第8話 天神様と冒険者ギルド
「……すごいね」
西洋……特にヨーロッパあたりをイメージ出来るような光景だ。
実際訪れたことがないので、テレビなどの知識人でしかないが。
「……やはり、ここは……お、俺が」
まだ自分のことを『俺』と言い難いのか。
少し噛んだけど、言いたいことはわかったので……用紙を持ちながら、彼の前で『×』のマークを作った。
「ダメだよ。目立つから」
「……しかし」
「混み合うだろうけど、お互い注意してれば大丈夫だよ。行こう?」
「……はい」
ちょっとは主人らしく出来ただろうか?
眷属を従えることは、神であった時も幾度かあったが……飛び梅、トビトとこのように対話する機会はほとんどなかった。
今も人間ではないが、人間らしい生活を送れるのも悪くはない。
とりあえず、『冒険者ギルド』と言う場所に向かえば……造りは木造だが、なかなかに素晴らしい雰囲気の建物があった。看板とやらにも『シトゥリ支部』と書かれていた。日本語とダブって見える感覚には、少し慣れが必要だろう。
ノックして入る必要がないのは、他の利用者を見てわかったので……私達も遠慮せずに入ることにした。
検問所で聞いた受付とやらは……私の社にもいた巫女などの雰囲気がある席があったので、おそらくあそこだろう。服装はちっとも巫女どころかうさぎの耳を持つ人間のような女性だったが。
「すみません、こちらが受付でしょうか?」
「はい、そうですよ?」
私の尋ね方が、いくらか丁寧過ぎたのか女性には照れくさそうに微笑まれた。
「身分証……ギルドカードを発行したいんです。後ろの彼も入れて二人分」
「かしこまりました。では、検問所での仮身分証明書と……もしお持ちでしたら、紹介状もお願いします」
「はい」
トビトに預けていた世界樹からの紹介状も出し……女性に渡すと、彼女はさらっと目を通して……次々に書類などを作成していく。
やはり、受付を預かっているのだから仕事はきちんと出来る人間(?)なのだろう。
途中、私達に椅子に腰掛けるように告げた以外は、どんどん書類を作っていった。
「大変お待たせ致しました。こちらがギルドカードとなります」
数分後には、ギルドカードと言うものが出来上がっていた。
顔写真とかは当然ないので……文字以外は金の箔を使ったような光沢感。
かなりの値が張りそうだが、こう言うものだと思っておくことにしよう。
「ありがとうございます」
「いえいえ。素晴らしい方からの紹介ですから! あとは、それぞれのカードに手をかざしてください。適正職業などがあらわれます」
職業、というものは労働の職種などとは違うらしいのが、この世界での常識らしく。
冒険者の場合、様々な職業とやらが与えられるそうだ。すべて、世界樹からの座学から得た知識でしかないが。
とにかく、職業が決まってからでなければ……私達の旅路は始まらない。
トビトと頷き合い、私達はカードに手をかざしたのだった。
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