甘々の学園生活②
サレナ・シェイド。
彼女はリューライトのことを警戒し決して甘やかしてきたり甘えたりする性格ではなかったはずだ。
原作でも主人公・ルクスに惚れたあともなかなか素直になることができず損な立ち回りばかりしていたはずだが……一体全体どうしてこうなったんだ。
リューライトは実の妹であるサレナに迫られながらそう内心では感じていた。
赤と青に煌めくオッドアイが妖しく光っている様に感じられる。
「……サレナ。俺は別に朝食は一人で食べられるぞ。侮ってもらっては困る」
ヒロイン達からの過剰な好意に本能がそうしろ、と訴えてきていたからか、リューライトは悪役ムーブをかますことにしたのだが……。
もうすでに時は遅かったのかもしれない。
悪を演出した声音を無視するかのごとく、サレナは自分が作ったのだとかいう朝食を『あ~ん』してきていた。
「……うん、わかってる。私がしたいことをしてるだけ」
「……それがこれ、なのか?」
「そう。お兄ちゃんは凄く頑張ってて癒してあげたいって思ったから」
「……頑張ってる? 俺は別に―――」
「はい、あ~ん」
有無を言わさぬままサレナはリューライトの口に食べ物を突っ込んだ。
むしゃぬしゃと仕方なく頬張ってサレナの発言を撤回させようと考えるも、咀嚼している間にまたあ~んに追撃をサレナはしてきた。
「……一人で食べれるから、別にいいんだが」
「だめ。今日は私の日だから」
「私の日……?」
その言い分にリューライトは思わずはっとした。
自分を律し誰に対しても基本はツンケンしているのがサレナである。
そのサレナがここまでの変貌を遂げている。普通に考えるなら誰かの後ろ手があるに違いないのだ。
リューライトは嫌な予感がしてサレナに尋ねる。
「私の日、というのはどういうことだ?」
「ああ、聖女様が私に道を示してくれたから。それで昨日がミリヤの日。今日が私の日。明日はシューラ。明後日が聖女様。それから、王女様から……」
「ん? その日っていうのはどういうことだ」
「お兄ちゃんを独占する日」
「…………は?」
リューライトは目を丸くしてから身を乗り出した。
思わず聞き逃してはまずい言葉が聞こえてきたのは気のせいだろうか。
独占……独占とは。
確かに言われて見れば妙である。昨日はミリヤの姿があったにも関わらず今日はミリヤの姿がなくサレナの姿がある。
それは、彼女達との間で交わされた決まり事であるらしかった。
だから、とサレナは続けた。
「昨日、お兄ちゃんがデートしてるの見て私、頑張るってきめたの。明日はシューラの日だし。独占できる日は限られてるからね」
「今日は普通に座学があるんだが? 周りの眼があるんだぞ?」
「まあ、恥ずかしいけど……それは我慢する」
「ええ……」
リューライトは思わず苦笑を浮かべ、嫌な汗を額に滲ませた。
♦♢♦
一方、その頃。
「リューライト・シェイド。調べていくなかでますます怪しいのはこの男だな」
リューライトに警戒する者が確認された。
どうやらトラブルが尽きることはなさそうである。
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