第14話 天神様と危険性

 何度か声掛けをしたことで、ミィは放心から我に返り……本来の私やトビトの依頼を確認するのに、治癒草の袋を確認してくれた。


 ただ、治癒草の量が予想以上にあったのか……他の職員らしい違う耳の者やヒト……人間も加わって、作業をしていった。


 私はトビトと、椅子に座りながら待つことにした。フータは私に抱えられるのが嬉しいのか……機嫌が良さそうに身体を揺らしている。その揺れで身体に伝わる感触が心地よい。


 ますます……この子を離せなくなってきた。色んな意味で。



「大変お待たせしました」



 ミィがきちんと元の接客態度に戻ってくれたので、私はフータをトビトに預けた。書類を差し出されたので、文字を書く必要があると思われたからだ。



「はい」


「治癒草ですが、依頼の量よりもかなりありましたので……事前に説明させていただきましたように、こちらで計算致しました。依頼の報酬とは別に、5万Bバルとさせてください」


「……すみません。そちらの値段は、どう言う基準で?」



 何せ、日本円とも違うのできちんとした市場価値なのか……私にはよくわからないのだ。


 すると、ミィは計算したらしい治癒草をひとつ持ってきてくれた。



「こちらの治癒草ですが……状態がかなり良いのです。考えられることですが、ミザネさんが契約されたフータ……さんがその群生地にいたからだと思います。精霊は、物の時間を止めたり質を良くすると言われているので」


「……なるほど」



 おそらく、トビトや私も採取したことが関係しているだろうね? ちなみに、依頼報酬だけで言うと……初心者のクエストだと言うこともあり、1000Bだけだった。



「こちらの報酬で……可能であれば、我々の管轄である宿屋に宿泊されることをオススメします」


「と言いますと?」


「お二方は、今日登録されたばかりの冒険者ですが……ギルドマスター……先ほどいらしたギルマスが認めた新人。さらに、中級精霊であるフータさんと契約された精霊術師のミザネさんを……狙う愚か者がいてもおかしくありません。シトゥリは比較的治安は良い方ですが、万全とは言い切れないので」


「……そうですか」



 エディトはともかく、私はなかなかに目立った行動をしてしまったようだ。しかしながら、今更フータを手放す気はさらさらない。


 トビトは周囲を警戒してくれているのか、視線が鋭くなっていた。


 とりあえず、ミィの言う通りに書類にサインなどをしてから……その宿屋の紹介状をもらい、向かってみたのだが。



「……なかなか」


「へぇ? いい宿だね?」



 日本で言う、旅館と言うよりはホテルのようだ。


 異世界とやらは、文化圏がなんでもありかもしれない。こちらでどれほど宿泊しようか、トビトときちんと話し合い……だいたい一週間とすることにした。


 聖樹石がどこに存在しているかわからないが……この街へ転送されたと言うことは、ひとつくらいは存在しているだろう。


 それが野放しされたところか、人間などの手に渡っているかわからないが。


 受付などを済ませ、思ったより広い部屋のベッドに私達はそれぞれ腰掛けた。フータは私のすぐ隣に下りた。



『ふ……か、ふか』


「うん、いい敷布団だね?」



 平安の世で生きていた時は……ここまでふかふかな布団とは無縁だったが。


 トビトについては、初めての感触だから……ぽんぽんと何度も叩いていた。

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