第13話 天神様とギルドマスター
「おかえりなさいませ、お早いお戻りで」
ギルドに行くと、受付にいたのは同じウサギ耳の女性であった。
常駐しているものではないだろうが、同じ相手がいるのは嬉しいことだ。フータのことも説明しやすいからね?
「ただいま戻りました。あの……精霊と契約出来たんですけど」
「え? もう、です……か」
抱えているフータを見せると、女性は可愛らしい目を丸くしたように驚いていた。
こちらの世界に転生して、まだ一日も経っていないので……異世界事情とやらは世界樹の情報以外、無知に等しい。
だから、フータに驚くのもよくわからなかった。
「……あの?」
「…………中級ランクの精霊!?」
「え?」
「外見は少し変わっていますが、間違いありません!! み、ミザネ……さん! その精霊をどちらで!?」
「えーっと……教えていただいた、治癒草の群生地で」
私は正直に告げ、トビトも無言だが頷いた。
それで信じてもらえたのか、受付の女性はウサギ耳をピンと立てたのだった。
「そ……そう、ですか。その色は、契約した……から?」
「は、はい。名前を付けてあげたら……こんな色に」
『ぼ……く、フータ!』
「しゃ、しゃべれるぅ!?」
どうやら、フータは精霊の中ではなかなかに希少な存在かもしれない。私やトビトも精霊だとこの女性に知られたらどうなるか。余程のことがない限り言わないでおくが。
「珍しいねぇ?」
横から声がした。
少し甘さが強い……女性の声。
そちらを向くと、随分と妖艶な雰囲気を持つ女性が立っていた。服装も実に露出が多いが……私は人間ではないので、反応などは然程ないね?
トビトに至っては、元が梅の木の精だからなおのこと。
「……あの?」
「ふぅん? アタシに反応もしない。面白いねぇ、坊ちゃん」
「……子供ではないですが」
「アタシからしたら、大抵の子は子供さ?」
私もそれは同じなのだが……この異世界では通用しないかもしれない。
見たところ、受付の女性のような特徴と似たものがあった。人間の耳の部分がかなり尖っていたのだ。たしか……あやかしにもその類はいたが、異世界で言うと。
「……エルフ、さん?」
「そうさね? そこのミィより年だけならはるかに上のエルフさ」
宮司らの知識で言うと……たしか、エルフとやらは何千年も生きていることの出来る種族らしい。となれば、天神の期間を合わせても千年と少し程度の私では子供同然でも仕方がない。
トビトは、後ろで少し怒気を起こそうとしていたが。
「……では、僕は子供同然ですね? ところで、珍しいとは?」
トビトが突っかからないように、本題へ移ることにした。
「見たところ……あんたは、今日登録したばかりの新人も新人。なのに、もう中級ランクの精霊と契約出来たようじゃないか? それは珍しいことだよ」
『……ぼ、く……珍……しい?』
「しかも、片言でも意思疎通が出来る。エルフのアタシから見ても……あんたは十分価値のある人間さね?」
まさか、世界樹の精霊だとは口が裂けても言えないけどね?
トビトは私の眷属であるし……下手な情報は漏らすことは出来ない。聖樹石を集められないのだから。
私が笑顔のまま黙っていると、エルフの女性はこちらの頭を軽く撫でた。
「?」
「期待の新人ときた。アタシはここのギルドマスターをしている、エディトと言うもんさ? 何か大きな成果を得たら、受付通して執務室においで?」
「……わかりました」
「じゃ、アタシはこの辺で」
と言って、エディトはいきなり現れたように、すぐに消えてしまった。魔法とやらを使ったのか、瞬時に消えてしまったのだ。
「……えーっと、ミィ、さん。とりあえず、治癒草見てもらえますか?」
とりあえず、依頼を完遂させたいのだがミィとやらは固まってしまっていた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます