので、刀剣を所持するためには教育委員会に登録し、「銃砲刀剣類登録証」を、銃砲ではあれば、公安委員会に届け出をだし、本来ならば発行しなければいけないのだが、特殊地下構造体 武装探索 許可書には、ダンジョンの探索・取得の許可とダンジョン内でのみ武装……刀剣や銃砲を含めた銃火器等の武器とスキルや魔法の使用が認められている。


 なぜ俺がここまで詳しいのかと言うと、昔から刀や銃が好きだったので調べた事があるからだ。


問25 ダンジョンに置いてのみ生息が確認されている特殊地下生命体モンスターに襲われている集団から、特殊地下生命体モンスターとの戦闘にまきこまれた場合どうするべきか


1 共に戦う

2 逃げる

3 倒してから賠償を請求する

4 自分達だけで戦う


 倫理と言うかモラルの問題だな。1 共に戦う。が出題者の求める正解だろうと辺りを付ける。

 

問45 ダンジョン内で取得し持ち帰った物品は全て、日本特殊地下構造体協会JSUSAジェイスーサ(Japan Special Underground Structure Association)が一旦買い取り、安全であるか? どのような効果があるのかを『鑑定』し、希望があれば買い取る事が出来ますが、発見取得した探索者が買い取る場合その価格はどうなるか。


1 定価

2 JSUSAジェイスーサの買い取り価格と同価格

3 探索者特別価格

4 JSUSAジェイスーサの買い取り価格+鑑定費用


 答えは3の探索者特別価格で、おおよそ買い取り価格の15%増しと聞いたことがある。

 

 その調子で問題を解いて見直しをしていると……キーンコーンカーンコーンとチャイムが放送される。


「時間です。筆記具を置いて下さい。解答用紙と問題用紙を試験官が回収して回りますので、解答用紙を表に向けて、手は膝の上に置いて待機していて下さい。筆記試験はこれで終了です。1時間後に番号が張り出されます。

 合格者の方は、特殊地下構造体武装探索許可書 通称ライセンスを発行致しますので、受付をした場所に向かって下さい。マイナンバーを使い皆さまの犯罪歴、持病の有無を加味した上で合否を判定します。

 それではお疲れ様でした。」


 結果俺は無事試験に合格し、特殊地下構造体 武装探索許可書 通称【ライセンス】を手に入れた。

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