第7話 天神様と検問所


「次の者、前へ」



 私とトビトは……しばらく歩いてから、目的地である街に到着し。


 大きな門の前にある、列に並ぶこととなった。単純に街へ入れるようではなく、検問所のようなところがあるらしい。


 日本では……入国以外で各地には特にそのようなものがなくなったのに、こちらの世界とやらでは色々常識が違うのだろう。


 順番が来るまで、トビトと列に静かに並んでいたのだが……いくらか視線を感じるような気がした。目だけで追うと、その視線がトビトに向いているのがわかった。


 年齢問わず、女性からの視線が特に強い。



(……トビトは美しいからね?)



 女性からすれば、羨望の眼差しを向けて仕方がない。


 トビト自身は気にしていないのか順番を待っているようだし……私の従者として、気を引き締めているのだろう。いじらしいが、もっと自分に自信を持っていいのに。


 私の今は子供だから、仕方がないかもしれないが。



「次の者、前へ」



 そして……ようやく私達の順番となった。


 通された場所には個室で、中にはテーブルと椅子。テーブルの上には紙やら羽ペンやらと……日本の近代化と比べれば、随分と粗末な設備だ。


 あちらでは魔法などがない分、文化の発展などがかなり発展したのだろう。こちらでは逆のようだが。



「どちらか、あの用紙に記入を」



 係の者がそう言うので……私が前に出た。文字は世界樹に習ったが、書くことに慣れているのは私の方だからね?


 用紙の内容は、名前と年齢に……入国内容などなど。


 羽ペンを使うのは初めてだが、随分となめらかな使い心地だった。かつて、人間だった時のように……筆で文字を書くのと同じくらいに。


 私が内容を確認してから、係に用紙を渡せば……彼は、私とトビトを何度か見て、次に用紙に手を当てた。


 用紙がブレて……二枚の紙となる。これが魔法か、と少し興奮しかけたが驚いている時ではない。


 彼は、用紙の片方を私に渡してきた。



「この用紙は出来るだけ失くさないように。仮の身分証発行だ。紹介状を持っていると記入したな? 冒険者ギルドに行った際に、受付にそれと合わせて提出して欲しい。それで手続きが出来るだろう」


「……わかりました」



 私が子供でも、随分と丁寧な扱いだ。


 それか……この世界では、元服を過ぎたこの年齢でも一人前扱いなのだろうか?


 日本では、義務教育を終えたばかりの……酒も飲めぬ子供でしかないのに。


 とりあえず、手続きとやらは終わったので私達は街の中へ移動すると。


 人々の声が徐々に聞こえてきて……目に飛び込んで来たのは、まるで西洋の街かと思える光景だった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る