第63話 ———決着。
俺は〝レグルスがホモではない〟という第一の賭けと、もう一つ賭けていたことがある。
第二の賭け———それは〝レグルスの視線を俺の裸にくぎ付けにし続けることができるかどうか〟だ。
レグルスはホモではない。だから男でキモデブの俺の裸を見たとしても性的興奮は湧き起らず……いや、むしろ減退する。
つまり奴は俺を見ている限り———勃起することができない。
だから、俺はリスクを犯して戦いを短時間で決めようとせず、攻撃を避けることに集中し、わざと長期戦になるように立ち回った。
レグルスが勃起できないように———「屈服」のスキルが発動しないように———。
その間、「屈服」の支配から解放されたレンが回復するまで———俺は時間を稼いでいた。
「があああああああああああああああッッッ⁉」
斬り落とされた右腕の断面———そこから血を流し続けているレグルス。
レンの
「や……った……!」
一矢報いたレンは疲労困憊で砂の上に剣を刺し、杖代わりにして何とか体を支える。
レンは膝立ちの状態だった。
もはや完全に立ち上がるまでは体力が回復しておらず、何とか体が起き上がるまで回復したといった状態だ。
彼女の肉体は限界だったが———レグルスに致命傷を与えた。
「やったな……レン……」
俺達は賭けに勝った———。
———そう、思っていた。
「むんッ‼」
レグルスは右肩に力を込めた。
全身の筋肉が盛り上がり、特に右肩の断面付近の筋肉が赤みを帯びて盛り上がり———噴き出る血を完全に止めてしまった。
「な———⁉」
無理やり、筋肉の運動だけで止血をしてしまった。
レグルスは激痛で顔をしかめていたが、やがて冷静さを取り戻したようで「ふぅ~……」と息を吐き、
「結構効いたぜ……
レンを見据え、舌なめずりをした。
奴の股間は———再びギンギンに勃起をしていた。
「倒れない……のか……?」
「ゴブリンの生命力を舐めんじゃねぇぞ……俺ぁ、その血が半分流れてるハーフゴブリン……この程度じゃあ気絶すらしねぇよ……」
そして、再びレグルスはレンへ歩みを進め始めた。
「あ……あ……」
レンの表情が絶望に染まる。
もう彼女は抵抗できる力は残っていない。レグルスの「屈服」による強制発情で肉体に力が入らなくなっているだけではない。俺の「人体支配」の副作用による〝酔い〟は彼女の体に確実に疲労として蓄積していた。
レグルスの視線を俺にくぎ付けにして「屈服」スキルを封じて、時間を稼いだのに、それでも体力を回復しきるに至らない———。
「レグルス! こっちを見ろ!」
再び、俺に視線を集中させて奴のチ〇コを萎えさせようとするが、レグルスは一瞥すらせずにレンに向かっていく。
「もう……間違えねぇ、クライスよりてめぇだ。レン・ナグサラン! テメェを先にレイプして先頭不能、再起不能にする! クライスをぶっ殺すのは、テメェをブチ犯した後だ!」
奴の手が———レンに向かって伸びる。
その瞬間———俺は怒りとも使命感ともわからない、激しい衝動に襲われ———駆け出した。
「レグルスゥゥゥゥゥゥゥゥゥッゥ‼」
拳を振り上げ、駆ける。
奴は———視線をレンから逸らさない。
無防備な背中を晒し続けている———。
これは———チャンスじゃないか———?
さっきと逆だ。
今度は大振りになってもいいから、奴を仕留められる一撃を放つべき時だ———。
そのためには俺は———また大きな賭けを、第三の賭けをした。
———
振り上げた右腕———その筋肉を「人体支配」の力によって、増幅させる。
レグルス並みのいやそれ以上の筋肉に———肉体を改変する———!
「———ん?」
奴が何かを感じ取ったのか、こちらをチラリと振り返った。
その時にはもう———遅い!
「レンに手を、出すなアアァァァ————‼」
気合の咆哮と共に———レグルスの顔面を殴りぬいた。
「ぐ、あああああああああああああああああああ…………‼」
殴り飛ばされたレグルスが砂浜を転がる。
俺の右腕は不自然なほど筋肉が盛り上がり、鍛え抜かれたマッチョマンの腕になっていた。
「できた……!」
俺は、男の状態でも
それで右腕だけ改変し、腕力、握力、その他すべての筋肉を増量させて、レグルスに重たい一撃を放った。
「う……ぐ……」
レグルスは仰向けに倒れた状態のまま呻いている。
顔には大きな痣ができており……このまま起き上がらないことを祈る。
「立つな……立つな……」
膝が———再び、震え始める。
もう、俺に肉体も限界だ。
いや、今の一撃により限界を超えてしまった。これ以上は一歩も動けない。指一本も動かすことができない。
これでレグルスが撃破できていなかったら……もう体力の残されていない俺たちは敗北を受け入れるしかない。レンは犯され、俺は殺される…・・。
「う……く……!」
呻き続けるレグルス……そのまま、そのまま意識を失ってくれ……。
そう、祈っていたが———、
「グ……ハッ! ク、クククク………効いたぜぇ……クライスゥ……」
奴の腰が持ち上がった。
「クソ……ッ!」
なんてタフな奴なんだ……。
まだ自分が元気であることを見せつけるようにそそり立つ勃起チ〇ポを天へ向かって突き出す。
「やるじゃねぇか……だが、俺を倒すには一手足りなかったようだなぁ……!」
腰を持ち上げて、首と足の筋肉で全身を支える弓なりの姿勢。ブリッジで俺たちを挑発しながら、グリンと首を回して俺を見る。
俺はもう動けない。そして、奴のチ〇ポがそそり立っていることでレンもミストも動くことはできない。
完全に———詰んだ———。
そう思った瞬間だった。
「これで完全に終わりだな———クライ、」
「クライスさん‼ やっと見つけましたぁ—————‼」
空から———光が落ちてきた。
その光は天高くから一直線に地上に———矢のように振ってきて、着地点にいた男のある部分を踏み抜いた。
「ふぐッ……⁉」
ドォン……! と音が響き、砂埃が巻き上がる。
「クライスさんの力になりたくて、シーアに行ったのにいなくてぇ! ここら辺一帯を探し回りましたよ! もう———!」
非難をするような言葉を言っているが、空から降ってきた彼女の声色は嬉しそうに弾んでいた。
いや、物理的にも弾んでいた。
彼女の足から生えている光の翼———
その場———レグルスの股間の上で。
「る、ルリリ……か……?」
「はい! 城から抜けてきちゃいました……って何でクライスさん裸なんですか~⁉」
全く空気を読んでいない様子で、第二王女ルリリ・ナグサランは顔を真っ赤にして、両手で顔を覆った。
自分の足元に同じように全裸の男がいるとも知らないで。その男の股間を踏み抜いているとも知らないで。
もう———レグルスのチ〇ポは勃起をしていなかった。
奴は———ルリリの高速の蹴りを股間に受けたダメージによって、遂に意識を失ってしまっていた。
「く、クライスさん……服を着てくださいよ~~~~……!」
指の隙間からチラチラとこちらを覗き見ているルリリ。
レグルスは———敵将は、その存在を視界にすら入れていなかった最弱王女の手によって討ち取られた。
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