第10話 天神様と初めてのクエスト①
「……ミザネ殿。まずは情報収集ですかな?」
トビトと、治癒草の採取場所である街外れに向かう途中……彼から質問を投げかけられた。
「それもあるけど……まずは、お金も作らなきゃ。何せ、長旅だと色々必要になってくるでしょ?」
神道や陰陽道ではない術は、世界樹から特に教わっていないとは言え……いきなり、神だった頃のモノを大っぴらに披露するわけにもいかない。
それに……冒険者となったからには、所属する場所への信用度も上げなくてはいけないのだ。
「……なるほど、信用度」
「まず、僕らがどれくらい役に立つかわからないからね? お試しも兼ねて」
「……ミザネ殿は、随分とこちらに馴染むのがお早い」
「んー? 前居たところの関係かもね?」
天神だったと、誰が聞いているかもしれない場所では言えないが……たしかに、言った通りだ。
怨霊ではなくなり、社に魂を安置され……下位だが、神として崇められていた。
人間ではなくなったが、神以外にも様々な『あやかし』らとの交流もしていたものだ。その中に……かつての飼い猫が小料理屋を開いていたのは驚きだったが。
人間の女性と結婚したらしいが……もう会えないので、いくらか寂しい。まだ祝いの品も贈っていないのに。
とりあえず、その寂しさは片隅に置き……そろそろ採取場所だ。クエストの用紙に書かれていた地図を見ると……検問所から歩いて五分かそこらのところにあるそうだ。
「……ミザネ殿、あれでは?」
私より、断然『目』が良いトビトがいち早く見つけてくれた。
アサシンと言う職業を簡単にウサギ耳の女性から聞いたが……忍びの者と似た特性がある職業だとか。
だから、細かいことにいち早く気づくトビトにはピッタリの職業かもしれない。
私は逆に、精霊を使役する魔法使いみたいなものらしいが。使役(?)しているのがトビトであるなら、間違ってはいないだろうが。
考えを巡らせながら、トビトが指を向けた先をよく見ると……たしかに、緑とピンク色の影が見えた。
「……うん。あれかもしれないね?」
少しばかり駆け足で向かえば……女性に教えてもらった通りの絵にもあった薬草が群生していた。
ピンク色の白詰草のような見た目だが……必要な部分は、ピンクの箇所だけで良いらしい。緑を残しておけば、またすぐに芽を出すのだとか。
つくづく……異世界らしい特性だ。
「……金子を考えれば、摘めるだけ摘むと?」
「うん! いっぱい取ろう!!」
そこからは、黙々と二人で採取を始め……持たされた麻袋のようなものに摘んだ箇所を入れていく。
だいたい半分になったところで……中身と治癒草を見比べてから、休憩しようと決めた。
世界樹の転送や、馴染んできた身体に疲労を感じたのか……いくらか疲れてきたのだ。精霊なので、神とは違うのかもしれない。
少し治癒草の上に腰掛けると……何か、綿のようなものを下敷きにしかけた。
なんだろう? と腰を上げれば。
『……むにゃぁ』
丸い大きな大福。
とも思える、表面が綿毛のような何かが……治癒草の上で気持ちよさそうな寝息を立てて寝ていたのだ。
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