第11話 天神様と初めてのクエスト②

 なにかな、これは?


 ツンツンと触ってみると……大福のような塊は、ふよんと左右に揺れた。


 そしてまた、似たような声を上げたのだ。



「……なにこれ?」



 異世界の知識で言うならば……魔物とかのモンスターとやらか?


 しかし、見ただけではそうは見えない。


 あと考えられるとすれば……私達のような『精霊』かな?


 まだ世界樹のいたあの場所では……妖精という類は見かけたが、あれは精霊の一端。


 比較しても……これが同じようだとは思えなかったが。



「いかがなされた? ミザネ殿?」



 トビトも作業を中断してこちらに来てくれた。


 私が見ているものを見ても……彼も初めて見るからか、首を傾げるだけだった。



「生き物みたいだけど……なんだろうね?」


「…………魔物、でしょうか?」


「そうは見えないけど」



 もう一度、突いてみても『むにゃぁ』と声をあげるだけ。なんだか、玩具で遊んでいるようで面白くなってきた。


 もう一回……と思っていると、大福ぽいのがもごもごと動き出した。ゆっくりと体をぐるりと動かし……上を向いたかと思えば、黒豆のように艶やかな瞳みたいなのを見せてくれた。



『……だ、れ……?』



 話せるようだ。となれば、魔物よりは精霊かな?




「驚かせてごめんね? 僕はミザネ。こっちはトビト」


『……ひ、と……?』


「うん、そう」



 いきなり、精霊だと言っても信じてもらえないと思うから……ここは偽るしかない。一応身なりなどは人間と同じだからね?



『……お、ひる……ね』


「あ、寝てたとこ邪魔しちゃったね?」


『……い、い。いい……きも、ち……だった』


「……ここはお主の寝床だったのか?」


『……う、ん』



 トビトが聞けば、大福ぽいものは小さく首を縦に振った。


 それは……いけないことをしてしまったね?



「ごめんね? 僕達もうすぐ行くから」


『……い、く?』


「薬草を取りに来たんだ。もうすぐ終わるから」


『……いく』



 私が謝罪をすると……何故か、大福ぽいのはしゃがんでいた私の膝に身体をこすりつけてきた。何をしたいのだろうか?



「ん?」


『……い、く』


「どういうこと?」


「……この者。ミザネ殿に使役してもらいたいのでは?」


「ええ?」



 本当か聞くと、大福ぽいのは身体を振るわせていた。


 私のどこが気に入ったかわからないが……旅の供が増えて、いいのだろうか?


 私達の旅の目的は、あくまで聖樹石の回収だ。


 冒険者としての職業には、精霊術師とはなったが……既にトビトがいると言うのに。けど、そのトビトは特に異論がなさそうだったが。



『……い、く。せ……れい!』


「……君は、精霊?」


『う、ん! いき、たい!』


「……うーん。ついて来るにしても、使役ってどうすればいいのかな?」



 世界樹には、あいにくとその部分を教わっていない。あのギルドでもそれは同じ。


 すると、大福ぽいのがまた身体を震わせた。



『……な、まえ……』


「……名付けで使役出来るのでは?」


「……やってみる?」



 異世界では初めての、魔法とやらを使えるかもしれないね?

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