騒然とする学園

 ランゼドー学園。

 紳士淑女を育て、未来の騎士団へと繋ぐ架け橋となる由緒正しき伝統校だ。

 この学園に通う生徒たちは皆が皆、騎士団に所属することを目標とする。

 騎士団とはいっても上から下までピンキリなのだが……絶大な力をもつ騎士団は王女直属の団かあるいは聖女直属の団の二つといえる。

 この団に入ることができれば、俗的には勝ち組とされるためこの枠に入ろうと努力や鍛錬を重ねるのだ。

 一般的には騎士団には試験が課せられるが、偶に視察から引き抜きといった裏道が用意されていることもある。

 この裏道から入った生徒の前例は少なかった。

 ―――そのため、裏道から騎士団、それもトップの王女と聖女の騎士団に幾人かが引き抜かれた事実に学園が騒然としてしまうのも仕方がないといえよう。



「……やべえよ。やべえよ」

「―――これ、どういうこと!?」


 ランゼドー学園の生徒が一枚の紙を手に目を丸くさせていた。

 全校生徒が唖然とするのも無理はない。


「……新聞部がこんな情報掴んでた、なんて」

「リューライトのやつ、う、うらやま―――いやけしからんぞ」


 新聞部がランゼドー学園の生徒たちに配ったもの。

 それは新聞。いつも定期的に配っているのだが、生徒達の関心が集まることは非常に少ない。そのため今回の新聞のネタはそれほど大きなものだったのだ。

 大きな見出しで書かれていたもの―――それは。


『㊙引き抜き組、遊びでうつつを抜かす』


 一見すればくだらない内容だが、嫉妬と羨望に映ってしまう引き抜き組には怨嗟が飛び交ってしまうものなのだ。

 リューライトとルクス。

 この二人が女性に甘やかされている……デートシーンを目撃したといったニュースが学園に持ち込まれたわけである。


「しかも、俺たちが鍛錬してるときに……っ」

「休日らしいけど、新人だろ? 意識足りないしなんでこいつらがあの騎士団に……!」

「それ。リューライトもルクスってやつも実力足りてないでしょ……。ほかに適任者はいたはずだし……」


 不信。

 嫉妬。

 羨望。


 その混在とした感情は学園全体を包んでいた。生徒達でなく教師にもこの一報が届くと、学園として動かざるを得なくなってしまう。


 この日、学園長室に―――忍びの生徒が呼び出された。


「……すまないな。来てもらって」

「いえ」

「この知らせに生徒達も教師も不信感を募らせておる。本当に引き抜き組であるリューライトとルクスに実力があるのか、と」

「つまり、私に視察を頼みたいとそういうことですか?」

「ああ、私の方から何とか、君が騎士団に潜り込めるよう手はずを整える」

「スパイをしろ、とそういうことですね」


 賢く感が鋭い彼女は無機質な声音でうなずいた。

 その口元はマフラーでいつも覆われており、彼女の素顔を見たものは学園にはいないとされている。

 彼女が放つ不気味なオーラにぞっとしたのか、学園長は咳払いをする。


「そういうことだ。おおむね、今回の一報も君が絡んでいるのだろ?」

「ええ。新聞部に頼まれましたので。もっとも、相応の報酬はいただきましたが」

「わかっている。今回は極秘任務だ。生徒達の不信を払拭してもらうためのことだからな」

「ええ、報酬は期待させていただきます」


 そうとだけ言って、嵐の様にその女子生徒は姿を消してみせた。

 ―――それは、リューライトの監視生活の幕開けを意味していた。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜

あとがき


 お久しぶりです。

 甘々生活と思いきや、トラブルが尽きなくなる展開に今後はなるかもです笑


 以下、異世界ファンタジーの作品です。

 本作を気に入っていただけているなら、きっと楽しんでいただけると思いますので良ければよろしくお願いいたします。


『悪友キャラに転生したので、ゲーム知識と努力でこの世界を思う存分満喫する』

https://kakuyomu.jp/works/16817330650161833457

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