第60話 「屈服」のスキル
———レグルス・ガイエルンにはどんな女も屈服する。
「スレイブキングダム」の公式ホームページにその一文が書いてあったことを思い出した。
「あ…あぁ……」
俺とレンは指一本動かせない状態になっていた。
「あ~あ……つまんねぇなぁ……本当に……」
全裸で近づいてくる男を前にして、ただ———黙って見続けていることしかできない。
レグルスの、ギンギンにそそり立っているイチモツから俺は目が離せず……非常に認めたくなく、それを意識してしまうだけで吐き気がするのだが———俺の股の間から液体が滴っていた。
発情していた———強制的に。
レグルスのチン○を視界に入れるだけで———俺はこの男に従わねばという感情に、いや、従いたいと思わされてしまう———!
「い、嫌だ……!」
「だろうなぁ……」
ガッとレグルスに髪を鷲掴みにされて、持ち上げられる。
「いたいいたい……!」
頭皮が引きちぎられるかと思うほどの痛みが襲ってくる。
「女みてぇな気持ちわりぃ声を出してんじゃねぇよ。クライス。ワンチャンテメェには効かねぇかと思ったが、しっかり効きやがって……俺の「屈服」の能力によぉ」
そのままブンッと放り投げられて砂浜を転がる。
転がり、俺の視界から奴のイチモツが消えたことで、体が自由になったかと思ったが、足腰ががくがくになってまともに動くことができない。股間からは洪水のように愛液が垂れ流しになり、脳内で「俺は男だ」と繰り返し言い続けていないと、レグルスに対する発情を抑えきれなくなりそうだった。
「屈服」のスキル———「スレイブキングダム」の作中では全く描かれていなかったが、レグルスにはそんなスキルがあったのだろうか……?
確かに、彼を前にするとどんなヒロインでも股を開き、犯され喜んでいた。だが、作中でレグルスが出ることにはクライスがメインのヒロインは全て調教しきっているため、レグルスには何の能力もないと思っていた。
「おい……
レグルスは、レンの前に立ち、そそり立つそれを見せつけるように眼前に迫らせる。
「テメェが最強なんだよな……ちょっとは動いてみろよ……俺のちん○をその剣で切るぐらいの気概はあるだろう……?」
「ハッ……ハッ……ハッ……!」
レンは
「……わ、私に何をした……?」
彼女は絞り出すように、レグルスにそう問うた。
レグルスはそれに答えず、拳を握りしめ———、
ドッ———‼
レンの腹に、重い一撃を放った。
「ブ…………ッッッ‼」
体が浮くほどの腹パンを食らって、レンの頬は膨らみ、胃液と空気が混じった吐しゃをまき散らしながら砂浜を転がっていく。
「レンッ⁉」
砂浜に横たわるレンはぴくぴくと体を震わせるが、起き上がることがない。
それほどの致命傷を、レグルスから与えらてしまった。
「———これだから女はつまんねぇ……俺に「屈服」のスキルがある限り、どんな女も俺には敵いやしねぇ」
「そんなのは、嘘だ!」
「あぁ……⁉」
レグルスがこちらに向き直るが、奴のイチモツを見たらまともに動けなくなると視線を下に逸らす。
「そんなスキルがあるのなら、俺をこの国に派遣したりしない! レン・ナグサランが脅威だから……俺に彼女を無効化するように依頼したんだろ! そんな能力があるんなら、俺をこの国によこす必要がない!」
俺がレンを無効化するのを待つよりも、自分がすぐに攻めた方が速かったはずだ。そんな指令を出しておいて、女に対して無敵のチートスキルを持っていましたというのはないだろう。
そう思うが、レグルスはつまらなそうに鼻を鳴らした。
「ああ、クライス。お前を派遣したのは〝念のため〟だ」
「念の……ため?」
「勝負って言うのは何が起きるかわからねぇ……結果はこうなり、俺の勝利に終わったが、念には念を入れるタイプなんだよ。だから、まぁてめぇはあくまで保険だったって言うことだ……」
そう言ってレグルスは剣を投げ捨てた。
「何をする気だ……⁉」
「何って、レイプすんだよ。
当たり前のように宣言し、レンに向かって歩き始める。
「そんなこと……させるか!」
目を閉じた状態で、レグルスに向かって殴りかかる。
奴のイチモツを一目見ただけで体がマヒしたように動けなくなるのなら、要はレグルスの性器を視界に入れなければいいのだ。そう思っての付け焼刃の策だった。
「はああああああああああああああああ!」
真っ暗な世界の中、足音だけを頼りにレグルスに殴りかかっていく。が———、
「腰が全然入ってねぇぞ、クライスぅ!」
ドッと腹部を蹴られる。
「ガハッ……!」
「下策だな、クライス。目を閉じたまま……テメェが俺に勝てるわけねぇだろ……!」
案の定、再び砂浜の上を転がされてしまう。
確かに、暗闇の中、攻撃動作が単純になり、動きが完全に予測されていたというのはある。
だが、それ以上に奴の「屈服」スキルの後遺症があった。
体が完全に発情しきっていて、まともに力が入らない。腹にダメージを受けていない状態でも、腰がガクガクになっていた。それでも「人体支配」のスキルを使ってブーストをかけることができれば、レグルスを倒すまではいかないまでも通常通りの力を発揮できるかもと思ったが、ダメだった。
「人体支配」が無力化されている。
俺の肉体が女である限り……奴の「屈服」のスキルには勝てない。
この世界が「スレイブキングダム」という抜きゲーでエロゲーの世界である以上———、
「———女は、男には絶対に勝てねぇんだよ‼」
レグルスは、レンに向かって手を伸ばし、その顎を掴んだ。
引き上げられたレンは、涙目になりながら小さく「いや……」と言って抵抗しようとしたが、全身に力が入っていないように両手が垂れ下がっている。
「お? 王女様。何か言いたげだな……どうした? 抵抗してもいいぞ? そっちの方が面白れぇからな」
「————ッ!」
レンは思いっきり力を込めて、レグルスの股間を蹴り上げた。
それなりの速度は出ていた。彼女の足は鞭のようにしなり、レグルスのイチモツの根元を直撃した———が、
「……弱ぇ、その程度の力じゃ……俺のチン○は〝しごき〟とも感じねぇぞ!」
全くレグルスは動じることなく、レンの服を引き裂いた。
「キャ……‼」
レンの乳房が露出する。
レンの顔が泣きそうな顔になり、羞恥で頬を染め上げるが、「屈服」の力で体が動かせないようだ。
「い……や……」
「悔しいか? 王女様ぁ?」
レグルスがにやけた笑いと浮かべているのと対照的に、ポロポロとレンは涙を零す。
「……レグルス……将軍……」
「ん?」
レンは泣きながら声を絞り出す。
「私を犯すのならば……好きなだけ犯せ……すきに、しろ」
「レン⁉」
諦めるなと言いたかったが、彼女を助けるだけの手が今の俺には思いつかない……。
「ハッ! 覚悟を決めたってか……それもそれでつまんねぇな……」
「ただし……クライス殿は……クライスはこれ以上傷つけるな……彼は、元々お前らの仲間だろう……なら傷つけずにそのまま、また仲間に戻してやってくれないか……?」
「何?」
レンは……何を言っているのだ……?
「私は……今度こそ、彼を守らなければならない……だから、私を犯してもいいし、殺してもいい……だけど、クライスだけは傷つけないでくれ……くぅくんだけは……」
「————ッ!」
レンが俺を見た。
親愛の目だ。
クライスの夢の中で、金髪の少女が俺に向けてくれた愛おしいものを見る目。その眼を今、彼女がしていた。
思い出してくれたのだ。
クライスとレンが幼馴染であると———そして、彼女は「今度こそ」と言った。追放された後、彼女に会いにクライスが来たことも、思い出したのだ。
レンの口が動く。
———あのときはごめん。
声を発さずに、唇の形だけ、そう動かした。
「そうか……わかった。でもダメだ。あいつは女になってつまらなくなった。それに、俺は裏切り者はぜってぇ許さないタチでな……お前をクライスの目の前でレイプした後、王女様、お前の目の前でクライスを殺してやろう……それは、サイッコウに気持ちよさそうだ!」
レグルスはレンの顎を引き寄せ、その唇に自らの唇を近づけていった。
———俺は、何をやっているんだッッッ‼‼‼
彼女を、レンを———俺は救わなければいけない!
何をどうやっても、俺は「人体支配」をいい事に使うと決めたんだから!
「ちょっと待てェェェ‼ 変態野郎ッッッ‼」
「————あ?」
俺は何とか痛む腹を押さえて、足を踏ん張って立ち上がり、レグルスの注意を引いた。
「あ? クライス。まだなんかあんのか? これで何もなく、やけくそだったら、王女の前にテメェを犯すぞ?」
「策は———あるさ」
やけくそではあるが……賭けではあるが……。
「これだ!」
懐から取り出したのは、『変化の薬』。
念のため、買っておいたが、「人体支配」スキルの適用の幅が広く、不要になっていたもう一本の薬だ。
俺はそれを、一気に飲み干す。
すると———ドクンと心臓が跳ね、全身がカアッと熱くなる。
「あ? 何のつもりだ……クライ、ス……?」
肉体が、変質していく。
女のスリムな体から、ボンッと腹が出てぶよぶよな肉体になり、長くトリートメントが行き届いていた金髪もどんどん短くなってぱさぱさになっていく……。
「クライス……体を元に戻したが……それが策か?」
俺は元のキモデブ〝男〟———クライス・ホーニゴールドに、『変化の薬』を使って体を、性別を戻した。
「ああ———これが策だ」
嘘だ。
これは策とは呼べない———大きな賭けだ。
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