読者への挑戦状

 親愛なる読者諸君に告ぐ。今回、鶴辺一成を殺害した犯人は果たして誰なのだろうか。今ここに、作者は読者に挑戦する次第である。


 この挑戦について私が言える事はただ一つ。すなわち「作中の『ある事実』に気付いた人はほとんど苦労する事なく一発で疑わしい人間(すなわち犯人)を推測できるが、それに気付かないとほぼ永久に真相がわからない」というものだ。ゆえにこの事件はその『ある事実』に気付けるかどうかにすべてがかかっていると言っても過言ではない(というか、『ある事実』に気付けさえすれば、おそらく歴代榊原シリーズの中で一番簡単に疑わしい人間がわかる)。私自身は「注意深い読者諸君の事であるから相当数の人が『この事実』に気付けるのではないか」とやや消極的な予想をしている次第であるが、はたしてあなたは無事に「気付けた側」になる事ができるだろうか。


 ……何? ヒントがほしい? うーん……それは困った……。何度も言うように、今回は『ある事実』に気付けるかどうかの一点に全てかかっているのであまりヒントの出しようがないのだが……。


 ……やむを得ない。ならば、以下のようなヒントはいかがだろうか? 「気付けない」方々はこれをぜひ参考にして頂きたい(なお、「一通り読んですぐに気付けたんだけど……」とか、「自力で解いてやる! こんなヒントなんかいらねぇぜ!」という方は読み飛ばして頂いて結構である)。



①、普段の私なら『名前すら出ていないモブキャラが犯人』など読者の意表を突くような荒業トリックを使う事も多々あるのだが、今回はあえて宣言させて頂こう。この事件の犯人は、作中の問題編にフルネームで登場したいずれかの人物の中にいる。作者として、今作についてはこの点をしっかりお約束させて頂く事とする。

②、問題編の最後に『ある事件関係者』が登場してその証言から榊原は一気に事件を解決したが、これはあくまで実際に捜査をしていた榊原が事件を解決するきっかけになったに過ぎず、榊原自身が文中で述べているようにこの証言の内容を知らずとも読者の方々が疑わしい人間を推理する事に差し支えはない。この差異をどう考えるかが一つのポイントである。ただし、榊原が最後に助言した通り今回はこの『決定的証言』抜きでの推理となるので、「誰が疑わしいか」を当てる事さえできれば推理成功とする。

③、ぶっちゃけて言うが、今回使用したネタは人によっては「ふざけんな!」「アンフェアだ!」「こんなのありか!」と言われても仕方がないほどミステリーとして許容されるかなりギリギリの部分を攻めた実験的なものである。ただし、別に私が本文中で嘘をついたとかそんな話ではない。これをどう解釈するかが大きな問題となる。


 ……以上である。さて、以上の情報からあなたは事件の真相を推理する事ができるだろうか? 幸運を祈る!                  奥田光治 記

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る