第61話 「屈服」を封じる奇策
この———「スレイブキングダム」という世界はエロゲで抜きゲーの世界だ。
男性の性欲を満足させるための世界であり、そんな世界で女性を屈服させる男性は絶対的な力を持つ究極の男尊女卑の世界だ。
女の子では男性に勝てない。そんな理不尽が平気でまかり通るのだ。
ならば、どうするか。
「そんなんで……勝てると思ってんのかぁ———?」
男に勝つには男になるしかない。
俺は『変化の薬』で〝女性〟に肉体を変化させていたのを、もう一度『変化の薬』を飲んで、〝男性〟に戻した。
キモデブの〝男性〟に———、
「———なぁ、クライス、どうなんだよ。えぇ⁉」
レグルスに煽られ、俺は余裕の笑みを作る。
「少なくとも———お前の「屈服」のスキルは封じることができる」
「何ぃ?」
レグルスの「屈服」のスキルは〝勃起した男性器を女性〟に見せることで、〝女性の行動を完全に封じる〟という完全なるエロスキル。彼の能力こそエロにしか使えない。
そう、エロ以外には全く使えない。
男相手には効かない。レグルスは男がいると何の能力も持たないただの力自慢になる。
「そして更に————!」
俺は———服を脱いだ。
「…………何やってんだ?」
レグルスの呆れている視線を感じながら、俺は砂浜で服を脱ぎさり———全裸になった。
裸で夜の潮風を受ける。股間にそよそよと当たって若干の気持ち良さを感じる。
「気でも狂ったのか? レグルス」
「元から裸になっているお前に言われたくはない」
魔物の死体が散乱する砂浜で二人の男が全裸になって対峙しているというカオスな絵面。
片方は筋骨隆々のマッチョマンで片方はボテっとした腹を晒しているキモデブ。
はたから見ると、何だか、そっち系の人たちなのかなと思っしまう光景だが———否である。
「なぁ———レグルス。気が付いているか?」
「あ?」
「お前のチ〇コが———既に萎えているということに」
「————ッ!」
バッと下を見て確認するレグルス。俺に指摘されて気が付いたようだ。
先ほどまでバッキバキにそそり立っていたレグルスの息子は、今は既に萎えに萎えて、大きな親指とも呼べるサイズに縮小していた。
「なるほど———これがテメェの策か……」
「あぁ、お前は女を犯すために生まれてきた男だ。そんな性格の男が男の裸を見て勃起なんてできるわけがない。女を犯す卑劣感が男の裸を見て悦ぶわけがないんだ。そんな奴だったら、男を犯して悦ぶ変態になっているはずだからな……!」
「くっ……!」
歯ぎしりをするレグルス。ここで初めて彼が悔しそうな表情を見せた。
俺は更に追い打ちをかけようとビシッと指を突き立て、
「お前は———戦いを楽しむとか、弱い相手はつまんねぇとか戦闘狂のようなことを口走っているが、結局は違う———お前はただのいじめっ子だ。自分より弱い相手を屈服させて楽しむことしか考えていない……勝てそうにない相手には絶対に挑まない卑劣な男だ! 結局、俺を派遣したのは保険何てほざいたが、本当はレンが怖かったんだろ? だから、彼女が来たらすぐに「屈服」のスキルを使った。そして、レンを行動不能にした———本当に戦いを楽しむような男だったら、チン○を晒さずに、正々堂々とレンに向かっていったはずだ! 違うか、レグルス!」
彼は結局その程度の男なのだ。
しょうもない男だ———そう突きつけると、彼の表情が変わった。
「———てめぇ、言ってくれるじゃねぇか」
怒りだ。
図星を突かれて、レグルスは怒りの表情を浮かべ、全身の筋肉を盛り上がらせた。
「だが、だが! だがッ‼ だから何だってんだ⁉ 確かに裸のテメェが目の前にいる限り俺のチン○は勃起しねぇ、スキルは使えねぇ、だから勝てるとでも? ……勝てるわけねぇだろォ! テメェは女になって「人体支配」のブースト能力で何とか俺に食らいついていた。だがぁ! 男に戻ったら、テメェ自身に「人体支配」は使うことはできず! 身体能力の強化もできねぇ! そうだろ⁉」
剣を振り上げ、構えるレグルス。
ピリピリと俺とレグルスの間に緊張が走る。
気を抜き、視線を逸らしたら、一瞬でレグルスに切り捨てられそうだ。
「———それはどうかな」
「あ?」
レグルスが視線を逸らした。
彼はレンとミストを見た。
彼女たちはまだダメージが深く、自力では動けない。
俺が「人体支配」を使って彼女たちを人形のように操るのだと思ったのだろう。どうせ、俺ができるのは他人を駒として操ることだけだ—————と。
そう、奴は———気を抜いていた。
———
俺は———自らに「人体支配」をかけ、高速で———奴の腹を
「ぐおッッッ……⁉」
くぐもった声と共にレグルスの身体が吹き飛ぶ。
———
「人体支配」の肉体強化による高速の瞬発力で助走をつけて、思いっきり奴の腹にエルボーをかました。
クライス・ホーニゴールドの肉体が持てる限界以上の力で———。
「お前は勘違いをしているぞ———レグルス・ガイエルン。俺は俺自身に「人体支配」を使えないなんて一言も言っていない」
多分な。
作中の描写ではそういう発言はなかった。
作中外のところで言っているかもしれないが、そんなのは知らないし、知った事ではない。
「ゴホッ……クライスぅ…てめぇ、嘘をつくな! お前はその力を男には使わねぇし、今までテメェ自身にも一度も……」
吹き飛ばされた場所から立ち上がり、砂煙の中でレグルスが言う。
「使えなかったんじゃない。使わなかったんだ———〝念のため〟な」
こんなこともあろうかと———そう付け加えて俺は、悔し気に歯嚙みする彼にキメ顔を見せつけた。
夜の砂浜で、対峙する二人の男———俺たちは互いに全裸だった。
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