第3話 世界樹の頼み①



【率直に言います。あなたには……私を助けていただきたいのです】


「……助け、とは?」



 まだ己の状況を完全には受け入れられないが、世界樹の言葉にはきちんと向き合おうと決めた。


 私は……転生を経たので、もう元の世界には帰れないようだから。



【……私は、このままだと枯れてしまいます】



 世界樹は美しく見えた。


 だが、言葉の具合などを察するに……人間のように捉えるのであれば、本当の言葉なのだろう。今も人間ではない私の根拠としては、材料が足りないだろうが。



「枯れる……。それには、なにか大きな問題が?」


【……はい。下手をすれば、こちらの世界が崩壊します。私は……世界を支える樹なので】


「その願いに……こちらの神が応えてくれたと?」


【はい。動けぬ私の代わりに……手足となる存在をと。それが……あなたです。ミチザネ】


「…………何を為せば良いのかな?」



 精霊とやらの仕組みはわからないが……世界樹自身で動けないのなら、なにか違う事情があるのかもしれないね?


 私が聞くと、世界樹は木の葉を輝かせた。



【あなたに旅をしてもらい、集めていただきたいのです。『聖樹石』と言うものを】


「……石?」


【ただの石ではありません。私を修復するマナがたっぷり詰まった石です。私には……今それが足りないのです】



 社に居た私には必要なかったが……護り石とも違うのだろう。私に必要だったのは、信仰心と霊力。それらが有れば、事足りていたが。


 こちらの世界樹には、そう言ったものは通じないらしい。


 異世界転生などは、宮司らのテレビでもそう多く情報は得ていないが……正直、面白く感じていた。


 何せ、この状況はあちこち旅をすることが出来ると言うことなのだから!



「……それらを集めれば、あなたを救えると?」


【はい。長旅になるとは思いますが】


「転生させられたのであれば、それはそうだろう。……承ろう、その使命」


【……ありがとうございます】



 世界樹の葉がきらめくと……私の手にしたままの梅の実が、ふいに浮かんで光り出したのだ。



「……これは?」



 何が、起きているのだろうか?


 実の光が……少しずつ強くなっていくので、私は手を広げると実は浮かび、さらに光を増していった。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る