第13話 神社

 お昼ご飯を堪能した私たちは先生に連れられて大きな神社を巡っていた。

 本殿の前までやってきたのでお参りの列に並ぶが、大きな神社なだけあって、そこそこの人が並んでいる。


「ねえ、りんちゃんはお願い事何にするの~?」


 あ、そっか。神社ってお願い事するところだよね。何お願いするか考えてなかった。


 願わくばこうやってふたりでずっといられたらいいのにな、なんて考えちゃうけども、それを友達としての雰囲気では言えないから、私はこう言う。


「ひみつー」

「そっかぁ、秘密かぁ。いちごはね、将来、幼稚園か保育園の先生になりたいなーって思ってるから、そうなれるように願おうかなって思ってるの」


 いちごちゃん小さい子のお世話をするのが好きって言ってたもんね。ちゃんと夢を持ってるのいいな。それに比べて私の願いはなんてやらしいんだろう……。でも他に願いたいことなんて無いしなぁ。世界平和を願う、みたいなそんな綺麗な心を持ってるわけじゃないので。


「わー、立派だね! ちゃんと夢を持ってるのってなんかすごいと思う! 私はそういうのないからさー」

「そんなことないよ~。ただいちごがそうしたいなって思ってるだけで、りんちゃんだってこうしたいなーってことあるからお願い事するんだよね? だからそれと一緒だよ~」


 うーん、ほんとかなぁ? やっぱり夢を持ってるのはすごいというか、尊敬するというか、そんなふうに思う。私の願いは夢って感じじゃないし。夢というよりかは願望と言うかなんだろう。もっといちごちゃんの方が意志を感じるというか。

 私よりも神様が叶えてくれそうなお願いな気がする。


「あ、順番来たよ~」

「うん」


 私はお賽銭箱に5円玉を投げ入れる。ご縁がありますようにと5円玉。

 2礼2拍してから願い事を願う。


 どうか、いちごちゃんとずっと一緒にいられますように……。


 そうして1礼。

 隣を見るといちごちゃんがまだ願い事をしてるのでちょっとだけ待つ。

 1礼したのを見てから一緒に横にける。


 果たして私のお願い事は叶うのだろうか?

 なんかいちごちゃんの願いを聞いて、神様は私の願いを叶えてくれなさそうな気がしたから、もうちょっと自分で頑張らないとダメかもしれない。


 そんなことを考えていると、『おみくじ』と書かれた看板が視界に入る。


「あ、あそこでおみくじやってる」

「ほんとだ~。りんちゃんは引く?」

「うん、引いてみる」


 私たちは、そのおみくじが売っている社務所に立ち寄り、中にいるお姉さんに100円を渡し、おみくじ用の棒がたくさん入った筒を振る。

 振る。出てこない。

 振る。振る。振る。

 あ、やっと出てきた。


 出てきた番号をお姉さんに伝えておみくじを貰う。

 いちごちゃんと一緒に見たいからまだ中身は見ない。


 いちごちゃんもおみくじを貰ったのを確認してから「一緒にせーので見よっか」と提案して「いいよ~」と言ってくれる。


「「せーの」」


 私は小吉で、いちごちゃんは中吉だった。

 負けた……。いや負けたとか無いんだろうけども。


「いちごちゃん中吉いいなぁー」

「ありがと~。でも大事なのは書いてる中身だよ」

「まあ確かにそれもそうかも?」


 おみくじの中に書かれている『学問』だとか『転居』だとか書かれた欄を見る。本当に気になるのは『恋愛』だけど、とりあえず無難な話題として『学問』のところを見てみる。すると、頑張ればうまくいく、みたいなことが書いていた。

 いや、だいたいそういうものなんじゃないの?


「学問のところは頑張ればうまくいくみたいに書いてたけど……」

「いいね~。頑張ったらうまくいくんだから、頑張り甲斐あるじゃん!」


 え、頑張ってもうまくいかないこともあるのか。私は、それは頑張りが足りないだけだと思うんだけどなぁ。でも否定するのもあれだから「うん」と言ってちょっとだけ嘘をつく。


「いちごは学問に関しては今のままでうまくいくって書いてた~。それはそれで不安になっちゃうけどね~」


 不安になるの?

 うーん、よくわからない。


「そうなの? むしろラッキーって思っちゃうんだけど」

「いちごは、何かやらないとダメなんじゃないかなって不安になるよ~」

「そういうものなのかー」

「まあ人によるところはあるんじゃないかな?」

「うん」

「あ、恋愛の方はなんて書いてあった~?」


 ついに来た。一番気になるところ。『恋愛』と書かれた部分を見てみると、頑張れとだけ書いてあった。いや、他に無いの!? さっきは頑張ったらうまくいくって書いてたのに急に神様に見放された気分だ。


「頑張れとしか書いてないんだけど……」

「じゃあきっとそういうことなんじゃないのかな~」

「どういうことなの……。あ、いちごちゃんはどうだった?」

「いちごは自分の思った通りにすればいい、みたいなこと書いてたよ」

「なんかいいね。いちごちゃんはなんていうか、既に色々頑張ってたりしてるから、頑張れって神様に言われないのかな?」

「うーん、どうかな~。りんちゃんも頑張ってると思うけどなぁ」

「そ、そうかな?」


 そんな話をしていたら先生の声が聞こえてくる。


「おーい! 1組集合ー!」


 そろそろ宿に戻る時間なのかな。

 今日はいちごちゃんといっぱいお喋りできて満足だった……。

 神社についてはよくわかんなかったけど。


 あれ、今日は、とか思っちゃったけどまだまだ今日は終わらないじゃん。

 この先大丈夫かなぁ。まあ、頑張れと神様に言われたからには頑張るしかない。

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