第4話 世界樹の頼み②



【ひとりでは何かと不便が。あなたに……眷属を与えましょう】



 世界樹の言葉に呼応するかのように、実から光が伸び……どんどん形を変えていった。


 まるで、人間のような形となり……形が出来上がると、それは根の上に下り……私の前にひざまずいたのだ。



「参上つかまつりました……我が主」



 男だった。


 言い方は悪いかもしれないが、梅干しのような色合いの鮮やかな赤髪。襟足から伸びているので、不思議な髪型だ。


 服装は洋服だが見たことのない形だね?


 顔は、整っていた。テレビとやらで少しでも映れば……まず間違いなくもてはやされそうなくらいに。彼が人間ではないのはわかったのだが。



「……主? 私のことかい?」


「左様にございます」



 世界樹が手を加え、さらに私の眷属と言ってくれたのだから……彼は私の配下と言うことか?



【彼は……あなたのいた場所で、とてもゆかりの深い存在だった者です】


「……日本。と言うより、私の居た場所で?」


【はい。彼も……『梅』です】



 梅そのもの。


 梅であると言うことは。


 京都もだが、九州の太宰府に存在している……あれか?



「……飛び梅か?」


「はい、主」



 私が呼べば、姿勢が辛いだろうに彼はさらに腰を折ったのだった。



【お願いします。私を……世界を救うためにも。あなた達に聖樹石を集めていただきたいのです】


「……承知した」


「主と共に、成し得ましょう」



 ひとり旅ではなく、旅の友がいるのなら心強い。


 そして……聖樹石とやらはどんなものかなど。


 この世界の常識とやらをひと通り教わってから……私と飛び梅は、世界樹のいる場所から旅立つことが決まった。



【必要な知識はこれくらいに。次は聖樹石です】



 世界樹のは、また実を落とすと……それは美しい結晶の形と変わっていく。


 飛び梅のように、赤く美しい……まるで水晶のような。



【世界各地……大きさは違えど、このようなものが存在します。あなたが手に取れば、すぐに私のところへ転送され、糧となります】


「……なるほど」



 異世界とやらは、知識を知るたびに……つくづく便利だと思ってしまうよ。

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